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2020年11月19日
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カテゴリ:俳句観賞

俳句歳時記 【初春】

 

『図説 俳句歳時記』

編者 角川原義

 発行 角川書店 昭和401225

 

  一部加筆 山梨歴史文学館

 

明の春 今朝の春 千代の春 花の春

玉の春 新春 迎春 四方の春

 

解説 

陰暦では新年と春がほとんど同時に来たので、春という字を新年の意に用いることが多かった。

その習慣は陽暦に改って久しい今日も巷間になお残り、初春を新年の意に転用して、厳寒の一月にも一般に用いている。「海の春」「山の春」「老の春」「おらが春」など、「春」には新年をことほぐ意がこめられている。➡新年(大野林火)

 

考証 

『万葉集』巻二十に

「新しき年の始めの初春の今日降る雪の初春の飾りいやしけ吉事 大伴家持」、

『夫木和歌抄』春に、朔日

「九重や玉しく庭に紫の袖をつらぬる千代の初春 俊成」。

     連『連珠合壁集』(文明八 )に「はつ春」、

     『毛吹草』(正保二 1645)連歌四季之詞に「来る春・四方の春」、

     『世話尽』(明暦二 1656)に「めでたき春・よき春・新春」、

     『増山の井』(寛文三 1663)に「けさの春・けふの春・あら玉の春」、

     『鼻紙袋』(延宝五 1677)に「御代の春・国の春・明けの春・花の春・二度の春」、

     『番匠童はなひ大全』(元禄四 1691)に「改春」、

     『通俗志』(享保元 1716)に「千代の春・君が春・宿の春」、

     『袖かがみ』(延享元 1748)に「玉の春」、

     『改正正月令博物筌』(文化五 1808)に「初春」、

     『忘貝』(弘化四 1847)に「神の春」、

     『葉草』(嘉永四 1851)に「窓の春・千々の春」を各初出。

     『年浪草』(天明三 1738)に、君が春

「これを大君といふ。鳥丸資慶卿の書きたまへるものに、

君と詠むことは、大君に紛るるゆゑ、

築地の内にては詠むべからず。

また、惣別ともいふなり。

それも、〈君ならでたれにか〉など、

もとより然したる詞は、ゆるす心得べぎなり」、

千代の春「また〈千世の初春〉とも。

(もも)()万代(よろずよ)ど、古歌に見るべし」。

     『改正月令博物答』に、

初春「春立つ日より三五日の間をいふ。早春も同じ心なり」。

『葉草』に、花の春「花の咲く春といふ義なり」、

四方の春「いづれを見ても春の気色のそなはりたるをいふ」。

 

初春 

初春を夷や鮭千千々の松      言水「団袋」      

   春立ちてまだ九日の野山かな    芭蕉「笈の小文」

   初春や家に譲りの太刀はかん    去来「其角歳旦帖」

   初春のめでたき名なり賢魚(かつお)魚    越人「廣野」

   はつ春の落ちつくかたや梅柳    浪化「白扇集」

朝夕の人も珍らしけふの春     言水

   梅柳はつ春の眼たしかなり     白雄「白雄句集」

   はつ春やけぶり立つるも世間むき  一茶「文化句帖」

   はつ春も月夜となるや貌の皺    一茶「文化句帖」

   (ふぐ)喰ひし人はつ春にあへりけり   玉屑「題葉集」

   初春や脇差光る町人衆       蓼松「発句類聚」

   初春や炬燵の上の小盃       重厚「親類題発句集」

   初春や鱈売門に担ひ入る      籾山梓月「冬うぐひす」

   初春の灯をともしゐる沖の船    中川宋淵「雲母」

 

明の春 

世の中の栄螺も鼻をあけの春    宝井其角「五元集拾遺」

   かつらぎの紙子脱がばや明の春   蕪村「明和辛卯集」

   ひがごとのきのふのむかし明の春  大魯「蘆陰句選」

   麦肥やす空ほがらかに明の春    几董「晋明集四稿」

   あばら家や其の身其のまま明の春  一茶「八番日記」

   行灯の片つぴらより明の春     一茶「文政八年句帖」

   武士町やしんかんとして明の春   一茶「九番日記」

   しづけさのものに聞えて明の春   升六「題葉集」

   紐を解く大日本史や明の春     塩原井月「井月全集」

   矢屏風の三斑中黒や明の春     嶋田五空「裘 かわごろも」

   大川に鴎の白し明の春       小沢碧童「刈藻集」

 

