2294319 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2020年12月21日
XML

下諏訪に残る和泉式部伝説

 

歌碑を訪ねて 宮坂万治氏著

あさかげ叢書 第七十八篇

   平成10年刊 歌碑を訪ねて刊行委員会編

     一部加筆 山梨 山口素堂資料室

 

和泉式部歌碑 長野県諏訪郡下諏訪町来迎寺

  

あらざらむこの世のほかの思ひ出に

いまひとたびのあふこともがな

 

和泉式部伝説で知られている下諏訪町の引接山来迎寺に、長野の善光寺の一条智光上人の揮毫の美しい文字の歌碑が建てられた。

 碑の歌は小倉百人一首の中から選ばれており、この来迎寺の(かな)(やき)地蔵にまつわる伝説から、地蔵尊の御開帳と下諏訪町でオープンした「鎌倉街道ロマンの道」の開設にともない建てられたものであり、諏訪地方の和泉式部伝説のある古い宿場町の寺が選ばれたのである。

その伝説と言うのは、冷泉天皇の時代に、現在の諏訪市中洲中金子の小泉寺近くに生れた百姓の娘の「かね」は、父母に先だたれ、下諏訪湯屋前の別当方に奉公したが、「かね」は大変信心深く田畑に行く時も、弁当の御飯を少しづつ毎日手向けて通るほどの信仰ぶりであった。

ところが同僚が別当に告げ口したことから、もとより無慈悲の別当の妻は怒って、焼火箸を「かね」の額に当ててせっかんし火傷をおわせた、「かね」はあまりの痛さ悲しさから、地蔵尊の前に膝まづいて、これを告げると、傷は地蔵尊の額に移り、傍らの出湯に顔を映して見ると、不思議なことに「かね」の額の疵は綺麗になっており、「かね」の心のように顔も美しくなっていた。するとこの様子を見た主人夫婦は、その奇異と霊験に驚き、これからは善人に立ちかえり、かねを自分の娘のように可愛がっていた。  

然るにその頃、京都の貴い方がこの別当の宿にお泊りになり、「かね」の容顔美麗に心奪われ、京に連れ帰ったことから、大江雅致の息女となり、

天延二年(974)には橘の道真の妻となった者が、和泉式部その人であると言うのである。

 又、茅野市玉川の栗沢の小泉山観世音は式部の信仰仏であったと言われ、又、諏訪市の温泉寺の殿様ご廟の下の古い五輪塔やこの来迎寺境内にも、和泉式部の墓と言われる古い五輪塔が現在もある。

 史実の和泉式部は、大江雅致の娘で和泉守橘道真に嫁したが冷泉天皇の皇子である為尊親王と恋に陥ち、道真と離婚し又、親王の逝去後はその弟の敦道親王にも愛されて、情炎に式部は身をこがしたが、相次ぐ内親王の死にあい、一条天皇の中宮の彰子に仕え、後には藤原保昌と結婚するなど数多くの恋愛体験者であったという。

 和泉式部の活躍した平安中期は、文学的に女流歌人が活躍した時代でもあり、後宮を中心に教養のある女性が集められ、そこに洗練された芸術的雰囲気をもったサロンが成立した時代でもあった。

 

式部の歌には

 

つれづれと空ぞ見らるる思ふ人

天降り来むものならなくに

黒髪の乱れも知らずうち伏せば

まづ掻き遣りし人ぞ恋しき

後までは思ひもあへずなりにけり

ただ時のまを慰めしまに

 

などがある。

 歌碑は、下諏訪出身の彫刻家大和作内の力作の「おかねの像」の右側の鉄焼地蔵尊のお堂の前庭に、高さ三十五cm、横一m二十cm板の基礎の上に高さ二十cm、横八十cmの自然石の台石を据え、高さ七十五cm、横五十三cmの碑石を建てて、磨き上げた面に歌が刻まれていた。

 






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2020年12月21日 20時02分36秒
コメント(0) | コメントを書く
[歴史 文化 古史料 著名人] カテゴリの最新記事


PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

山口素堂

山口素堂

カレンダー

楽天カード

お気に入りブログ

9/28(土)メンテナ… 楽天ブログスタッフさん

コメント新着

 三条実美氏の画像について@ Re:古写真 三条実美 中岡慎太郎(04/21) はじめまして。 突然の連絡失礼いたします…
 北巨摩郡に歴史に残されていない幕府拝領領地だった寺跡があるようです@ Re:山梨県郷土史年表 慶応三年(1867)(12/27) 最近旧熱美村の石碑に市誌に残さず石碑を…
 芳賀啓@ Re:芭蕉庵と江戸の町 鈴木理生氏著(12/11) 鈴木理生氏が書いたものは大方読んできま…
 ガーゴイル@ どこのドイツ あけぼの見たし青田原は黒水の青田原であ…
 多田裕計@ Re:柴又帝釈天(09/26) 多田裕計 貝本宣広

フリーページ

ニューストピックス


© Rakuten Group, Inc.
X