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山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

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2021年05月27日
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カテゴリ:山口素堂資料室
弌楼賦 いちろうふ
【 書誌 】
書型 半紙本一冊。縦二三・1cm×横一五・八cm。
題篆 左肩。無辺。「戈撲賦 □」(隷書)。
序  貞享弐乙丑夏垂虹堂風瀑漫書 
跋  山逸人(素堂)書其後 
備考 序および最初の百韻までは風瀑の版下で白字刷り、以下は其角の版下である。
  
  解 題
 
垂虹堂風瀑編。貞享二年(1685)成立。
編者が江戸に下向中の信徳を迎えた折の記念集で、
百韻・五十韻・歌仙の連句各一巻と、
諸家の四季発句百四十余を収めたもの。
連句の連衆は信徳・風爆・其角・卜尺・文鱗・李下・仙化・一晶ら。
又発句の作者は芭蕉・秋風・杉風・湖春・風雪・尚白・蚊足・千春・濁子
・素堂・糜塒・嵐蘭・千那・順也・自悦・春澄・荊口・北鮭らである。
本書は、「虚栗 みなしぐり」と「続虚栗」との間に位置し、漢詩文調を残しながらも、新風胎
 動期の、江戸蕉門を中心とする人々の作品を収めて興味深いものがある。
編者風瀑は、生没年未詳。伊勢度会の人で、一時江戸住。通称七郎太夫。師職家、屋号は松葉屋。
 芳賀一晶の門下で、信徳・芭蕉、・素堂らと親交があった。
 貞享三年(1686)には江戸から伊勢に帰郷、以後家業に専心し、俳諧から遠ざかってしまったらしい。
帰郷の際の紀行「丙寅紀行」には、自身が一座した芭蕉庵での連句や、芭蕉の銭別吟を収めている。なお芭蕉の「野ざらし紀行」の頃には伊勢へ帰省していたらしく、文中に彼の名が見える。
  〈参考〉荻野清「「一楼賦」解説」(「連歌と俳諧」創刊号)。
 一楼賦序
大塊風雲を仮して春秋四窓にみてり
雲は恵運か毫を惜しみ有家の夕山さくら詠めせし
間に咲ぬ惣て五月の鯵(あじ)文月の瓜
此楼の勝概静にして吟ふ是に
先達もの二子芭蕉江頭は原憲か糂(こながき)を残せし
迹は素堂か蓮にして濂渓に涼む貧を愁す
礼を慕ふ趣参差にして源清して下にただす上を願はす
共に風雅に乗して江東の雲に眠る謂北の樹に
休而嘯(うそぶく)客あり
百里の駅を馳て稀に此地に到る
吾楼上に招漢人の夜の鰹を一壺の醋に寄て調せる事
百句夏の夜の短を惜めは菖蒲幟の遠山に見ゆるもあり
五十句哥僊も終に相続てなれり
歯菜に餅負ふ牛は我翁山家に年を越て便に送しを
粧の冠として聞人見る中の雲華を摘み此楼の後に翫ひ
眼前の楽事とす
蚊や蚤やこれをしらす蚊は翼をはけめとも
涼風につら打蚤は塵裡に躍る事二寸云
爾于時貞享二乙丑夏垂虹堂風瀑序漫書
 ㊞
孟夏二十一日興行
夜の市我か漢(から)人も勝魚(かつを)船  信徳
   晨明(アリアケ)義明寒くて篝蚊(カカリカ)を焼  風瀑
辛苦粒(シンクリュウ)麦より稲に移る覧      其角
   世の五百齢(イヲトシ)を松に宅(イエキス)    卜尺
山彦や餓れはさめて眠(ネムル)也        琴藏
   襁(ムツキ)椎の中の天地の雨         虚洞
九重の素襖上下誰か民そ           枳風
ココノエ スアウカミシモ タ タミ
黄昏かほにさくら盗(ヌスミ)し        文隣
雉を射て味方に酒のなかるらむ        李下
きさらきなから廿日雪降          仙化
山は帆に鹿島を拝む朝朗           
 禅尼の宮の麻の御衣            一晶
道芝に一もと瓜の花ゆるせ          執筆
   玉しく砌紫の霜              徳
処女長女おもひに挙るつくも髪        瀑
   李白か酔をしらぬ独寝           角
