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山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

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2021年01月10日
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明智光秀・佐馬助の事
◇ 太田南畝『一話一言』
◇ 一部加筆 山梨県歴史文学館

『一話一言』及び『日本随筆』には主題が無い場合が多い。
内容を見て仮の題をつけました。

三宅弥平次後は(明智)日向守一老臣となり、明智左馬前秀俊と号し二千の大将に成。白練の羽織に永徳に雲竜を墨絵にかゝせ具足の上に着し、二の谷といふ名物の甲を着し、光秀の先手をつとめ度々の高名その隠なし。

大津の浪人衆二三人語り居りけるに、紀州浪人物語せしは、日向守光秀は信長公御父子を奉討、所司代を京都に置て洛中の地子銭を免じ、祠堂銀を南禅寺大徳寺妙心寺へ寄進し洛中仕置を固し。
それより江州へ発向し、信長公御居城安土を取、殿主に取龍置候重宝ども不残乱妨し、坂本の城へ納置て、安土城代には明智左馬助を二千にて残し置き光秀は京に帰る。
同月十三日秀吉公と山崎にて一戦し敗軍、其夜に葉柄にて被討候也。明智左馬前は安土城に有しが、秀吉三万余にて西国より馳上ると聞て、我此城を守り何の益あらん、光秀と一所に討死せんと云しが、光秀討死を聞き、直に坂本城へ人て主の妻子を刺殺し自害せんとて、粟津を北へ大津指して打通る。秀吉は坂本の城を取んとて京より下り玉ふ、御先手堀久太郎秀政二千にて大津八町札の辻へ出ると、明智左馬助出合頭に出合て則合戦す、打出の浜にて火花を散らし戦候へども、左馬助は小勢故打負候、本道は大敵取切不退得候に付、湖水へ乗込て被打者数を不知。明智左馬助は白練に雲竜書たる羽織に二の谷の甲を着し、大鹿毛といふ馬に乗り湖水へ乗入、志賀唐崎の一松を目当に馬を游がせ候。秀吉公の諸軍勢海端に立並んで、左馬前只今水に溺れて死るをみよと詠居候。左馬助は坂本の城に久々罷在、大津より唐崎までの海上浅深をかねて存侯故、遠浅を渡し馬の足はづるゝ所を游ぎ、何の事もなく唐崎へ着合申候。
大津の浦に詠居たる秀吉の軍兵ども数千人、すはや左馬前渡しすましたるは、あれ遁すなとて、海ばたを叫喚て馳来る。左馬前なんなく唐崎へ乗上、一松の本にて馬より下り、息合を馬に飼ひ松の根に腰をかけ追来る人数を詠て遠見して休居る。
追手の勢四五町に近づく時に左馬助馬にひたと打乗、唯一ト馬場に坂本の城へ乗切て掛入、町中に十王堂あり、其堂の前にて馬より降り、手綱のまがりを切て堂の隔子繋ぎ付け頭を高く張り矢立取出し、紙に明智左馬前秀俊、只今湖水を渡航馬なりと書付、手取髪に結付、其身は城に入り、主の光秀の内方自然と天然云ふ兄弟の子供を殿守の上へ入れ焼草を込持懸候。秀吉公の御先手雲霞のごとく乱入候、十王堂の前に繋ぎ置たる馬を見付、秀吉へ上る名馬なりとて御召に被成り候、翌年、志津が嶽合戦にも召たるに少もたるまぬ程の名馬也。
さて秀吉公の御人数七重八重に殿守を取り巻く、明智左馬助は光秀安土の城にて取来候不
動国行の御太刀、二字国俊の刀、薬研藤四郎の脇指、なら柴の肩衝、乙御前の釜、紺ふごの水さし、虚空の墨跡等を唐織の宿衣に包み、女の尺の帯にて結付、殿守の武者走へ持参し大音にて申候は、寄手の人々へ申候、日向守運命尽討死仕候に付、妻子をかたづけ左馬助も只今自害仕候、但了簡仕候に、我々こそ滅亡仕候共、天下の重宝を滅し候はん事無念に候間目録相添渡し進候、将軍若君達へ進上被成給り候へとて、殿守より彼道具どもを宿衣に包み下へ追下し候。
寄手数千の者ども是を聞き、先年松永弾正が多門城にて平蛛の釜をうち割りて、其身も切腹せしとは各別哉と不感はなかりし。其後左馬前は小姓立を呼び、日来着たる白練雲竜の具足羽織と秘蔵せし二の谷の甲を渡し、是を坂本の西教寺へ持参し、明智左馬前只今自害仕候、此甲羽織を差上候間、百ケ日迄は御吊奉頼候とて金子百両添て遺し、さて光秀妻子、次に自分の妻子を刺殺し、焼草に火をかけ殿守半に焼上る時、左馬前も腹十文字にかき切り名を蒼天に上たり。古今類希なる働なりと感涙を流さぬはなし。
其後星霜五十年すぎ寛永年中の始に、白練の羽織と二の谷の甲は西教寺に残り有しを、かの寺の檀那山中山城守長俊が孫山中佐右衛門友俊、かの二の谷の甲を申請て紀州へ持参する。 
数年後松野大学と云人の手にわたり、大学死せし後、紀伊中納言光貞卿の御家中、宇佐美造酒助孝定是を求め得たり。今に二の谷の甲は宇佐美造酒助が所持するとなり。





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最終更新日  2021年01月10日 05時18分54秒
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