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山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

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2021年04月02日
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カテゴリ:俳人ノート

河合曽良 『奥の細道』俳諧書留

 

 *室八嶋

 

絲遊に結つきたる煙哉        翁
あなたふと木の下暗も日の光     

入かゝる日も程々に春のくれ
鐘つかぬ里は何をか春の暮
入逢の鐘もきこえず春の暮

 

   三佛開山佛光國師佛國ゝ佛應ゝ
  

雲岩寺十景     五橋     三井
  海岩閣 竹林    獨木橋     神龍池
  十梅林 龍雲洞   瑞雲ゝ     都寺泉
  玉几峯 鉢盂峯   瓜 ゝ     岩虎井
  水分石 千丈岩   涅槃ゝ
  飛雲亭 玲瓏岩   梅船ゝ

 

 *四月五日、奈須雲岩寺ニ詣で
 仏頂和尚旧庵を尋
  木啄も庵は破らす夏木立       翁
 翁に供せられて、雲岩寺遊ふ。

茂りたる山の入口より清冷たる川ニ遊ひて、

三町斗歩て山門ニ至ル。鉢盂峯、龍雲洞、千丈、

玲瓏ノ岩、五橋、三井、総而かんのうこかさゝる所なし。
物いハで石にゐる間や夏の勤

秋鴉主人の佳景に対す
山も庭にうごきいるゝや夏ざしき

 

浄坊寺図書何がしは、

那須の郡黒羽のみたちをものし預り侍りて、

其私の住ける方もつきづきしういやしからず。

地は山の頂にさゝへて、亭は東南のむかひて立り。

奇峯乱山かたちをあらそひ、

一髪寸碧絵にかきたるやうになん。

水の音鳥の声、松杉のみどりもこまやかに、美景たくみを尽す。

造化の功のおほひなる事、またたのしからすや。

* 東山雲岩寺満藏山 夢想國師開記
山深み昼くるだにもさびしきに
     よる人やある白糸のたき

みそ山 ひたち・下野・みちのくのさかい
ことや あやをりが池 歌有。
無常野 知田川 いつな山 つくは山 

しら川の關やいづことおもふにも、先、秋風の心にうごきて、

苗みどりにむぎあからみて、

粒々にからきめをする賤がしわざもめにちかく、

すべて春秋のあはれ・月雪のながめより、

この時はやゝ卯月のはじめになん侍れば、

百景一ツをだに見ことあたはず。

たゞ声をのみて、黙して筆を捨るのみなりけらし。

田や麦や中にも夏時鳥
 元禄二孟夏七日    芭蕉桃清
 

黒羽光明寺行者堂
夏山や首途を拝む高あした      翁
   同
汗の香に衣ふるはん行者堂

はせをに鶴絵がけるに
靏鳴(サン)や其声に芭蕉やれぬべし  翁
()の子の何を行衛にのぼり船
 高久角左衛門ニ授ル

みちのく一見の桑門、同行二人、

なすの篠原を尋て、猶、殺生石みんと急侍るほどに、

あめ降り出ければ、先、此処にとゞまり候。
落くるやたかくの宿の時鳥      翁
木の間をのぞく短夜の雨       曾良

 元禄二年孟夏

 

  蠶する姿に残る古代哉        曽良

 

奥州岩瀬郡之内須か川相楽伊左衛門ニテ

 

風流の初やおくの田植歌       翁

  覆盆子を祈て我まうけ草      等躬    

水せきて晝寝の石やなをすらん    曽良

   雛にの聲生かす也 翁

    (かじか・鰍)