夜沈て階下に水を聞寺の月          洞
勝尾の高根風秋の声            藏
断語二十年露時雨けり            鱗
   名利を後の宗因に待            風
華もよひ伏見あかしの迎船          尺
   漁村あらしの晩鐘の春           下
塔廟峰薄く霙を伝ふ呼子鳥          化
   一飧盈て唐茶芳し
鼓子華の昼は盲儒の庭となり         晶
   家はくつはのなに濁水           尺
肥の国や平戸古江の色深き          徳
   憂関有七の道守
ウキトサシアルナヽ
蟻の世を西行宗祇滋賀の介          其
 居なから歳をくらふ金持          洞
  鳴神と鯛呼声に驚て             風
   熱海の寝さめ寅三にあり
松風を小禅に澄すらむ            下
    チイサキゼン スマ
   婦にこゝろしらるゝ夫           晶
   オホナ       オトコ
俟暮を築地の月に消る妖           藏
  マツ         カゲ
踊は壬生の櫛笥成跡            化
     ミブ  クシケ
夢かとよ聖霊捨る萩枯て           齊
   楞伽の憎の白く窶し            徳
   リョウカ     ヤツレ
袖のみと片肢水を結ぶ覧           瀑
      ウチナシ
岩鋪牀に犬の妃となり           其角
   イワシクトコ   ヒ
此伏義俯して物思ふ始哉           卜尺
  コレフツキフ
   惣て夏の夜秋の夕暮            風瀑
酒の後湯漬を好む人しあり          洞
 みしかく游ふ長楽の寺           下
川かせや神輿洗の月なきに          鱗       
 羽織持する供まとひけり          藏
狂歌よみこゝろの空に旅居して        化
 女乞食をなくさめつへき          斎
華鳥よ絵馬に似たる顔なからむ        晶
 里はかさりの裏(ウチ)の節分        洞
  先霞む端山念仏の仄(ホノカ)なる        徳
   大津の牛の車まとろみ           尺  
月鏡光を茄子に荷ふ夜を寵て         角
  スズムシ
     御燈葉をすかす天王の森          洞
妻憎して吟ふかいさよふか          風
  ツマニクミ   サマヨ
     訊も右流左苦珠数に恋打          化
   トフ  ウルサクジュズ    コヒ
まほろしを揚屋に侯(マチ)て忘れ得ス      瀑
 霜の雪吹(フブキ)を立凍たる        鱗
舟薪を十と云つこ三箇七箇          藏
 桑名の城の蘆の曙(アケボノ)         晶
紙幟今日の五月に遇(アヘ)りけり       下
 愁へす老の蜀魂(ホトトキス)吾         徳
なき数を妹背の岡に墓守て          斎
 売菊小きく恋萎(シオレ)菊          風
芝垜(シバアヅキ)のり物やとす月の程      晶
 それかと父の面替る秋           藏
山風や木曽の初雪俵着て           化
落葉に深き小屋の串柿           下
屐(クツ)有て火定(クワチョウ)のあとを残しける  鱗
   賊に達する弟子九千人           角
祢宜事を妾たまへといのりてし        洞
  つく波巫山(フサン)の花の一峰        斎
水碧白燕(ミントリハクエン)落て日に黄也      徳
 雨慈(メクマ)しく風仁を吹          瀑
袷より帷子ひとにかなふ覧          風
 水無月すきぬ浅熊の堂           晶
遠江こゝろの灘の浮雲や           尺
 かくてもあられけり烟なき家        鱗
霊契る尺骸(カハネゝゝ)に添寝して       角
 征人の涙こひに曇る夜か          化
