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山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

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2020年06月10日
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素堂、八月、『江戸新道』発句六入集。言水編。  

号、来雪

 焼飯や上戸の笑ひ下戸の花                言水

春部

夕哉月を咲分花の雲                      来雪      

上野

 小僧来たり上野は谷中の初櫻              来雪      

夏部 鎌倉にて

 目には青葉山郭公はつ鰹                来雪  

峠凉し興ノ小島の見ゆ泊り               来雪    

秋部

   鬼灯や入日をひたす水の物              来雪     

冬部

   世中や分別者やふぐもどき              来雪

【目には青葉の句、評】 『俳諧古今抄』支考著。

 「目には」は武江の素隠士が鎌倉の吟行なり。されば此句の称する所は、目にと語勢をいひ残して、目に口と心をふくめたる、さるは影略互見の法にして、これを三段の地としるべし。

【目には青葉の句、評】 『俳論』土田竹童著。

 「切字の弁」はいかいの項。

「目には青葉」「耳には山ほとゝぎす」「口にはつ鰹」といづれも珍しきをならべて、これよくとこたへたるにその語分明なるものなり。

【幸田露伴評】素堂は山口氏、葛飾風の祖なり。芭蕉これを只事せるが如し。故を以てこゝは芭蕉が師事した季吟の次に置けるなるべし。句は眼、耳、舌の三根に對して同季の三物を挙げて列し、以て初夏の心よきところを言へり。一句中に同季のもの挙げて其主題の明らかならぬは忌むところなれど、それらの些事を超越して豪放に言放てるが中に微妙の作用ありて人おのづからにほとゝぎすの句なることを感ずるは、霊妙といふべし。青葉と云ひて、ほとゝぎすと云ひたる両者の間の山の語、青葉にもかゝりて、絲は見えねど確と縫ひ綴められあり、ほとゝぎすといひて、堅魚(かつを) といひたる間の初の語、堅魚には無論にかゝりて、又郭公は何時もこれを待つこと他の鳥ならば其初音に焦るゝ如き情けあり。既に 郭公はつ聲、と云ひかけたる素性法師の歌も古今集巻三にあり。かゝる故に暗に郭公にもかゝりて、是亦両者を結びつけて隙間無く、しかして郭公青葉と堅魚の其中心に在りておのづから主位たるの實を現わし、一句を総べて渾然一體、透徹一気に詠じ去れり。是の如きを天衣無縫とは云ふなり。素堂の気象の雄なる、偶然にして是の如き句の成れるに至りしにもあるげけれど、其人治水の功を立てゝ甲斐の國には生祠を建てられ、又他の一面には茶道に精しくして、宗 の茶道の書に求められて序を爲れるほどの隠士なれば、雄豪一味のみにてかゝる句を得たるにもあらじと思はる。                                             

(『評釈曠野 上』所収 昭和十一年刊)

 

目には青葉山ほとゝぎす初鰹

    前述、清水茂夫先生の評『山口素堂』より

 この句は、前書に「かまくらにて」とあるから、鎌倉に出向いて吟じたものである。小山の多い鎌倉、繁茂する青葉、山で鳴くほととぎすの声、その上に名物の初がつおを賞美するのであるから、素堂の心ほどんなにか弾んたことであろう。初夏の快的な感動が端的に表れている。

この句が載っている『江戸新道』は延宝六年八月上旬に言水が編集したものである。六年の夏には素堂は江戸を立って長崎旅行をしていたことでもあるし、同じ延宝六年出版の『江戸八百韻』では素堂は「来雪」という俳号を用いている。これらのことを考える、とこの句は来雪より前に使っていた信章という号であるから、恐らく延宝五年に吟じた句であろう。延宝五年には素堂は三十六歳で、もっぱら談林俳諧に熱中していた時代であった。▽素堂、『鱗形』発句一入集。雪芝編。      






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最終更新日  2020年06月10日 21時01分21秒
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