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2020年09月10日
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カテゴリ:柳田国男の部屋

日本の昔話 鷲の卵 柳田国男

 

 『柳田国男全集』25 

   

一部加筆 山梨白州ふるさと文庫

 

鷲の卵

 

昔ある村に年とった百姓があって、

美しい一人の娘をもっていました。

田植えの頃に苗代を見まわっていると、

蛇が小さな蛙を追いかけて、

苗代を荒しております。

蛇よそう追うな。

おれの一人娘をお前にやるからと言いますと、

蛇は追うのをやめておとなしく帰って行きました。

そうしてその晩から、

立派な若い背が娘のところへ、

夜遅く来て朝早く帰るようになりました。

それがどういう人かよく分らぬので、

爺は気にかけていましたが、

ある目家の前を一人の見たことのない易者が通って行くので、

それを呼び込んで、占いをしてもらいました。

その易者が言うには、

 

この娘はただの人間でない者を婿に取って、

人間でない者の子を持っているから、

近いうちに死ぬかも知れない。

けれども助かる方法がたった一つある。

裏の山の大木の上に、

鷲が巣をかけて今卵を三つ産んでいる。

あれを婿殿に頼んで取って来てもらって

食べさせてみたらよかろうと言いました。

 

そこでその晩に来た婿に

鷲の卵が食べたいという話をしますと、

快く承知をして取りに登ってくれましたが、

その時はちゃんと蛇の姿をしていたそうであります。

そうして二つの卵を目にくわえて来て、

三つ目を取りに昇ったときに、

鷲の親はその大蛇をつついて殺してしまいました。

爺は家に帰ってみると、

昨日の易者がまた来ていて、

この話を聴いて、それではもう娘さんは助かった。

この後では三月三日の節句に、

酒の中へ桃の花を浮かせてお飲ませなさい。

そうすればいよいよ丈夫になります。

私はあなたに命を助けられた、

小さな蛙の御恩返しと言って、

ぴょんぴょんとどこかへ飛んで行きました。

それから後は三月の三日に、

人が桃の酒を飲むようになったのだそうであります。

 

(肥前杵島郡のお話)






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最終更新日  2020年09月10日 17時47分21秒
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