小歌聞隣を雒(ミヤコ)あるやうに        藏
 山は白雪煤掃(ススハキ)の里         尺
花つはき柴解(シハトク)鎌に顕(アラワレ)て    晶
 筏に手樽春とはむ侯(マテ)         風
恵心院小雨に霞む夕日影           斎
   衣桁(イコウ)に鳥の翼休(ヤスム)る      徳
朝ヲ野に暫時(シバシ)栬(モミジ)の狩     瀑      
 廃牡は月のなを崇けむ           角
湯の上の岩瀧薄く霧落て           下
   牝牡相哭凩の声                          洞
      ヒンホアヒサケフクコガラシ
日を負て傀儡(カイライ)笠を斜(ナナヘ)ゆく    鱗
 膾(ナマス)をけつる姥やさひたる       藏
吾菩薩(アカホサ)の観音夢を給らむ       徳
 鼓舞三代の家を亢(タカブ)る         晶
久方のあめの風土記を部(ワカチ)ける      角
   山は蓍(メトギ)の茂みふりつゝ       化
貞享龍集丑分ツ十二支ヲ於連衆ニ       尺
   誠にめてだきたはけならまし        斎
土佐か絵の筆狂しき華錦           下
   近衛の柳風の偏(カタヨ)り          瀑
信徳 九  
琴蔵 八
風爆 八  
虚洞 八
其角 九  
文鱗 九
ト尺 八  
枳風 八
李下 八
仙化 八
壷斎 八
一晶 九
みしか夜は子に添ふ母の昼寝かな      一晶
なるかみとゝる夏里の月          信徳
  たまり水みとりの野馬影踏て        風瀑
  つゝしか株に花そ残れる          楓興
  雪尽て甕(カメ)に酒を埋むらん       渋篠
  鰤(ブリ)相みたり年のつゐたち       舟魚
  ときはなる下のおのこに袴きせて      一扇
  ことはのまくら画をたくみぬる       梅樟
  龍の鶴とどき雄島の月を啼         筆
  秋の遊女のこゝろなりけり         晶
  すけ刀うらみの霧よはれねたゝ       徳
  あさめしいまた浮くものそら        瀑
  西の京かめの御山の本のまなる       興
  からかさひろふ風の下いほ         篠
  まつしきに心の直(ナヲ)きふうふあり    魚
  蕗に荷葉に芋のはもつゆ          扇
  すそたかくしりにみせたる宮城野や     嶂
  あけほの狐人わらひ去           徳
  あらしもる厨(クリ)の竃のかすかなり    晶
  杉苗つゝく奥の正月            興
  うつほ木に花先きさす戸塚山        瀑
蹄に馴て雉ゆたかなる           魚
女房のゐざり車を引すてし         篠
七日の御法愛をいさむる          嶂
寝くるしき獄屋の月のくまなきに      扇
きぬたのこたまたましゐをうつ       晶
けふ暮る柚味噌に老を楽て         徳
初雪ふるとひとり茶をひく         瀑
お姫様忍ふあまりの身をたへに       興
やまひに屁(ヘコキ)うき名もらすな      篠
析からと狂哥をおもひ出にける       魚
しはらく市の塵によろはふ         扇
似せめべら国の心をうかゝひて       嶂
美男桜の花にあらそひ           徳
きさらきや頓死のきぬに恨あり       晶
楽屋は春のなかは日たけて         興  
里五町草あたゝかに道ほそき        瀑
神輿のかしらみえてかくるゝ        魚
我婿のむれつゝ中に色白し         篠
夷の内裏恋しありけり           嶂
紬織るみそかの市の夜をかそへ       扇
清寿か庵の柿かちにゆく          晶
秋よさてしなひし乳をひねるらん      徳
松虫ころす鼬(イタチ)かなしく        瀑
たれをやく煙そうすきあさな月       興