一葉して月に盆なき川柳       等

  雇うやねふく村そ秋なる      曽良

賤の女か上総念佛に茶を汲て     翁

  世をたのしやとすゞむ萱もの    等

有時は蝉にも夢の入ぬらん      曽良    

  楠の小枝に戀をへたてゝ      翁

恨ては嫁か畑の名尽にくし      等

 霜峰山や白髪おもかけ       曽良

酒盛は軍を逍ゐ闘に来て       翁

  秋をしル身とものよみし僧     等

更ル夜の壁突破る鹿の角       曽良

  鳥のお伽の泣ふせる月       翁

色々の祈りを花にこもりゐて     等

  かなしき骨をつなく糸遊      曽良

山鳥の尾にをくとしやむすぶらん   翁

  芹堀はかり清水つめたき      等

薪引雪車一筋の跡有て        曽良

  をのをの武士の冬寵る宿      翁

筆とらぬ物ゆへ戀の世にあはす    等

  宮にめされしうき名はつかし    曽良

手枕にほそき肱をさし入て      翁

  何やも事のたらぬ七夕       等

住かへる宿の柱の月を見て(よ)   曽良

  薄あからか六條の髪        翁

切樒(しきみ)枝うるさゝに撰残し  等

  太山つくこの聲そ時雨るゝ     曽良

さびしさや湯守も寒くなるまゝに   翁

  殺生石の下はしる水        等

花遠き馬に遊行を導て        曽良

  酒のまよひのさむる春風      翁

六十の後へそ人の正月なれ      等

  蠶飼する屋に小袖かさなる     曽良

 

天 元緑二年卯月廿三日

 

みちのくの名所々々、こゝろにおもひをこめて

先せき屋の跡なつかしきまゝにふる道にかゝり

いまの白河もこへぬ

  早苗にも我色黒き日数哉      翁

岩瀬の郡すか川の駅に至れは乍単齋等躬子を尋ねて

かの陽關を出で故人に逢なるへし

  上 発句前ニ有

 

 同所

 

桑門可伸のぬしは栗の木の下に庵をむすべり。

傳聞、行基菩薩の墓の古西に縁ある木成と、

杖にも柱にも用させ給ふとかや。

隱栖も心有さまに覺て、弥陀の誓もいとたのもし。

隱家やめにたゝぬ花を軒の栗     翁
稀に螢のとまる露艸        栗齋

切くつす山の并の并は有ふれて    等躬
(并の并 井の井?)

畔つたひする石の棚はし       曾良

 

歌仙終略ス。

連衆(等雲・深竿・素蘭以上七人)

 

 須か川の駅東二里はかりに、

 石河の瀧といふあるよし、

行きて見ん事をおもひ催し侍れは、

此の比の雨にみ(水)かさ増りて

川を越すかなはすといゝて止けれは

 さみたれは瀧降りうつむみかさ哉   翁

   (さみたれ=五月雨)

 

案内せんといはれし等雲と

云人のかたへかきてやられし藥師也。

この日や田植の日也と、めなれぬことをふれを

有りてまうけせられけるに、
旅衣早苗に包食乞ん。        ソラ

 

志ら河

 

誰人とやらん、衣冠をたゝしてこの關をこえ玉フと云事、

清輔が袋草紙に見えたり。
上古の風雅、誠にありがたく覺へ侍て、
 卯花をかざしに關のはれぎ哉     曾良

 

須か川の連衆
矢内彌一衞門 素蘭 吉田祐碩 等雲
内藤安衞門、深竿。釋可伸 栗齋。
外 太田庄三郎

旅衣早苗に包食乞ん

□たかの鞁あやめ折すな       翁

夏引の手引の青草くりかけて      等躬

やうを又習けりかつミ草       等躬
市の子どもの着たる細布       ソラ

日面に笠をならぶる涼して       翁

 

芭蕉翁、ミちのくに下らんとして、我蓬戸を音信て、

猶白河のあなたすか川といふ所にとゞまり侍ると聞て

申つかはしける。
  

雨晴て栗の花咲跡見哉         桃雪
   いづれの草に啼おつる蝉       等躬
  夕食喰賤が外面に月出て        翁
   秋來にけりと布たくる也       ソラ

西か東か先早苗にも風の音       翁

我色黑きと句をかく被直候。

白河、何云へ。
  關守の宿をくいなにとをふもの     翁

泉や甚兵へニ遣スの發句       □□
(册尺一枚、前ノ句。)
中將實方の塚の薄も、道より一里ばかり左りの方にといへど、

雨ふり、日も暮に及侍れば、わりなく見過しけるに、

笠嶋といふ所にといづるも、五月雨の折にふれければ、

笠嶋やいづこ五月のぬかり道      翁

 

(册尺二枚、前ノ句。)
しのぶの郡、しのぶ摺の石は、茅の下に埋れ果て、

いまは其わざもなかりければ、

風流のむかしにおとろふる事ほいなくて、

(加衞門加之ニ遣ス。)

