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2020年11月18日
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カテゴリ:俳人ノート

図説 俳句歳時記 【春 時候】

 

編者 角川原義

 発行 角川書店 昭和401225

 

  一部加筆 山梨歴史文学館

 

新年(としあらた) 年頭 年初 年始 甫年 改年

初年(はつとし) 明くる年 新歳(しんさい) 新しき年 新玉(あらたま)(とし)

新玉 玉の年 年立つ 迎ふ年 改まる年

来る年 年越ゆる 年立返る 年変わる

改まる 年の端 年の始 年の花

 

解説 

 

一年の始めである。四辺の景物も人の心も何か新鮮な感じで、すなおに希望がわく。山村には昔ながらのさまざまな農耕生活の遺風行事が行なわれ、町々にも新年を実感させる風景があふれる。

➡初春・正月・立春(春)  (大野林火)

 

考証 

『万葉集』巻二十に「(天平宝字)三年春正月一日、

因幡国の庁にして(あへ)を国郡の司等に賜ふ宴の歌一首 

新しき年の始めの初春の

今日降る雪のいやしけ吉事  大杯家持

『金葉集』春に「正月一日、雪の降りける日つかはしける 

あら玉の年の始めに降りしけば

初雪とこそいふべかりけれ  顕季

 

     連『連珠合壁集』(文明八)に「年越えて・年のは」、

     連『至宝抄』(天正一三)に「あらたまの年」、

     『毛吹草』(正保二 1645)連歌四季之詞に「初年・若き年」、

     『世話尽』(明暦二 1656)に「年頭・甫年・肇歳・献歳」、

     『増山の井』(寛文三 1663)に「年の始め・年立つ・明くる年・新しき年」、

     『三湖抄』(寛文四 1664)に「新年・改まる年」、

     連『温故日録』(延宝四 1676)に「年を迎ふる」、

○ 『鼻紙袋』(延宝五 1677)に「年改まる・あら玉」、

○ 『しをり萩』(元禄五 1692)に「年立ち返る」、

○ 『糸府』(元禄七 1694)に「改年」、

○ 『俳諧新式』(元禄一二)に「歳始」、

○ 『通俗志』(享保元 1716)に「年始・立つ年・年の花」、

元朝の見るものにせん富士の山 宗鑑(山梨県河口湖町)

○ 『四季名寄』(天保七 1836)に「寝首・歳朝・迎ふ年」を各初出。

○ 連『無言抄』(慶長三 1558)に「〈あら玉〉は、改の字の心なり。

〈あら玉の春〉といふことなしといへり。

〈あら玉の年・あら玉の月〉などともあるべし。

ただし、〈あら玉の春〉ともいふべぎとなり」

     『山の井』(正保五 1648)に、

元日「支干はそのかみ元日に用ひはべれども、近年、季の詞を加へはべる。

酉の年ののどけぎに、鳳凰も世に出でよとも、治れる時をつくるなども言ひなす。

寅の日の風うそぶくことなどあるをも、千里の外もあまねぎ御徳をよそへ、

竹の園生も万歳の声うちそふるなど、祝してつらねなしはべりし」。

     『御傘』(慶安四 )に、玉「無言抄に、〈あら玉の年〉は、玉にあらず、

改まるといふことなりとしるせり。大きなる誤りなり。磨かぬ年を、〈あら玉〉といふ。

その玉をば砥にて研ぐゆゑに、〈年〉の枕詞にしそめしなり。

枕詞といへども、おのづから改まる心あるゆゑ、後々は〈あら玉の春〉とも続け、

また〈年〉とも〈春〉とも続けずして〈あら玉〉とばかり言ひて春の季を持ち、

〈年〉の替へ詞になるなり。貴之の歌にこれあり。

たとへば〈あしひぎ〉とばかり言ひて、〈山〉になるたぐひなり」。

     『温故日録』に「〈年〉に〈改むる〉といふ字添へば、

みな当年のことになりて、春なり。ただし、句躰によるべし」。

○ 『しをり萩』に「〈年立ち返る〉とは、ただ改まる義なり」。

○『滑稽雑談』(正徳三 1713)に、新しき年

「古詩に云、今日天晴宜麦熟、新年春到報に花知。

また云、新歳喜今日、旧年猶昨宵。(中略)

