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2021年01月11日
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新年【人事】姫始

 

俳句歳時記(全五巻)新年の部

昭和三十四十二月二十五日

編集代表 富安風生 発行者  下中邦彦

  発行所  平凡社

   一部加筆 山梨県歴史文学館

 

飛馬始 姫糊始 火水始 密事始

  註 すべて『ひめはじめ』と読みます。(山歴文)

 

【解説】 

「ひめ」の解に諸説がある。

糄糲(ひめ)―今日風に水を加えて釜で炊く飯

を炊きはじめる日とか、

火水(ひめ)始として大や水を使いはじめる日とか、

飛沢(ひめ)始として乗馬始、

姫糊(ひめ)始として女が洗濯、張物をする日とか、

さらに男女が新年はじめ交合するとも解されている。

 

元禄時代、この終りのように解されていた例は、西鶴の・『好色一代男』に

「暦の読初め、姫はじめ可笑し」

や、近松の『大経師昔暦』の

「湯殿始めに身を清め、新枕せし姫始め」

などあり、いまでは花柳界はじめ、一般にこの意に用いられることが多い。

ほこ長し天が下照姫けじめ

蓬莱図松ははみどりに姫始

深雪つみて屋根しづかなり姫始

うつしみにあるさびしさよ姫姶

 

【考証】 

古来、説の多い言葉で、江戸時代の雍証家もそれぞれに説を立てている。山田浚流明の『類聚名物乞考』に、それらの説が大体要約されているのでまずそれを紹介すると、

 諸説まちまちなり。

まず一説には、正月に馬場にて馬泉始むるをいふ。すなはち飛馬始なりといへり。また一説には、男女交接をし始める故にいう。

 姫始なりともいう。また、西川忠次郎が云えるとて人の語りしは、京都にて土御門家に尋ねしよし。是は、ひめ初の訛言なりとかや。その、ひめとは、大水の始にて、正月に火をきり、水を汲みかへて、両ながら改め清むればいふなり。「み」と「め」と相近くて間違えるなりといへり。

又の説は、

  古はつねに朝夕の食に強飯のみを食い、又は粥をも喰えり。是れ蒸飯にして、今の焚干の飯にはあらず。さればその強飯は儀式の物なれば、つねは粥を喰へり。粥に、かた粥、しる粥、の二つありて、今世の焚ほしの飯、昔の堅粥也。是れは褺のものにて常に喰へば、正月元日は、まづ朝には儀式にてその強飯を喰い、それよりやがて褺になりて、堅粥の今世のたきほしの飯を喰う事なるを、そのかた粥をば、むかしは「ひめ」といへる故に、やがて「比米初」といふ也とぞ。

清少納言にも糊の事を「みぞひめ」といへり。今も俗にもこのことば残りて「姫糊」といふは、その事なり。この事当れりといふべし。(下略)

 中世、天文年間以来の俳諧書留の中から句を拾ったという、近世初頭の俳書[犬子集』(寛永十年)に   

「口をひらいて笑う正月」

「暦にもおくには見えぬ姫はじめ」

の、貞徳の句があり、更に同書には

「年をとこするはさほ姫けじめ哉」

の、発句も見えるが、これらは明らかに男女交会の意に用いられていると見るべきである。

   「ほこながし天が下照る姫けじめ」(望一千句)

「姫はじめせんとや門に松ふぐり」(俳諧発句帳)などの句も同様であって、作例によってみると男女交会の意にとれるものが頗る多い。

これは語原的にはともかくとして、世間一般には男女交会の意にとることが普通であったことを反映しているものと見るべきであろう。江戸時代に於いては俳諧は庶民の文学だったのであるから、こういう言葉には、世間一般の解釈が行われたものであろう。

 西鶴の『好色五人女』にも

「正月一日吉書万によし。二日姫はじめ、神代の費より此の事恋しり鳥のをしへ、男女のいたづら

やひ事なし。」(巻三)

とあり、近松の『大経師昔暦』にも

「湯殿始めに身を清め、新枕せし姫始め」

 とあるから、俗間で男女交会の始めと解されていたことは、ほぼ確実といえよう。

 江戸時代の考証家の問にも、世間一般のこの解釈を肯定する説はあったのであって、『傍廂』に

「年ごとの正月の始めに、姫始めといふこと、仮名暦にあるを、いかなる事とも定かに記したる書  

もなければ、大方は男女交通の始めとは思ふめれど、親子兄弟の中にては、つゝましさにさとも

えいはぬは、好色淫奔の心を恥づればなるべし。さるゆへに、小さかしき人は、姫始めなりとい

へり。(中略)故伊勢良丈大人の云く、初春の姫始めは、諸説まちまちなれど、皆とるにたらず。

むかしより借俗のいひ来れる男女交合の始めなり。是、子孫増長の大本にて、人間第一の大礼の

根元なりといはれしは、比類なき卓論なり。」とある。云々






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最終更新日  2021年01月11日 21時40分01秒
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