カテゴリ:北杜市歴史文学資料室
北杜市明野 小野家 小野泉 高根 三枝雲岱
小野(一八三〇(天保元年)-八四(明治十八年))は巨摩郡浅尾新田村(現北杜市明野町浅尾新田)出身で、初め松声堂で渙斎に学んだ後、江戸と京都に遊学し蘭医としての活動のほか、明治初年に山梨県の歴史地理編輯主任となり、『山梨県地誌略』(明治九年(一八七六)刊)その他の編纂で知られるが、明治十七年(一八八四)温故堂(内藤伝右衛門)による『甲斐国志』初の刊行は小野の校訂によったものである。 したがって後輯の再訂を嘱するのに最も適任者であったといえる。しかし、後輯の編集には多くの時日が費やされ(快庵死後に活躍する画家の絵や文人の詩歌の収載など多くの手が加えられている)、ほか出版事情も重なつたのかもしれない、後輯刊行は「著述者相続者」大森保三(快庵の男)により漸く明治二十六年(一八九三)に完結したのである。 《註》巻の六より、小野泉の手により、朝尾新田小野家や高根蔵原の三枝雲岱関係の作品が多く見える様になる。 以下に示す。 ◇小野家(北杜市 明野町浅尾新田) 小野泉(牧荘) 小野至穀(小野通仙次男 小野泉の弟 実) 小野成器 琢(小野通仙三男 小野泉弟 琢輔(助)か) 小野霞邨(小野通仙四男 小野秀樹 永峯秀樹) ◇三枝家(北杜市 高根町蔵原) 三枝雲岱 三枝宗弘(三枝雲岱の長男) 倉原
小野家関係 掲載作品 『評伝 永峯秀樹』永峯秀樹 家門勤学 保坂忠信氏著より 一部加筆
小野泉 生、天保元年(一八三〇)歿、明治十七年(一八八四)享年五十五才 父通仙を助け安政元(一八五四)年種痘館を隣村の穂足村(須玉町)に建て種痘を施す。 明治元年(一八六八)山梨県病院(山梨県立中央病院)の設立を主唱する。 明治五年(一八七二)その医員、後八年には県の歴史地史編集主任となり、衛生課兼務を勤めた。 明治九年(一八七六)『山梨県地史略』 明治十年『甲斐地史略』、『甲斐国志』校訂編集。 三同学舎 (明治十二年~十七年)を甲府市に開き、和漢英、修身を教え、秀樹の「智氏家訓」を教科書として用いた。女子教育奨励のため週刊「乙女新聞」発行。『三ツ水門』、『江戸時代の甲府上水』の著者、医学博士露木寛は泉の前人未踏の山梨県の地誌編集について「特にこの学力の中心をなすものは、元恭のもとにあって学んだ『理学提要』から得た力であると思う」(「小野泉『山梨県地誌略』とその周辺」一六九ページ『甲斐路』山梨郷土研究会創立三十周年記念論文集 昭和四十四年十月)と見事に指摘している。 《註》 小野家系図 《註》巻の六より 峡北 小野泉重訂となる。 巻の六からは小野泉重訂により、極端に峡北地方(小野泉)周辺の人々が多く見られるようになり、特に小野家、三枝家など親族のものの多い。 浅尾渠 江草村の八巻と云庭より塩川を堰入れ、浅尾村に至る。長さ六千三百四十五間、広サ六尺許他、寛永六年己卯村山村の十右衛門上神取村の清右衛門両人にて浅尾村の野を墾辟し、共に資を出して此渠を鑿れり、十年を過ぎ慶安元年戊子に工を竣る因て浅尾渠と称り朝尾、同新田、上手三村の田に漑ぎ下流は穂坂渠に入る此浅尾渠鎮守として、岩屋権現祀り修験薬王寺(浅尾新田 小野家別家)これを奉祭る。 ☆ 小野泉 浅尾堰 巻の六 せきいれし昔の人の功しを 汲てしるかな千町田の水 ☆小野泉(牧荘) 回還塚(みかえりつか)巻の六 いく度かかへりみすつゝ宇津の谷の うつゝともなく山はこえけむ ☆ 小野泉 茅ケ岳(かやがたけ) 巻の六 多叢樹不高峯 幾歳解留仙客踪 跡如今何処所 白雲彷彿有奇容 ☆ 小野泉(小野牧荘) 吹上岡(ふきあげのおか)巻の六 風の吹上の岡に紅の さざなみたてゝ散る紅葉かな ☆ 小野泉 谷戸城 巻の七 さかえけんよに引かへて武士の 谷戸山くらし弓はりの月 ☆ 小野泉 白幡明神 巻の七 時雨つゝ逸見の国原行く雲の はれるは白し八が根の雪 ☆ 小野泉 巻の七 井出の桜(高根町西井出) 八か根に霞にこもり遠方に 目立つや井出の桜かな ☆ 小野泉 勝沼 大滝山 巻の八 をのへより分れて落ちる雌雄の瀧 流れの末やよどみあふらん 嵓腹徑回入翠巒 檜松茂密夏猶寒 雷聲逬落青天外 又見雙龍下碧湍 ☆ 小野牧荘(泉) 山高桜(武川 実相寺神代桜)巻の七 老樹大蔵牛 慈門寄根柢 春風花一時 僧住艶雲底 ☆ 小野泉 鶴瀬驛 蛭石 巻の八 こゝにかも蛭兒の御子の舟つきし 崖のさゝれに其の名残れり ☆ 小野泉 景徳院 田野 巻の八 代々をへてかためし国も田野の山 たのむかひなくかたふきにけり ☆ 小野泉 白野驛 巻の九 黒垈を過ぎていづこに宿からむ なすらしら野の雪の夕暮れ ☆ 小野泉 菊化石 巻の九 うつろはむ時あらせじと磐が根に 神のひめたる菊の花かも お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年06月13日 18時45分20秒
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