 今朝の春

酒がもめ蓬莱にあふや今朝の春   季吟「山の井」

庭訓の往来が文庫より今朝の春   芭蕉「江戸広小路」

誰やらが形に似たり今朝の春    芭蕉「続虚栗」

今朝春の奥孫もあり榾を富む    嵐雪「虚栗」

けさの春は李白が酒の上にあり   杉風(さんぷう)「卯辰集」

たださへも見るべき山を今朝の春  涼莬「戊寅歳旦牒」

けさ春の氷るともなし水の槽    召波「春泥発句集」 

袖口に日の色うれし今朝の春    樗良「樗良発句集」

橘に碁の音聞かんけさの春     蓼太「蓼太句集三編」

うづみ火も去年とやいはん今朝の春 几董「晋明集二稿」

みなみどり松を見海をけさの春   白雄「白雄句集」

散ればさく春に今朝逢ふ命かな   青羅「青羅発句集」

鶺鴒のをしへに来たり今朝の春   青羅「新五子稿」

餅くって眠気付きけり今朝の春   蝶夢「草根発句集」

かはらぬよ三千年のけさの春    大江丸「はいかい袋」

けさの春何所有に誰ぞ草枕     樗堂「萍窓集」

老が身の直ぶみをさるるけさの春  一茶「七番日記」

這へ笑へ二つになるぞけさからは  一茶「七番日記」

みどり子や御暑いただくけさの春  一茶「七番日記」

ひとつづつものなつかしやけさの春 蒼虹「蒼虹翁句集」

遠巌に波もなかりき今朝の春    石塚友二「光塵」

今朝の春白きものみな病む翳もつ  窪庭忠雄(林苑)

 

今日の春

 

借銭もきのふの淵ぞけふの春    宗鑑「一字幽蘭集」

朝夕の人も珍らしけふの春     宗因「宗因発句集」

けふの春雪の降つたる事もあり   森川許六「五老文集」

ふしぎなり生れた家でけふの春   一茶「真蹟」

 

千代の春

御せいしんの君に来て逢ふや千代の春 貞徳「玉海集」

天秤や京江戸かけて千代の春    芭蕉「当世男」

 

日の春

日の春をさすがに鶴の歩みかな   其角「丙寅初懐紙」

 

花の春

稀な年や目も優曇華の花の春    季吟「玉海集」

おもしろや頃は初折の花の春    宗因「宗因発句集」

難波津にさくやの雨や花の春    宗因「捨子集」

大福やたつことや数奇花の春    伊藤信徳「鸚鵡集」

千金や了佐札にも花の春      信徳「破箒」

花の春命に枝や東うけ       来山「今宮草」

我こそはけふを生れ日花の春    来山「津の玉柏」

兎角して旅の夜明で花の春     言水「二日影」

さかづきや先づうちわらふ花の春  鬼貫「七車」

二日にもぬかりはせじな花の春   芭蕉「笈の小文」

薦を着て誰人います花の春     芭蕉「其袋」

面々の蜂を払ふや花の春      嵐雪「戊寅歳旦牒」

角頭巾どちへ投げても花の春    丈草「俳諧耳底記」

けなりでは逢はじいうても花の春  去来「草の道」

うぶすなにあまえて旅ぞ花の春   杉風「小弓誹諧集」

病む床や花の春見る屏風越し    杉風「小夜の中山集」

先づ米の多い所で花の春      惟然「淡路島」

宵の気をすてて起きるや花の春   浪化「浪化句集」

よき事の目にもあまるや花の春   千代女「千代尼句集」

(すね)白き従者も見えけり花の音    蕪村「落日庵句集」

素帽着た酢売り出でこよ花の春   召波「春泥発句集」

むつまじやもろ人競ふ花の春    樗良「樗良発句集」

花の音まだ見ぬかたの国恋し    麦水「葛笥」

夕暮もよし灯の花の春       蓼太「蓼太句集二編」

東雲やまだ見ぬかたの花の春    蓼太「蓼太句集三編」

五十まで母もつ人ぞ花の春     青羅「青羅発句集」

明星の色を外山のはなの春     青羅「青羅発句集」

薄雪の恋寝かなひて花の春     青羅「青羅発句集」

松のひまにほのぼの見ゆる花の春  暁台「春雨巷句集」

宗長の老にあやかれ花の春     蝶夢「草根発句集」

花の春まだ見ぬかたの国恋し    麦水(山梨県中巨摩郡)

