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2021年05月19日
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フィクションとノンフィクション 湊屋くどき 市川康氏著

 

韮崎『中央線』昭和47年

一部加筆 白州ふるさと文庫

 

♪ ところ甲州荊沢宿よ

    音にきこえし湊屋さんの

    二人娘のあるその中を

    今年しやよい年豊年どしよ

    身延参詣やるではないか

    言ふと娘は嬉しく思い

    向うどなりの仕立屋さんに

    さアサ仕度をおたのみ申す

    姉の仕度は木綿の小袖

    妹の仕度はチリメンづくし

    帯は当世筑前博多

    三重にまわして矢の宇にしめて

    それじゃととさんいってまいります。

    さアさかかさんいってまいります

    早く帰れと両親さんが

はいというたは妹のお菊

鳥の鳴く時家ぶんだして

お日のさすときや鰍沢の宿よ

二軒茶屋にてちょいと腰かけて

舟でいこうか陸地でいこうか

岡じいやいやお舟でいこう

舟の値段はいくらときけば

おまけ申して百二十五文

さアさ行くからお頼み申す

舟は新し船頭さんは若し

    一里半ばかそろそろ行って

ここはどこよと船頭さんに聞けば

ここはあぶない天神ケ滝よ

止めて下さい、のう船頭さん

百や二百じゃ止められません

言ふと間もなくお舟がわれて

姉は流れる妹は沈む

どうせ死ぬなら二人は共よ

南無妙法蓮華経と手を合わせ

川の端へとお石塔たてて

帯をとかして塔婆とあげて

赤いかんざし線香とあげる

石を拾ってお丸とあげて

砂利をつかんでお米とあげる

男通らば白ぶきあげる

女通らば花ぶきあげる

ちょいと百ついてこうりの数よ

 

時は文政五年(1822)十月十日の事である。

この交通事故第一号もいうべき大事件は、当時の人々の心を強くゆさぶったことであろう。さればこそ避難現場には碑を建てて、後々迄通行

の旅人は香を供えて其霊を慰さめた様子が、この唄にも良く表現されている。

 湊屋というのは、市川家の古い分家の一つ、わで宿(現在上町)に居住して代々中々の事業家、この時代はお台屋だったと伝える。好事魔多しとか、家業は繁盛したが子宝がないそこで女児を万人もらった、世にいう「よせいじっ子」である。すると古来言う通りすぐ子が出来た。だがこれ又女児であった。

 やがて二人の娘は美しく生長したが、悲劇はここで発生したのだ。

 ここに記したのは手鞠唄だが、これとは別に「くどき」唄もあって、この方では、この遭難の部分がもう少し祥細に説明されている、即ち、継子の姉娘には木綿の着物、妹娘には絹の着物、その結果姉は流失し妹は救助されたとなっている、所が、姉の水死を知った妹は「何で我一人生きて帰れよう」と、逆巻く早瀬に飛び入って、姉の後を追った、となっている。

 しかしこれは話を面白く聞かせるための脚色であろう。増水時の富士川の水流は、音高く天神ケ淵に打ち付けて居たであろうから、ここで破船しては、如何に水に慣れた船頭でも、我身一つが手に余り、客の救助までは出来兼ねたと見るべきだろう。

 兎もあれ一時に可愛いい娘を二人共失なった両親の嘆きは、如何んなだったろう。今この二人の比翼塚が、甲西町制沢、法泉寺にあり

  …精進妙行…

  …珠献妙受…

文政五壬午年 十月十日 市川輿兵衛娘

 

とあるのは、この話が実話に基付いて作られたものであることを説明している。

 やがてこれは小冊子となって、当時の人々の目から耳へと伝わり「手鞠唄」として、南は(かわうち)地方はもとより、(なかごおり・中郡)から(きたこま・北巨摩)方面迄も唄われたという。

この湊屋というのは、昔からなかなか盛大に営業し、特に当主佐兵衛氏の祖母の時代には、製糸業を営み、当時は一世を風葬したほどであったといわれている。現在も呉服、服地、洋品を商い、甲西町屈指の商売として重きをなしている

 この稿は我家の古文書に基づき、色々と書いて見たかったが、今その古文書が、梨大某先生の手許で解読研究中なので、止を得ず又日を改めて書くことにしたい。(未完)






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最終更新日  2021年05月19日 04時52分19秒
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