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山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

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2020年11月15日
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甲斐に来ていた 芭蕉奥の細道 清書者素龍

 

素 龍(全故) 下

楽只堂の學輩達

   植谷 元氏著

    一部加筆 山梨県歴史文学館

 

次の二條は、前号の補遺である。

 

○ 宝永二年(1705)五月十日、古里産母飯塚氏橘染子死去(同「年録」第百六十六巻)。

  吉里の「積玉和歌集」巻十雑七に次の贈答歌を記録する。

   

宝永二年五月十日、靈樹院身まからせ給ふけるとき(古里)

 

迷ひよりぬらす挾もいける身の

終には消る露とこそしれ

   

悼にて居侍りけるころ、讀みてをこせける

                    藤原全故

   子規涙なそへそ君か袖うき

さみたれの雨はれぬころ

   かへし              (吉里)

   哀なりうき五月雨の時烏

思ひもよほす夕明ほの

 

       宝永三年七月二日、

「一、傳授吉里古今集秘訣。有祝儀贈答(同年録」第百八十七巻)。

 

     宝永五年(1708)二月三日、徳川綱吉柳澤邸に御成、

「家臣、医、平井立三・相原相悦・立野通庵潜父・久志木三庵常道

・藤本理庵由己、始拝謁。

  御講釈、論語雍也篇、仁者壽章。

(中略。老中三人他拜聞、𠮷里・安通・時睦ら論語講釈のこと)。

次、家臣家編東馬什秀、講論語焉政篇、君子不器章。次、久遠寺日亨上人、講観世音字義。

  次、家臣嶋川勾雷仙市、講、徒然草、巳遠捨天人仁従布段」

(同「年 録」第二百十五巻)。

  

当日一座の家臣は柳澤帯刀保誠ら二十二人のほか、

  汀左五右衛門勝賢 小田清右衛門政府 村井源五郎直方

  柳生内蔵之助勝往 安福東嗚秀    志村三左衛門楨幹

  荻生宗右衛門茂卿 渡邊惣左衛門幹  小俣三郎右衛弻種

  澤田五左衛門正信 津田宗助利行   酒見十左衛門俊秀

  柏木藤之丞全故  田中清大夫省吾  都筑又左衛門春親

  村上椎平以成   金子権七郎清隣  鞍岡文次郎元昌

  安藤二右衛門煥圖 大森喜内正弘   上田新五兵衛重孝

  疋田元右衛門尚重 賀古絞左衛門勝栄 森久兵衛長恒

 

ら二十四人の、計四十六人。

 

       同年同月十八日、「一、今日天領快晴、大納言様御成于私亭(中略)

家臣医、平井立三・相原相悦・立野道庵潜父・久志本三庵常道

・藤木理庵由己、始拝謁」(同「年録」第二百十六巻)。

  當日、學輩出座せず。

 

△ 同年三月朔日、「一、黄檗悦峯和尚参府。駒寵別墅為和尚客館」

 (同「年録」第二百十七巻)。

  悦峯は黄檗八代。以下、四月十七日まで贈答詩など悦峯関係の記事あり。

 

○ 同年十月五日、綱吉、柳澤邸に相成、「御講釈、中庸斎明盛服一節」

 (中略。家臣ら拜聞、吉里・安通・時睦ら論語・中庸講葬)家臣、

  小田清右衛門政府  村井源五郎直方   田中清大夫省吾

渡邊惣左衛門幹   小俣三郎右衛門弼種 深田五左衛門正信

津田宗助利行    酒見十左衛門俊秀  柏木藤之丞全故

服部幸八元喬    都筑叉左衛門春親  村上権平以成    

金子権七郎清隣   鞍岡文治郎元昌   安藤二右衛門煥圖

大森喜内正弘

 

  問太極之義{荻生宗右衛門茂卿答之。畢御問孟子答枉尺直尋、

輿答好貨好色之不同。宗右衛門茂卿、亦答之。華御暗講釈大學章句序五字(下略)」

(同「年録」第二百二十二巻)。

 

△ 宝永六年正月十日、綱吉薨去。同年六月、吉保退隠して駒込の別墅に入る。

○ 同年六月十五日、「一、𠮷里由継家督興行和歌會」

(同「年録」第二百二十九巻)。

  兼題は松色緑久、常座略。一座の人々は、

   𠮷里  源正府 源成徳 源成福 錬忠継 平勝旨 藤原宗興

   源恒隆 源正興 源勝只 源武政 源義武 源元之 藤原貴高

   源倫正 源守郡 藤原貞清 日奉昭参 藤原全故 藤原光尹

 

