カテゴリ:山口素堂・松尾芭蕉資料室
芭蕉文集 蓑虫跋 草の戸さしこめて物わびしき折しも、たまくみの虫の一句をいふ。我友素翁(山口素堂)はたはだあはれがりて詩を題し文字をつらぬ。其詩や、にしきをぬひものにし、其文に玉をまろばすがごとし。つらつら見れば喧騒のたくみあるに似たり。また黄奇蘇新あり。はじめに虞舜曾参の孝をいへるは、人にをしへをとれとや。其無能を感する事は、ふたゝび南華の心を見よとや。終に玉むしのたはびれは、色々いさめんとたらし。翁(素堂)にあらずば誰か此虫の心をしらん。靜に見れば物みな自得すといへり。此人によりて此句をしる。むかしより草々もてあそぶ人、おほくは花にふけりて實をそこなひ、實をこのみて風流をわする。此文や、はた其花を愛すべし、實なをくらひつべし。 爰に何某朝湖を云あり。此事を傳聞てこれを書く、まことに丹青淡くして情こまやかなり。心をとどむれは虫動くがごとく、黄葉落るかとうたがふ。耳をたれてこれをきけば、其むし聲をなして。秋の風そよそよとさぶし。尚閑窓に閑を得て、両氏の幸いにあづかること、蓑虫のめいぼくあるに似たり。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年05月27日 06時49分04秒
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