     説文に曰、新は本を取るなり。△これも改まる心なり。

詩歌にも多し。立春に詠めり」。

     『年浪草』(天明三 1783)に、あら玉の年

「あるいは云、玉はまろばすに、滞らず走るものなれば、()心なり」。

     『改正月今博物筌』(文化五 1808)に

「〈新玉の年〉といふは、改まる年といふなるべし。

万葉には、〈荒玉の年〉とあり。玉といへるものは、

宝の内なれば、年の始めに祝ひて、かくはいふなるべし」。

     『忘貝』(弘化四 1847)に、年の花「花は華なり。

詩語砕錦に、桜柳烟霞などの景色をいふとぞ。年光も同じ」。

 

 新 年 

春立つや新年古き米五升芭     芭蕉「真蹟短冊」

新年の深雪ぬくとく愛馬飼ふ    飯田蛇笏「白嶽」

新年の山襞に立つ烟かな      室生犀星「遠野集」

新年の病臥の幾日既に過ぎ     山口啓子「七曜」

新年の葬家しづかに道に向く    森川暁水(雲海)

新年を見る薔薇色の富士にのみ   西東三鬼「変身」

新年の酒甕ひとつ凍りけり     中島月笠(曲水)

新年の(こと)云はず背と旅にゐる    石橋秀野「桜濃く」

新年のくろぶし緊むるかたき足袋  能村登四郎(馬酔木)

新年の森であかるい藻となる髪   伊丹公子「青玄同人句集」

新年の目ばたきをして日本髪    福田紀伊「銀婚」

雪の新年耳の渦にて時計鳴る    下辻佳図子(河)

新年の都は遠し四方は海      奥野美枝子(万緑)

新年や人に疲れて人恋ふる     梧 六和(石楠)

蜘蛛のごと覚め新年の藪のぞく   日美清史(雲母)

床軸の白鞘新年句座に舞ふ     尾崎木星(水明)

掛盤に顔見て年の新なり      小西来山「歳且牒」

老の愛水のごとくに年新た     飯田蛇笏「山響 」

鷲下りて雪原の年あらたなり    山口草堂「帰去来」

年新し狂院鉄の門ひらき      西東三鬼「今日」

年あたらし炭の火となる音にゐて  西垣 脩「現代俳句全集」

年新たな凍み足袋裏を堅くせり   野沢節子(浜)

をのこ子の小さきあぐら年新た   成田子空(万緑)

年新らし雲の彼方に雲ながれ    宮川和己(曲水)

体重計に少女の重み年新た     尾高惇子(雲母)

年新た鶏の動悸をてのひらに    香取哲郎(寒雷)

ましぐらに母に走る子年新らし   渡部ゆき子(天狼)

エアー通ひ年新たなる無菌室    佐野圭伸(南風)

霞さへまだらに立つやとらの年   貞徳「犬子集」

ありたつたひとりたつたる今年かな 貞徳「犬子集」

としたつやよい茶匂うて親の乳   才麿「能登釜」

立つ年の鏡をかほの花にせう    鬼貫「七車」

年たつや家中の礼は星月夜     其角「甲戌歳旦帳」

年立つやもとの愚か又愚にかへる  一茶「九番日記」

花屋いでて満月に年立ちにけり   渡辺水巴「水巴」

我家蔽ひて年立ちかへる榎かな   渡辺米沢「未灰」

山水は歯栞の下ゆき年立ちぬ    中島月笠(曲水)

犬の鼻大いにひかり年立ちぬ    加藤楸邨「野哭」

ひとの家に雨蕭々と年立てり    石田波郷「鶴の眼」

山寺の糞壹浄らに年立ちぬ     中川宋淵(雲母)

ことさらのおもひ深雪に年立ちて  及川 貞(馬酔)

  父系の樅母系の泉年立てり     加藤かけい(環礁)

鷹降りて河口年立つ糸魚川     宮武寒々「朱卓」

雨後の草あをあをと年立ちにけり  沢田弦四朗(馬酔木)

満天の星の賛歌へ年立てり     杉本愛子(火星)

年すでに明けて達磨のしり目かな  服部嵐雪「珠洲之海」

人先に伺によらばや年明けて    野坡「戊寅歳旦牒」

人顔を覗くや年の明けかかり    浪化「歳旦帖」

一輪の霜の薔薇より年明くる    水原秋桜子「帰心」

年あけぬネオンサインのなきがらに 篠原原作「現代俳句」

年明けしくりやの青菜龍にあふれ  川本臥賎「樹心」

年明くる雲の雪崩の東京へ     加藤楸邨(寒雷)

年明くとベツドに凭りて足袋はけり 石田波郷「春嵐」

はじめての寄港地すでに年明けて  山口波津女(天狼)

年明くる舞火の穂を手で揉むで   秋元不死男(氷海)

漬菜沈む力しづかに年明くる    田中饌石(南風)

白描の曼陀羅に年明けにけり    高橋梁和(曲水)

