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山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

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2020年08月19日
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カテゴリ:山口素堂資料室

素堂 『東海道記行』 行脚随筆を編する

 

(『素堂句集』子光編)

 

行脚随筆

 

旅行のもよほし侍けるの初めに

 

 

嵯峨

季秋遊嵯峨之圧離庵、

両三日行臨大井川清流、

坐着小倉山閉雲、

園中貯四時之花、

謂之四時叢、

我聞三□太夫九宛之蘭。

五柳先生之三径之菊、

風涼則風流也。 

然啻愛一様之花而不周、

四時主人之愛花也。

愛水心之情也、

愛山心之静也。

此境水辺而山不遠、

花有四時叢心与境、

夜道以為楽至、

吟賞之余題一絶去。

回序分略花作隣  

一叢送古一叢新

文賓得客篇之閙  

紫桂状還又向春

 

嵐山の麓に禅坊を叩いて

朝送山雲出 

夕看飛鳥帰 

初知梁境婦           

又約叩柴之扉

 

大和めぐらせし頃

よしの山に入をちにみしきのふの雲をけふわけて

花になれゆくみよしのゝやま西行法師の旧庵の跡をたづねて

はなごろもけふきてぞしるよしの山

やがて出じのこゝろふかさを

 

同じとくとくの文むすびて

山かげにひとくくとなく鳥も

岩もる水のおとにならひて

 

西行法師

とくとくおつる岩間の苔清水

汲みほすほどもなきすまひかな

 

尋問南朝跡

尋問南朝跡 

行々遠市塵 

前山紅世界 

後嶺白雲浮

昔聴降天女 

今猶有地仙 

臥花南三日             

可惜別苔筵

同夜興唱句 

白雲花燭暈  

 

日月笠を暈とそはし、たはむれにいふ。

よしの川にて

鮎に鮎花の雫を乳房にて

此ではさかなにつよくなへしや

初瀬にて

 

宿からん花に暮なば貫之の

貫之は初瀬のまうし子なれハ其宿坊に

初瀬もある可候やのきまりの歌、

古き集にたゞ一首ありと見へ侍り、

ちかくは後水尾院御製い出て

人めの関をしるしもうし

ゆるすとハなき袖のなみだの

 

三輪

至れりや杉を花ともやしろとも

 

この神には社なし。

なきそ神のかたちなりけれの心なるべし。

 

暮春井出の里にて

春もはや山吹き白く苣苦し

 

玉津島

霧雨に衣通姫の素貌みん

 

播磨めぐわせし頃唱句

牛行花緩緩

猶牡丹花をになひて

遅き日やしかまのかち路牛で行

 

書写寺へまいる詣しに、

弁慶法師の手習せし所とて、

其ほとりに弁慶水ハ是之と人の教へける

弁慶の面影白し花の雪

 

姫路の丁を過けるに、

名高きお夏の家はこゝなりときゝて

さてハさうか花の徳とてなつかしや

 

西国くたりに

さみしさを裸にしけり須磨の月

 

あかしの浦にて

朝霧に歌の元気やふかれけむ

 

近思録に、孔子は四時の元気云とあるを以て、

人丸も歌の聖なれば云而

 

厳島

いつくしき此ノ嶋のめぐり七里。

回廊にうしほのみちたる景気は、

さていはしかたなし

額面 

 

表 伊都岐嶋        空海筆

裏 厳  島        道風筆

 

宝物あまたある中に、

平家一門寄向候書の法華経二十八品

清盛入道・安徳天皇御護生前の願書、

墨いまだかはかぬやかたあり

回廊に塩みちくれば鹿ぞなく

 

長崎にて

珠は鬼火砂糖は土のごとくなり

 

《註》

この項の『素堂句集』に掲載の『東海道記行』は、

ある古本屋で出会った手書きの小冊子を基にしている。

残念ながら、ここで終わっている。

(子光の『素堂句集』は『俳書集覧』6に掲載)

 