見る物は先づ朝日なり花の春    蘭更「半化坊発句集」

まさ夢や浪花は梅のはなのはる   大江丸「俳懺悔」

侘び尽し佗び尽してもはなの春   士朗「枇杷園句集」

身じろぎのならぬ家さへ花の春   一茶「享和句帖」

すりこ木のやうな歯茎も花の春   一茶「七番日記」

大江戸や芸なし猿も花の春     一茶「七番日記」

君が世やよその膳にて花の春    一茶「文化句帖」

おのれやれ今や五十の花の春    一茶「株番」

ほのぼのと屠蘇の廻るや花の春   巣兆「発句題叢」

活きるほどいきてのうへも花の春  五明「第葉集」 

旅人に盃ささむ花のはる      蒼虬「蒼虬翁句集」

年々や家路忘れて花の春      塩原井月「井月全集」

聖や賢や竹林に愚や花の春     河東碧梧桐「新俳句」

草の戸にひとり男や花の春     村上鬼城「鬼城句集」

 

新春 

()めり我ゑめりかれはふたつの春 伊藤信徳「稲筵」

(ああ)々大ナル哉喜と云々      芭蕉「向之岡」

妻が宣る新春一語爾老ゆ      石塚友二(劾)

黒牛の疲れ癒えざる新春野     殿村菟絲子(俳句研究)

新春向きのネクタイは結んで見せる 加倉井秋を「胡桃」

地蔵新春雀の餌ほどの供へ米    北野民夫(万緑)

新春や段だん畑のみかんの黄    三木志げ女(右燈)

 

 迎春

迎春や油の氷る壜の中       小沢碧童「碧童句集」

 

新玉の春

帽子懸けて名もあら玉の春の恋   紫暁「あけぼの草紙」

あら玉のとし立ちかへる虱かな   一茶「文化句帖」

 

玉の春

青空にきず一つなし玉の春     一茶「九番日記」

かしこきや同車にめぐる御代の春  信徳「玉海集追加」

ものしりよくらべもの出せ御世の春 来山「俳諧風体抄」

ゆび折に腕もだるし御代の春    言水「六百番発句合」

国ぞ春御代にしたがふ虎づかひ   言水「坂東太郎」

田子の浦に富士の高根や御代の春  許六「笈の若葉」

餅喰の喉の広さや御代の春     許六「柿表紙」

御代の春蚊屋は萌黄に極りぬ    越人「翁草」

ねこの恋風もいでて御代の春    大江丸「はいかい袋」

日の本や金も子をうむ御代の春   一茶「九番日記」

 

四方の春 

天性にわたくしなしや四方の春   信徳「捨子集」

駒鳥の先づ名のりけり四方の春   涼菟「築普請」

目を明けて聞いて居るなり四方の春 太祗「太祗句選」

まん中に柳を置いて四方の春    元夢「千題集」

しら雪のすゑより見えてよもの春  蒼虻「蒼虹翁句集」

松風や井に立ちて聞く四方の春   籾山梓月「冬鶯」

 

老の春 

松の葉の弓作らなん老の春      信徳「万歳楽」

◎ 老の春初はなげぬき今からも     素堂「とくとくの句合」

さればこそ人わらひけり老の春    調和「俳諧三部抄」甲斐の人

念仏と豆腐たふとし老の春      支考「蓮二吟集」

桑さして栄行く畑や老の春      杉風「続虚栗」

琴碁書画それにもよらず老の春    曽良「雪まろげ」

それも応これも応なり老の春     蒼菟「歳且帖」

老のはるめがねに蒔絵かかせばや   大江丸「俳懺悔」

到来の白外郎や老の春        野村喜舟(渋柿)

喜寿の賀を素直にうけて老の春    富安眠生(若葉)

八つ口をほころばせたり老の春    阿波野青嵐(かつらぎ)

 

君が春  

 

かびたんもつくばはせけり君が春   芭蕉「江戸通り町」

器々(うつわ)すたる人なし君が春       素丸「素丸発句集」

かさを鶴もうたふや君が春      一音「千題集」

宿直して迎へ侍りぬ君が春      月居「続明鳥」

拙者義も異義なく候君が春      一茶「九番日記」

身は下々のままに起きても君が春   丈左「発句題叢」

 