舟蔭に年明け陥栂鳴りはためく   山本一糸(寒雷)

かびろくてうづの袖山年迎ふ    飯田蛇笏「白嶽」

ふるさとのころ柿食うべ年迎ふ   臼田亜浪「定本亜浪句集」

年迎ふ山の井深く掘りあてし    中村汀女「都鳥」

男子(おのこ)われ老なほあさぎ年迎ふ    西烏麦南(雲母)

日本海荒らぶに祈り年迎ふ     森川脱水(雲海)

塩鮭を大切りにして年迎ふ     佐野青陽人(曲水)

派手を身につけず来し年重ねけり  及川貞(馬酔木)

年迎ふとぼしき銭を数へつつ    志摩芳次郎「現代俳句全集」

世に借りしもの大いなり年迎ふ   目迫秩父(浜)

壁の汚点(しみ)数へて年を迎へけり    徳永夏川女「心月抄」

年迎ふちちははありし日の遠く   武石佐海(朝霧)

手垢拭くむなしさ重ね年迎ふ    渡辺七三郎(河)

理容師も髪整えて年迎う      小山内渓声(氷原帯)

装ひは項剃るのみ年迎ふ      奥野美枝子(万緑)

年改まり人改まり行くのみぞ    高浜虎子(長野県下伊那郡)

年始め

  お茶壹や朝日が嵩を年始      言水「誹枕

  禽獣に声をやさしく年はじめ    今川凍光(天狼)

年始まる

  湯たんぽの熱きこの年始まりぬ   栗生純夫(科野)

  葱・もやし・白菜清冽歳はじまる  西垣脩「現代俳句全集」

  雪に音楽雪に稲妻年始まる     加藤知世子「朱鷺」

  灯にさらす赤子のふぐり年はじまる 中山純子(風)

  水の色火の色わが家年はじまる   星奈美(麦)

年改まる 

年改まり人改まり行くのみぞ    高浜虎子「句日記」

  ひそかなる粘菌に年改る      松木たかし「たかし句集」

  太巌を揺りてみん年改まる     中島月笠(曲水)

 あらたまる年の激浪かがやけり   佐野まもる「海郷」

  天ちかく焚く炉に年のあらたまる  谷野手志(馬酔木)

  子等の年数へつつ年改まる     上野 泰「俳句年鑑」

 瓦斯の火のあをきとき年改る    青木 建(春燈)

年変る 

粘萱に年かはりたる日がさせり   清崎敏郎「安房上総」

  テレビショー果ててふわふわ年変る 守田昭子夫「青玄同人句集」

 年来る 

年来る炉火に太古の色はあり    高木峡川「峡川」

  年来たる如何な年ぞと頭上ぐ    天野莫秋子(天狼)

  風聴き澄む喪中は外より年来るも  山崎秋穂(南風)

年頭 

年頭敬老のその後の川田順     百合出羽公(馬酔木)

  年頭ひとり硝子戸に虻唸りづめ     石田小波「遠方」

年首 

年首らしき明るさ土管の向ふ口     北野民夫(万詠)

来る年 

来る年の重湯につなぐ命かな       貞室「卯辰集」

年立帰 

入り船や年立帰る和田の原     池西言水「真蹟」

  鳥のこゑ雨あら玉の年立ちかへる  上島鬼貫「七車」

新玉 

あら玉の馬も泥障ををしむには   服部嵐雪「玄峰集」

あたらしき此さびしさや庵の春   樗堂

あらたまの年金婚の父母のとし   百合山羽公「故園」

あら玉の年の始めの眼鏡拭く    林原耒井(南風)

としつむや年々に年の美しき    士朗「琵琶園句集」

年の端も芽立草木に物とらそ    来山「能登釜」

髪伸びて年は越えにき多弦は死にき 石田波郷「惜命」

里富めり奈良の初年寿禄神     言水「誹枕」

初年の雲ゆく瀑のみゆるかな    飯田蛇笏「春蘭」

ひもといた年の冠のももちどり   鬼貫「七車」

年祝ふ家族の増ゆることもなく   山口波津女「良人」

立帰る春や此の身の大直し     来山「津の玉柏」

十二支の枝にひらくやとしの花   貞室「玉海集」

年の花もほのぼの明やはつざくら  北村季吟「一字幽蘭集」

としの花鶯までは気も付けず    来山「柏崎」

年の花歌人の曲をうつし来ぬ    才麿「遠帆集」

雪よ雪よきのふ忘れし年の花    鬼貫「鬼貫句集」

 






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最終更新日  2020年11月18日 17時05分02秒
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