2299777 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2020年09月07日
XML
カテゴリ:著名人紹介


光琳の『伊勢物語』

 

  征川種郎氏著

   一部加筆 山口素堂資料室

 

『源氏』と『伊勢』とは、我が芸術に幾多の題材を供給している。絵画に、髹漆に,五十四帖と昔男とは、描写せられて、平安朝の優婉なる情調は美しく、静かに、なよなよと織り出されている。まことに倭繪の好題目であり又調度品の韻致ある好みであった。

 古来『伊勢物語』の繪には、水野家本二巻と、世尊寺行尹の詞書と云へる三巻と、住吉如慶筆の二巻、如慶、具慶筆の色紙形などあるが、其の最も優れたものは、福岡子爵家蔵の『伊勢物語残缺』である。

 尾形(後に小形)光琳の結構奇抜にして、手法大膽に、賦彩鮮麗にして落筆瀟なる、不調和の裡に調和を求め、法に離れて法に合ふ天稟の画才と透徹せる頭脳とは、古土佐の画風に新様の工夫を凝らして、新装飾を大成した。一たび彼の筆に上りては、あらゆる題材は、新しい生命を受けて、物皆活動し、然かもまた古意を失はなかった。

『伊勢物語』の如きも屡々彼の畫く所となりて、前人未発の境を拓き、清新なる圖様を出している。やゝ

もすれば卑猥に墮一し易い此圖の如きも、彼の彩筆に描き出されては、逸宕にして卓犖、軽妙にして、しかも浮薄ならず、風韻掬すべく、優麗典雅の態がある。

 必ずしも物の大小遠近などに意を囚はれていない。彼は彼の心の往くまゝに、極めて放朧に、極めて磊落に、之を得意の装飾風に取計らっている。矛盾があるようで、矛盾でなく、怪奇のようで、怪奇でない。敢て異を立てるにあらず、敢て(てら)のはでなく、悠揚として嬉春の天地に逍遥している。甘い戀のさゝやきは、丈なす草叢の間から聞え、燃ゆる皆の炎は糸遊のように立舞って、二人の外に人なく世なく、天地もないようではないか。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2020年09月07日 21時53分38秒
コメント(0) | コメントを書く


PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

山口素堂

山口素堂

カレンダー

楽天カード

お気に入りブログ

9/28(土)メンテナ… 楽天ブログスタッフさん

コメント新着

 三条実美氏の画像について@ Re:古写真 三条実美 中岡慎太郎(04/21) はじめまして。 突然の連絡失礼いたします…
 北巨摩郡に歴史に残されていない幕府拝領領地だった寺跡があるようです@ Re:山梨県郷土史年表 慶応三年(1867)(12/27) 最近旧熱美村の石碑に市誌に残さず石碑を…
 芳賀啓@ Re:芭蕉庵と江戸の町 鈴木理生氏著(12/11) 鈴木理生氏が書いたものは大方読んできま…
 ガーゴイル@ どこのドイツ あけぼの見たし青田原は黒水の青田原であ…
 多田裕計@ Re:柴又帝釈天(09/26) 多田裕計 貝本宣広

フリーページ

ニューストピックス


© Rakuten Group, Inc.
X