引き続き子光の『素堂家集』の発句部分を、

荻野清先生の『元禄名家句集』より追加する。

 

木曾路を下りけるころ

夕立にやけ石寒し浅間山

鴨の巣や富士にかけたる諏訪の海

 

紀南玉津嶋にて

霧雨に衣通姫の素顔見む

 

高野山にて

しんしんたる山はいろはのはじめ哉

 

丹陽のはしだてにまかりける頃

大江山をこゆるとて

ふみもみじ鬼すむあとの栗のいが

 

はしだて

月夜よし六里の松の中ほどに

 

宮津のやどりにて

浦島が鰹は過ぬ鰤いまだ

 

勢州山田がはらにて

ほとゝぎすかたじけなきやもらひなき

我を客にわれに禮ありはつ茶湯

 

両国橋の帰雁といふ題にてある人

発句をのぞみけるに水縁に白魚あきらかなり

雁しばし予が

茶の花や利休が目にはといふ句を見て、

不角、

餅花や鼠の目にはよしの山

といへり。それによつてまた云ふ

貳朱花や揚屋の目にはしぼみ咲き

 

蓮に蛙の上りたる繪に

蓮に蛙鶯宿梅のこゝろかよ

 

石山寺の開帳の頃詣侍りて

夕だつや石山寺の銭のおと

 

予が母七そじ七つのころ、

七月七日にしたしき友七人をまねき、

萬葉集の七草を各一草づゝ詠じけるに、

あるじ朝かほをさぐりあたりて

朝がほは後水尾様の御製かな

名月に明星ばかり宿直かな

 

投椎木堂

むさしとしもつふさの中に流たる川のほとりに、

すみ所求めすむ人あり。

川むかひに年經たる椎の木あり。

是に月のうつるけしき、たやすくいひがたし。

ちかきわたりに、

牛頭山・すみだ川もまた遠からず。

まつち山もはひわたるほどにして、

入くる人にその心をのべしむ。

予も萬葉集御代のふるごとを旅ごゝちして

椎の葉にもりこぼしけり露の月

 

大井川のほとりにある老翁、

髭の長きこと尺にあまり。

いくばくその年をかさねて

かくのごときと問ければ、

我世にすむ事四十年、

髭もまた同年なりと答ふ。

さび鮎も髭にふれずや四十年

 

田中八太夫といふ七十ぢあまりの翁、

素堂がたらちねの賀を

ふみ月七日にいはひたるをうらやみて、

ことし七夕になんいはひて、素

堂にもことばあらん事をのぞみたるに、

よみてあたふ。

尾花かくす孫彦ぼしやけふのえん

 

かじの葉のかたちして色紙のやうなるが、

なかばより折ていろどりなど

あるにかきつけるを写す。(子光が)

地下に落ちて風折ゑぼしになにの葉ぞ

 

歳暮

世は鳴戸暦はづれに渦もなし

 

これは、暦をまきたるを、

初春より巻ほぐして、

歳の暮にいたりては巻の末を見るゆゑ、

はづれの渦もつきてなしとのこゝろなり。

この句とりぐもとはやし、

このむほどの人はかたりつきたるほどに、

世にひろくなりぬとなん。

ある時、素堂相知れる人来りて、

そこの歳暮の発句とて或方にて聞たるに、

心ことばおもしろう侍るとかたりければ、

それいかに聞たまふととひければ、

名は鳴戸暦はづれにうづもなし

 

かうこそ聞たれといふ。をかしや、

わがしたるはさにはあらず。

されど此かたおもしろし。

されば聞ちがへのまゝにひろめたまへとて

是にきはめたるとぞふるき夢物がたりに

小町が手よりこがねを得たるためし、

八雲の御抄に申させ給へば、

それにならべんもをこがましけれど、

折ふし口切のころたれば、おもひねの枕に、

はつむかし霜の芭蕉のたもとより

 

右得千平山松緑丈而冩(原本)

 






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最終更新日  2020年08月19日 18時56分27秒
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