年の春 

山はこのみ酒まで持ちて年の春    言水「白玉楳」

檜葉の風そよ吹くことも年の春    石塚友二(鶴)

こけし古り埴輪あだらし年の春    百合山羽公(海坂)

 

宿の春 

 

宿の春に老を免許の札もがな     季吟「桜川」

風月の白髪を知るや宿の春      言水「露沾集」

◎ 宿の春何もなきこそ何もあれ     素堂「江戸弁慶」

発句なり芭蕉桃青宿の春       芭蕉「芭蕉盥」

のさばって肱を曲げたり宿の春    越人「鵠尾冠」

白髪剃りてしらぬ翁や宿の春     荷兮「俳諧大三物」

むらさきのむらさきしきぶ宿の春   山口青邨「毎日新聞」

炭斗に炭も満ちたり宿の春      松本たかし「たかし句集」

 

庵の春 

 

あたらしき此さびしさや庵の春    樗堂「萍窓集」

庵の春寝そべる程は霞むなり     一茶「嘉永版発句集」

世を旅の銭少し有る庵の春      葛三「発句題叢」

蝶にかす日南も出来て庵の春     大原其戎(俳諧明倫雑誌)

庵の春四檐の雪に押され住む     伊東極浦「続春夏秋冬」

 

家の春 

ゆさゆさと山の草木を家の春     一草「発句題叢」

(ごまめ)ひくねずみの出たり家の春     上川井梨葉「梨葉句集」

たらちねに還る暦や家の春      宮部寸七翁「改造文学全集」

 

旅の春 

 

(はなひ)るは我がうはさか旅の春      一茶「九番日記」

むさしのや大名衆も旅の春      一茶「文政八年句帖」

目出度さも人任せなり旅の春     塩原井月「井月全集」

 

窓の春 

鶯のくる影ぼしも窓の春       一茶「八番日記」

 

江戸の春 

鐘一つ売れぬ日はなし江戸の春    其角「宝普斎引付

三日せば乞食忘れじ江戸の春     蓼太「蓼太句集三編」

引き窓の一度にあくや江戸の春    一茶「九番日記」

六尺の男揃ひや江戸の春       吐月「発句類聚」

 

国の春 

串貝や大きにやはらぐ国の春     信徳「破箒」

真中に富士聳えけり国の春      伊藤松宇「松宇家集」

 

民の春 

洛外や千代をへん士の民の春     信徳「鸚鵡集」

牛馬の物喰ふ音や民の春       蓼太「蓼太句集二編」

 

千々の春 

鶴さもあれ顔淵生きて千々の春    其角「虚栗」

とてもならみろくの御世を松の春   一茶「真蹟」

はらはらと震こぼれて松の春     斗入「発句題叢」

 

門の春 

庵にのみふるとしの雪を門の春    白雄「白雄句集」

抱かれもし遊びもしたり門の春    安立恭彦(俳句)

 

おくの春

山草やいつかこころのおくの春    二柳「題葉集」

 

わが春

わが春やだどん一つに小栗一把    一茶「文化句帖」

 

おらが春

目出度さもちう位なりおらが春    一茶「おらが春」

 

身の春

身の春や遊ぶところに日かげさす   白雄「白雄句集」

 

浦の春

疑ふな潮の花も浦の春        芭蕉「いつを昔」

 

神の春

とび梅やかろがろしくもかみの春   守武「守武千句」

又うへも内宮や立つ神の春      守武「都草」

神の春楠も巌と成りにけり      暁台「発句題叢」

 

 

明けゆくや雪あたたかにもちの春   蘭更「題葉集」

欠け鍋も旭さすなり是も春      一茶「文化句帖」

子と遊び夫とかたり妻の春      河野静雲「小誌雑詠選集」

年寄れど娘は娘父の春        星野立子「笹日」

古馬車に痩馬つけて御者の春     松本たかし「鷹」

店頭のなべて金色書肆の春      山田土偶「第二土偶句集」

同じ書のいくつもありて書架の春   池上浩山人(桃李)

耳遠くなりて目出度し母の春     田村睦村(大桜)






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最終更新日  2020年11月19日 09時41分05秒
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