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2021年05月15日
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稲妻雷五郎 【風雅を解し「相撲訓」を遺した幕末の名横綱】

 

高橋紀比古(のりひこ)氏著

  『別冊歴史読本』「伝記シリーズ」 昭和53年 新人物往来社 

一部加筆 山梨歴史文学館

 

 

寛政七年(一七九五)、茨城県稲敷郡東村に生まれ、名を才助という。

 文政三年(一八二〇)、江戸へ出て佐渡ケ嶽沢右衛門に弟子入りし、翌四年十月、師匠が勧進元をつとめる回向院場所に、「巻ノ商才助」の四股名で幕下附出しとなり初土俵を踏む。

六年二月、出雲松江藩に抱えられて牧ノ嶋と改め、七年正月には、佐渡ケ嶽門下の雲州抱えであった稲妻咲右衛門の名をもらい稲妻雷五郎。同年十月の回向院場所で入幕を果たした。

 出世も順調で小結・関脇と昇り、「稲妻はもう雷電に或る下地」と、同じ雲州抱えであった雷電為右衛門に並ぶほどの逸材と川柳によまれた。

文政十年十一月から翌年三月場所を連続休場するが、これは帰国する主君に屁従したためといい、江戸へ戻る途中、大坂難波新地の勧進相撲では大関を張り、十年七月、京都五条家から横綱を免許されている。

この間、彼の好敵手阿武松縁之勁(おうのまつみどりのすけ 対戦成績四勝五敗一預り五引分け)

は、吉田司家から横綱を伝授された。

 十一年十月の回内院場所で西方大関に昇進してから三場所後、文政十二年九月、二十代追風吉田善左衛門から横綱(七代)を免許され(一説に文政十三年九月ともいう)、翌年三月、江戸城吹上での十一代将軍家斉上覧相撲に臨む。

このとき、阿武松に「待った」をされ、仕切り直したのち捲落しで敗れた。寛政三年(一七九一)の上覧相撲では、谷風に待ったをした小野川が「気負け」となっている。家斉もそれを覚えており、終了後「なぜ阿武松の負けにならぬ」と問い、恐縮する行司一同が不調法書を差し出したと『泰平年表』は記す。

 大関(横綱)の座にあり雲州力士を束ねる雷五郎は、風雅を解し

「腕押しにならでや涼し雲の峰」

「雲を抜く力みせけり時鳥」

などの句をよみ、また、求道の人でもあった。彼の自筆と伝わる「相撲訓」なる一幅が遣り、そこには、

「それ相撲は正直を宗とし、智仁勇の三を兼ね、酒色突の悪き径(みち)に遊ばず、行中は朝夕坐臥とも心にゆるみなく精神を励まし、虚偽の心をいましむべし。なほ、勝負の懸引に臨みては、相手に容赦の心なく、悔らずおそれず、気を丹田におさめ、少しも他の謀を思はず、押手、さす手、ぬき手の早き業を胸中に知り、つく息、引く息に随ひ、其偽実を察し、勝を決するもの也。

青柳の風に倒れぬ力かな

稲妻雷五郎源極重(花押)」とある。

また、京都で五条家から横綱を許されたとき、偉丈夫ぶりが仁孝天皇のお耳に達して御所に召され、四斗入り酒楢を賜わったところ、両手に一樽ずつ提げて退き、並いる殿上人を仰天させたという逸話もある。

 天保十一年(一八四〇)二月、実力の衰えを知って引退する。最盛期の身長五尺九寸(一七八・

ハセンチ)体重三十八貫(一四二・五キロ)という。

江戸本場所における入幕後の成績は、

一三〇勝一三敗・三預り・一四引分け・一無勝負。優勝回数一〇。これは雷電以後の力士が成しえなかった戦績で、幕末随一の強豪といえよう。

 引退後は抱え主である松江松平家の国許で暮らしたが、明治維新をむかえると東京に戻り、明治十年(一八七七)三月に没す。

辞世は

「稲妻の去り行く空や秋の風」

と伝わり、時に八十三歳。歴代横綱のうちで最も長命である。

墓所は東京都渋谷区神宮前、妙円寺。

 






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最終更新日  2021年05月15日 05時40分55秒
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