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山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

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2021年02月14日
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カテゴリ:著名人紹介

寸たびのうた  三重県鳥羽市答志島へ行く

 

『中央線』1973 第9号

  池田光一郎氏著

    一部加筆 山梨県歴史文学館

 

     昭和四七年八月十三日~八月十七日

 三重県鳥羽市答志島へ行く

                     

 上野国雄氏家族四人の仲間入りをして、君江夫人の郷里鳥羽答志島へと、一踏車に同乗して出かけることにした。

八月十二日夜一時甲府を立つ、夜中富士川に沿って駿河入り、清水、駿府は夢の内、浜

名湖あたり夜が明けて、六時半という伊良胡岬に着いた。

船を待つ間の二時間、八時四十分鳥羽行きのヘリーボートに乗る、船路六十分昨秋来たことのある烏羽の街へ再び上陸、時計は十時近かった、乗り次ぐ桃取行定期船は二十分程で、桃取町辻本家に到着、御家族の歓待を受けて旅の疲れもやれやれ、それから汐風に吹かれて五日、大変に皆様の厄介になってしまった。

  

  八月十三日  出発

 

夜立ちして自動車の中に眠るまま朝の伊良湖に早着きにけり

ヘリーボート渥見湾頭波けって伊良胡灯台遠のきにつつ

ヘリーボートめぐりて行くや島々を甲板にいて眺めつるかも

伊勢の海船入りてゆく真向いに烏羽の街々賑いて見ゆ

次の船しばし待つ間を仁君と待合いに居て玉を打ちけり

定期船吾が行く先は向いなる答志の島の桃取の町

桟橋に人待ち顔に娘の一人荷物をさげて待ちわぶるなり

桃取の港はさして広からずあまた漁船のへ先並べり

遠霞むはるか向うの山々は低くかすかに水に連なる。

島越えて向うに光る水平線を大きなる船貨物船はゆく

 

   鳥羽市橋取町は答志島のご巴なり

 

桃取は三百余戸の漁師町人みなまろく睦み合う町

北は海南は山の桃取の町は静かに海に向えり

いと長き二四九〇米の防波堤夕陽に赤く照りて静けし

島の子が学ぶ校舎は真新しく町のはしなる海岸にして

宿直の教師はいともねんごろに島の子供を語りくれけり

     

辻本家厚遇歓待、又鯛漁見学

 

度ごとの食卓にして新鮮な魚介の味のすばらしきかも 

鯛をとるサデ縄の菰うず高くへ先に積みて舟は漕ぎ出ず

向うより大波切って進み来る連絡船の人等手をふる

サデ繩を流し終って三時間夕陽は舟に傾ぶきて来ぬ

朝と出の舟に打乗りよベー夜仕掛けし繩を上げに行くなり

今日の海おだやかにして明けにけりもやいの舟に霧浅くして

サデ繩をたぐる手元にゆらゆらと鱗きらめき鯛上りくる

釣糸の細きを己が兪にて漁撈の人の仕事尊し

釣り小舟々板一枚その下は太平洋の黒潮の路

     

八月十五日島は月遅れの宇蘭盆なり

 

夕かけて村の人々連れだちて寺参りする坂登りゆく

霊迎え墓にさげたる盆供灯香華の中に白くゆれいる

舞台して広場の庭に老若の男女集いて盆踊りする

化粧なき島の娘が結びたる帯の赤きに情こもる見ゆ

阿波の鳴戸や巡礼くどき声はりあげて唄うその節

唄につれ踊りにつれてめぐる輪の夜更くるまでも只続きけり

見物の人にまじりて更くるまで吾も踊りにあかず立ちおり

盆三日年に一度のこの集い島人の皆待ち焦るとか

     

伊勢志摩スカイライン朝熊山に詣でて

 

朝熊岳金剛証寺の本堂は凌長年の建立ときく

ささやかな店に商う茶の子餅山の清風頬なでてゆく

数千に余る供養碑並び立つ参道過ぎて歩みゆきけり

出土せし白銅鏡と経筒の今国宝となりて蔵せり

     

浜風の旅情そぞろに

 

潮風に吹かれて今日は早五日汐焼けの腕うすく光れり

山半や吉五郎などと印したる蛸壷を積む家居並べり

干し網に一つ着きたる赤貝の小さきをとりて楽しかりけり

黒松の根本に捨てし貝殻の山をくずして貝あさるなり

独り停つほ暗き海の桟橋に二見が浦の灯は遠くして

桟塙に夕涼みする浜人としばし語りで楽しかりけり

   

島々点描

 

伊勢湾の島めぐりする人のせて遊覧船は満員でゆく

  飛び島はその名のごとく三つ四つの小島がとんで並びいるなり

松一つ岩一つなるその小島波も寄せずに停みている

浮島やしやこ島などは横長く太平洋を背うて立つ島

舟近く弁天島の鳥居三つ松にかくろい波白く打つ

イルカ島燈台白く松生いて人影もせぬ静かなる島

   

桃取の人よさよなら

 

桟橋に別れ惜しみて停つ人の笑い淋しく船動き初な

又来てと言えることばの終る時こもる余韻に残る惜別

何時迄も手を振り交わす甲板に夕陽既に傾きていし

手に余る土産買いて夜明けには間のある頃を家に着きけり

 

互いの人々よ何時迄も達者に、ああ寸旅終りぬ

 






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最終更新日  2021年02月14日 08時08分52秒
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