五月乙女にしかた望んしのぶ摺      翁

 

大石田、高野平右衞門亭ニテ

五月雨を集て凉し最上川        翁
岸にほたるつなぐ舟杭        一榮

爪畠いざよふ空に影待て        ソラ
里をむかひに桑の細道        川水

うしの子に心慰む夕間暮        一榮
水雲重しふところの吟        翁

佗笠を枕にたてゝ山颪         川水
松むすひをく國の境め        ソラ

永樂の舊き寺領を戴て         翁
夢とあはする大鷹の紙        一榮

たき物の名を曉とかこちたる      ソラ
爪紅うつる双六の石         川水

卷揚る簾にちごの這入て        一榮
煩ふ人に告る秋風          翁

水かはる井手の月こそ哀なれ      川水
碪打とて撰ミ出さる         ソラ

花の後花を織する花莚         一榮
ねはんいとなむ山陰の塔       川水

穢多村はうき世の外の春富て      翁
刀狩する甲斐の一亂         ソラ

むくら垣人も通らぬ關所        川水
もの書く度に削る松の木か      一榮

星祭ル髪は白毛のかるゝ迄       ソラ
集に遊女の名をとむる月       翁

鹿苗にもらふもおかし塗足駄      一榮
柴賣に出て家路忘るゝ        川水

ねむた咲木陰を晝のかけろいに     翁
たえたえならす万日のかね      ソラ

古里の友かと跡をふりかへし      川水
ことは論する船の乘合        一榮

雪みぞれ師走の市の名殘とて      ソラ
煤掃の日を草庵の客         翁

無人をふるき懐紙にかぞへられ     一榮
やまめからすもまよふ入逢      川水

平包明日も越べき峯の花        翁
山田の種を祝ふ村雨         ソラ

 

 立石の道みて

まゆはきを俤にして紅花        翁

  

立石寺

 山寺や石にしミつく蝉の聲       翁

新庄

御尋ねに我宿せはし破れ蚊や      風流

  はしめてかほる風の薫物       芭蕉

菊作り鍬に薄を折添て         孤松

  霧立かへす虹のもとすえ       ソラ

そゝろなる月に二里隔てけり      柳風

  馬市くれて駒むかへせん       筆

すゝけたる父か弓矢をとり傳      翁

  筆こゝろミて判を定る        流

 梅かさす三寸がやさしき唐瓶子     良

  簾を揚てとをすつはくら       如

 三夜サ見る夢に古郷のおもはれし    木端

  浪の昔聞島の墓はら         風

 雪ふらね松はをのれとふとりけり    柳

  荻踏しける猪のつま         翁

 行盡し月を燈の小社にて        松

  疵洗うはんと露そゝくなり      端

 散花の今は衣を着せ給へ        翁

  陽炎消る庭前の石          八

楽しミと茶をひかせたる春水      流

果なき蝶に長きさかやき       端

袖香煙は糸に立添て         風

  牡丹の雫風ほのか也         柳

老僧のいて小盃初んと         翁

  武士乱レ入東西の門         良

白鹿も鳴なる奥の原          端

  羽織に包む茸狩の月         流

秋更て捨子にかさん菅の笠       柳

  うたひすませるミのゝ谷くミ     翁

乗放牛を尋る夕間夕暮れ        風

  出城の裾に見ゆるかがり火      端

奉る供御の肴も疎にて         翁

  よこれて寒き禰宜の白張       流

ほりほりし石のかろとの崩たり     風

  知らさる山に雨のつれづれ      柳    

咲きかゝ花を左に袖敷きて       端

  鶯かたり胡蝶まふ宿         良

 

風流亭

水の奥氷室尋ねる柳裁         翁

  ひりかほかゝる橋のふせ芝      風流

風渡る的の變矢に鳩鳴て        ソラ

 

盛信亭

風の香を南に逼し最上川        翁

   小寒の軒を洗ふ夕立        息 柳風

物もなく麓は露に埋て         木端

 雲の峯幾つ崩レて月の山

 涼風やほの三ケ月の羽黒山

 語られぬ湯殿にぬらす袂哉

 月山や鍛冶か跡とふ雪清水       曽良

錢踏て世を忘れけり湯殿道

    三日月や雲にしらけし零峰






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最終更新日  2021年04月03日 18時39分43秒
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