藁屋とりふき紺屋一間           篠
いつまてや三線はつる哀なり        魚
いとゝ師走のさおしかの声         扇
米薪花にはとはれかほならん        嶂
さかりをくはる挑のやまふき        徳
菖蒲幟遠山さくら八十寺         風瀑
南を得たる風の松はら           其角
時鳥かつく狭菰の音にぬれて        信徳
あけほの月夜鰯もらひに          瀑
三里酒なし薄よりもる火の光り       角
底にきぬたを渡る桟            徳
影法師僧か誠の友なれや          瀑
あはれ世にみる母父の杉          角
しらねとも忝さにおかむかな        徳
片里ありき時雨する比           瀑
煤(ススケ)から我瓢箪に似たるなし      角
よそほひにくし誰室の尼          徳
忘草昼の蚊帳をたてこめて         瀑
文月八日月もおもしろからす        角
垣清水秋の悲しく昏にけり         徳
茸やくあとの木葉しら露          瀑
花さかは市の仮屋に念仏せむ        角
道陸神にゆふかけし春           徳
初夢の朝夢とく祖父ヲ待           瀑
ますらか腰にはさむ正宗          角
あしひきの湯の寺に世を忍居ル       徳
松虫は嵯峨を飼うつらは小野″ヲ聞     瀑
牛くらべ萩かる業(ワザ)を嬉しくて     角
月たそかれば密殿(マトノ)あひみん      徳
次郎君姿よりたつ名なりけり        瀑
信濃源氏の一と拍(ハヤ)せる        角
咲つほむ花の初枝に鴨付て         徳
碁の師あらんと梅かおく山         瀑
雲水の直(タダ)に涅槃の場ヲ見る      角
星すむ窓に飢をやつれず          徳
袖迷ふ涙に夜の琴を拭(フク)        瀑
夫ト年へて高麗(コマ)に闘ひ        角
とり植て薗の甘棠(アマナシ)風かれす     徳
秋のこてふの日に消る数          瀑
月露を心問身ニ身答テ           角
句に狂はしく菊を笑ヘル          徳
  春
 山家に年を越て
誰カ婿そ歯菜に餅およ牛の年        芭蕉
元日の炭売十の指黒し           其角
扇売ル東雲嬉し三保の市          一晶
新柳たゝゆるく思ひ過しの弥生哉      秋風
夜より春起よとめ鳥寝よとの鐘       楓風
   人 日
此情あって志朶に七日の風うとし           コ斉
若菜なし鷺ニツ三ツ古柳          文鱗
樽あるに菜摘ははえぬ若衆哉        風瀑
紙子着て梅手折ぬる人あり         杉風
夜や闇時雨に染ぬ梅の花          仙化
梅たえて日永し桜いま三日         湖春
白鷺の絣夢見る柳かな         大津 青鴉
  旅 行
富士に傍て二月七日八日かな        信徳
梅か香の名たてや夜ルの蘇うり       枳風
簾に人て美人に馴る燕かな         嵐雪         
深川は伏見に似たり挑の花         一晶
梨花一枝傾城の名に汚レたり     大津 尚白
蝶の雄にたかれて散るか梨子一重      風瀑
睡ル蝶夜ル夜ル何をする事そ        其角 
菜の花の黄昏白し蝶世界          渋篠
   病 後
灰猫と美男くらへの弥生かな        蚊足
五日経ぬあすは戸無漏の鮎汲ん       去来
山さくら鏡こひしき憎あらん        其角
   心―情十-分無-シ九分
容貌は日ことに桜ヨリ滅れり        千春
花さくら美人生れぬ先にあり        琴風
桜にはあかて都女のうしろ帯        蚊足
深山辺の桜には来ぬ乞食かな        風瀑
鳩のうき巣舎奇虫のやどり山桜       濁子
  おそ桜蟻の飯曳深山かな          信徳