の二十人。次に全故の兼題・常座のみを掲げる。

                     藤原全故

   あらたまる御代に一しほふか緑

ちとせのさかへまつやみすらん

     

閨 誉             全故

 君きかは寒けき人に恵みあれや

ねやにこほるゝよはのあられを

  

   

 

以下、吉里の「福壽堂年録」に引次ぐが、この年録に見える関係記事は極めて少ない。

 

○ 宝永六年七月十一日、「一、本亭へ移従せし祝儀とて和歌の會を興行す。

兼題は松樹増色、常座の探題二十首」(「福寿堂年録」第二巻)。

 一座の人々は、

   政徳 以直 恒隆 貴亮 正興 成福 直行 貞清 勝旨 全故 吉里

 の十一人。各詠歌の記載なし。

 

    宝永七年五月十八日、

一、       國許(注、甲斐)に到着せし祝義とて和歌の會を興行す」

(同「年録」第十二巻)。

  歌題は寄國祝言、常座略。一座の人々は、

   源𠮷里 源成福 平勝旨 源恒隆 源以直 源勝只 藤原宗興

   源元之 源勝繾 藤原貴亮 丹治直行 藤原貞清 藤原正武

   藤原全故

 

の十四人。次に全故の作のみを掲げる。

                     藤原全故

   民くさはかみになひきてかみは又

くにをまもれるみちそたかはぬ

     

民草は神に靡きて神は又 国を守れる道そ違はぬ

 

御 祇              全 故

 

さかへます君かやかたはすみよしや

國つみかみもともにまもらん

  

   栄えます君が館は住吉や 国積み神も共に守らん

 

この甲斐滞留中のこととして[積玉和歌集」巻十雑七に次の一條がある。

   

賓永七年紳無月に、かひのくに積翠寺の嶺要害山のわたり、

   けはしきつゝらをりをからうしてのほりつるに、

 

険しき九十九折を辛うじて登りつるに

 

供に侍りつる藤原全故、山のいただきに至りて、

分のほる君やくるしきな

と讀みてみせけるに、

かへしとにはあらて口すさみに(𠮷里)

 

霜雪のつもるみとりの松かねや

さかしき山をのほる苦しさ

 

なお、次の贈答は右の一條に前後して掲げられているもので、年次不明ながら雨音の殊更の関係を窺わせるにたる一例である。

   

藤原全故が甲斐の国より江府へゆき侍るとて(吉里)

   

しはし今別るゝ袖にせく涙あふ

日ほさんと契る行末

 

     かへし          藤原全故

 

みことはの錦ゆたかにたつ旅の

ころもつすして今帰りこん

   

藤原全故武蔵の国へまかるとき、火打を送るとて

 

わするなよ思ひうちには有明の

月かけかすひ旅の主にも

 

○ 正徳二年(1712)正月十二日、全故新宅を営み歌會あり。

  「積玉和歌集」巻十雑七に、

  

正徳二年正月十二日、藤原全故か新たにやところをかまへし會に、

池水久澄といふことを(吉里)

 

玉拍浪もそみかく千代かけて

すむへき宿の春の池水

 

〇 同年四月二十三日改の「柳澤家分限帳」に、御用役衆の一人として

「一、貳百七拾石 柏木藤之丞」とみえる。

 

 御用役衆は全部で十二人。柏本藤之丞の席次は第九番目に位置するが、石高は十二人中最も高い。

 

 同三年三月十八日、全故五十賀の歌書あり。

   藤原全故か五十の賀會常座に同し題(杜花)にて(吉里)

 

咲そひて匂ひこほるゝ衣手の

森白妙の花の夕かを

                   (積玉和歌集巻二春二)

   

正徳三年三月十八日、

藤原全敗か五十賀の書に同し題(松契多春)にて (吉里)

 

千代かけてしけらん松の深みどり

今十返りの花もみてまし

   

    千代かけて繁らん松の深緑 今十返りの花も見てまし

 

竹契齢といふ事を藤原全故五十賀に (吉里)

 

さかへそふ五十年の人に呉竹の

齢を千代とけふそ契れる

  

    栄え沿ふ五十の人に呉竹の 齢を千代と今日ぞ契れる

   (同 巻十雑七)

 

しかし、不審なことには、この翌々正徳五年にも彼の六十賀の歌書が行なわれており、しかもその記録として同書に次の二例が 見出される。全く理解しがたいことであるが、彼の年齢を考慮する材料としては何れを司とも判定しえないので、共にここに掲げておくこととする。

  

正徳丑年二月十五日、藤はらの全故か六十賀の會に (吉里)

 

