2302598 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2020年06月22日
XML

一、元祖團十郎傳 近世奇跡考(山東京傳) 

 
江戸の俳優初代市川團十郎は、堀越重蔵といふ者の子なり。

慶安四年辛卯、江戸に生る。

重蔵は下総国成田の産、

【割註】

或云、佐倉幡谷村の産、役者大全に云ふ市川村」なり。

江戸にうつり住。曾て任侠を好み、

幡随院長兵衛、唐犬十右衛門と友たり。

團十郎生れて七夜にあたる日、唐犬十右衛門、

彼が幼名を海老蔵となづけたるよし、

【割註】

今の白猿ものがたりぬ」初名を段十郎とよび、後に團十郎に更む。

曾て俳諧を好み、奮徳翁才麿の門人となり俳號を才牛といふ。

延寶のはじめ、和泉太夫金平人形のはたらきを見て、

荒事といふことをおもひつきたるよし、

【割註】

侠客傳』に見ゆ。」

延寶三年五月、木挽町山村座、

凱歌合曽我といふ狂言に、曽我五郎の役を始てつとむ。

【割註】

時に二十五才。」延寶八年不破伴左衛門の役を始てつとむ。

【割註】

時に三十才。」衣裳の模様、雲に稲妻のものずきは、   

稲妻のはしまで見たり不破の関 

といふ句にもとづきたるよし、『江戸著文集』に見ゆ。

貞享元年、鳴神上人の役を始てつとむ。

【割註】

鳴神を堕落さする女の名を、雲の絶間なづけしは、

團十郎おもひつきたるよし、

これらを以て其才の秀でたるをはかり知るべし。 

元禄七年、京にのぼり、同十年に江戸に下れり。

【割註】

貞享五年『役者評判記』「野郎立役二町弓」といふ書に、

左のごとくあり。

○此ころのひょうばん記は、おほく半紙本なり。

位付まし。元禄末横切本となり、位付あり。 

此市川と申すは、三千世界にならぶなき、

好色第一のぬれ男にて、御器量ならぶものなし。

丹前の出立ことに見事なり。

せりふ天下道具なり。

およそ此人ほど出世なさるゝ藝者、又とあるまじ。

實事悪人、その外何事をいたされても、

おろかなるはなし。

ことに学文の達者にて、仕組の妙を知らぬものなし。

當世丹前役者の元祖、

お江戸においてかたをならぶるものあらじ。

威勢天が下にかゞやき、

おそらくは末代の役者の鏡ともなるべきと、

すゑずゑなほもやり玉はん。歌に、   

 

市川の流れの水もいさぎよく

悟りすました藝者哉 

 

予おもふに、末代の役者鏡ともなるべきと、

貞享の頃よりかきおきしは、

役者の未来記ともいふべし。    

 

○貞享年中印本(舞曲扇 )江戸狂言作者  

玉井権八 南瓜與惣兵衛 宮崎傳吉 市川團十郎 

かくのごとく、作者のうちにもかじへぬ。

安るに、貞享、元禄中の狂言、團十郎の作おほし。 

○『江戸真砂』

に云、(寛延中の写本なり) 

元禄年、勘三郎座にて、團十郎荒園の役、

切り狂言に鍾馗大臣に成て、大當りせしが、

その姿をゑがき、鍾馗大臣團十郎とよびて、

ちまたを賣りありく、

おのれ七八才の頃、めづらしく、五文ヅツに買ぬ。

それよりやゝ役者繪はやりいでぬ。 

○團十郎、元禄十七年(改元宝永)二月十九日死。

享年五十四才。芝三縁山中常照院に葬る。

法名譽入室覺榮。 

○柳塘館蔵本に、宝永二年印本『宝永忠信物語』と云ふ、

草紙五冊あり。これ團十郎一周忌追善の書なり。 

市村竹之丞芝居、八島壇之浦の仕組、

忠信四番續の狂言に、

團十郎、次信の役をつとむるうち、

二月十九日五十四才にて身まかる。

幼名を舛之助といひしよし見えぬ。

然則星合十二段といふ狂言の時死せしと云ふ説は非歟。 

 

○元祖團十郎實子、

二代團十郎栢莚が傳は、

あまねく人のしれる事なれば、

こゝはもらしつ、

今巳に名跡七代におよぶは、

誠是俳優の銘家と云べし。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2020年06月22日 13時37分16秒
コメント(0) | コメントを書く
[歴史 文化 古史料 著名人] カテゴリの最新記事


PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

山口素堂

山口素堂

カレンダー

楽天カード

お気に入りブログ

10/27(日) メンテナ… New! 楽天ブログスタッフさん

コメント新着

 三条実美氏の画像について@ Re:古写真 三条実美 中岡慎太郎(04/21) はじめまして。 突然の連絡失礼いたします…
 北巨摩郡に歴史に残されていない幕府拝領領地だった寺跡があるようです@ Re:山梨県郷土史年表 慶応三年(1867)(12/27) 最近旧熱美村の石碑に市誌に残さず石碑を…
 芳賀啓@ Re:芭蕉庵と江戸の町 鈴木理生氏著(12/11) 鈴木理生氏が書いたものは大方読んできま…
 ガーゴイル@ どこのドイツ あけぼの見たし青田原は黒水の青田原であ…
 多田裕計@ Re:柴又帝釈天(09/26) 多田裕計 貝本宣広

フリーページ

ニューストピックス


© Rakuten Group, Inc.
X