けふちきる六十の春を初しほに

千年の松も緑ふかめん

   

今日契る六十の春を発潮に 千年の松も緑深めん

 

藤原全故六十の賀に

 

千代こめて六十の春につく杖の

よはひを竹のさかへにそみん

                  (積玉和歌葉巻十雑七)

    

千代籠めて六十の春に突く杖の 齢を竹の栄えにぞ見ん

 

   十一

 

    正徳四年(1714)九月五日、

眞光院殿(曽雌氏、吉保正室)一周忌追福歌會に出座

 

(山梨県恵林寺蔵和歌資料)。

  

同歌會目録によれば、作者は、

  侍従原朝臣吉里 刑部少植原経隆 式部少植原時陸 甲斐守室頼子臣、

源成福下川平角 源政徳井野口浅右衛門 源恒都桜井又右衛門 

藤原貞友成瀬三太夫 藤原貴亮今立六郎太夫 藤原全故柏木藤丞 

源正興辻平八 源勝只矢作金吾 平田重関根丹官 源守成堀内平司 

源両行桜井茂右衛門 源正粉十河善八 源正治増田伴六 源弘順和田新右衛門

 

の十八人。全故の詠歌は次の一首である。

   

季秋五日同詠提婆品和歌    藤原全故 

 

 つかへつゝけしときくこの實もそ

けふのみのりのためにひろはむ

 

○ 同年十一月二日、柳澤吉保歿。全故、追悼歌文を草す。

  

左にその全文を掲げる(恵林寺蔵、自筆)。

  

獲麟の夕を見奉りなから、

しはしかほとは夢かとのみたとらるに、

八日の夜中過て龍華山におはします、

なき御からを見送り奉りて、

 

    夢かとそたとりしほともしたはれて

         みかけををくるよはのかなしさ

 

龍輩山にてみのりのわさせさせ給ふを、

思ひやり奉りて、

    

まちえたる其暁の月ならん

         とをきみてらの法のひかりは

 

古今集御傅授なしくたし給ひしことを思ひ出奉りて、

    

うけえしも君こそしるへわかの浦に

         まよふひとりの跡をさたかに

 

なからへ侍るほとは、

とうかうもつかへ奉らんとおまへにて申奉りしに、

老か身の御跡に残り、

なけきをこりつみ侍る事よと、

    

いける世のかぎりといひしあらましも

         わりなく残る老の身そうき

 

もとどりをはらひ侍りたきねかひも、

さはり申事おほく、

ゆるし給はさる仰事うけ給はり奉りて、

    

霜をけるわかもとゆひを其まゝに

         はらふは袖のしくれ也けり

 

目は見え侍らす、

病身のかよはき老か御跡にのこり奉らんと

   おもひかけ奉らす。

誠に見はてぬ夢の世なる哉。

                   藤原全故 上 【註1

 

    同年十二月、永慶寺殿(柳澤吉保)三十五日追禧歌會に出座。

(恵林寺蔵和歌資料)。

当日一座の人々は、源正治に代り源憲正が加わるほか、

眞光院段一周忌迫福歌會に同じ。全故の一首のみ左に掲げる。

 

    冬日同詠現世安穏和歌     藤原全故

 

   にこりなき世にさきちりて行花の

うてなはさそなはちすな心糞し

 

    同五年九月五日、眞光院殿三周忌追福歌合に出座

(恵林寺蔵和歌資料)。

  一座の人々は、

  吉里 経隆 頼子 貴亮 全故 山重 元淡 憲正

 の八人。全故及び次條にも見える元淡の作のみを左に掲げる。

     季秋同詠寄月懐奮和歌     藤原全故

 

うき秋の露けき袖にやとれるは

月もみとせのけふやといけを

     同              源 元淡

 

この秋と月はやとるを袖の露

ふりしみかけをなとしたふらむ

 

    同年十一月二日、永慶寺殿一周忌追福歌會に出座

 

(恵林寺蔵和歌資料)。

  

同歌會目録によれば、作者は、

   侍従吉里 刑部少輔経隆 吉里室頼子 藤責亮今立六郎太夫

   藤全故柏木藤尉 平由重関根丹宮 源元淡谷口新佐 源憲恵正増田伴六

 

の八人。全故・元淡の作のみを次に掲げる。

     

仲冬二日同詠往事者渺茫和歌   藤原全故

 

こそよりのまよひの雲をけふ晴む

たゝみほとけととなへあけつゝ

     同             源 元淡

 

なに事も月日すくれはわすれ水

みかけはいつかおもひたえなむ

 






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最終更新日  2020年11月15日 07時31分37秒
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