  白魚にちり合たる桜かな          虚洞
  月雪よ桜よちれはこそ干魨         季下
余花ありとも楠死して太平記    素堂
 
花見して狐に小冊ならひけり        卜尺
  世をうたふ我首花の大器タリ        文桃
  花をみて伯夷は餅を思ひけり        荊口
応-向-世-間は花を求る心もなし     梅嶂
   蕉桃青たひ(旅)に有をおもふ
いつか花に茶の羽織檜本笠みん   素堂
鐘六ツなりて花の夜くらし僧ひとり     風瀑
山吹は女の後のさかりかな         糜塒
(甲斐谷村藩 秋元但馬守 国家老 高山傳右衛門) 
連翹々梅桃さくらなを捨じ         虚洞
董艸人に喰はれぬ詠かな          一晶
葉迷惑ほめられそしられて凋ム       嵐蘭
牛と寝て董に妹を思ふかな         風瀑
山藤の花はみしかき浮世かな       大津 千那
本蓮華にふき所を見付たり         同
   田 家
むらこふしおくある花の葛屋哉      大津 千那
淀の若菰牛の目篭妹かなし         友静
七夕の宿をみて来ん□巾幟         順成
   大津にて
曙の乗合やさし春の声           如泉
暖にたゝのころの詠かな          秋風
  夏
音を守ル夜寺に鬼なし時鳥         其角
啼かへれ其郭公雨の塔           秋風
郭公われを我ヵ鳴はとゝきす        コ齊
夜着の香や浴ぬうちの時鳥         卜千
子規雨夜は江戸に二十年          虚洞
仏より乞食にちかし夏櫁(ゲバナ)売り    長吁
冠者めして吹矢にとめん蛍かな       風瀑
高瀬人ほたる引らん柳原          奚疑
蛍消て白犬の尾そよこれける        此水
しのゝめにほたるの一ツ行白し       杉風
男公女舟さすかきつはた(杜若)      信徳
さみたれは比の字みゆる日数裁       文鱗
五月夜ル蛙は雨に茶のみけり        渋篌
  
さ月のつこもりに
    よこ雲の涼しき程
吉原の富士業平にみせはやな        風瀑
   訪隠者不逢
芭蕉秋ならは我名を書ん青葉哉       仙化
    餞風瀑 
竹婦人蛇となる程の名残かな        梅嶂
    東の夜
       日の岡のあけほの
  あかつきを牛さへすゝみ車かな       其角
  人の子をほめて端かる涼ミかな       李下  
  さまざまの男こもれるすゝみ哉       自悦
  嵐や庭の涼みこたへん修行寺                苦桃
  美男ひとり女は三人うらすゝみ       枳風
  涼しさを指ス河原柳かな          風瀑
  石仏なくてひあらん清水かな        一晶
  蝙蝠の音を問フ夜の清水哉         琴藏
  さらしなに夜鰹の夜をいかならん      楓興
  ゆふたちの晴は朽木の燕かな        コ齊
  鳰(にお)の海ちいさき蓮の浮葉かな    風瀑
吾荷葉梅に鳥のやとり哉      素堂
  
採得たし蓮の翡翠花なから         曉雲
   訪貧家
糠味噌に草のみおのか茂り哉        風瀑
夏陰や心の外に松五本           一晶
楊梅や浮世は咲す花さくら         コ齊
男浴スルタ皃の家の陰くらし        虚洞
蚊遣り木に好もしからぬ龜哉        風瀑 
雲の岑泊船苫に雪もなし          藤匂(ママ)子
  秋
   家は五条にありて
躍見る麻呂やおかしきあたまつき      北村季吟
明星よ暁おとり猶あらむ          風瀑
あねさまに小町おとりを手向ケリ      春澄
家にありて廬山の蓮腥(ナマグサ)し      一晶
鯖の手て蓮をいろふ事なかれ        自悦
送火の後啼餲餌(カツエ)鳥かな        仙化
揚灯寵乳のみてみしを泪かな        梅嶂
次信か矢島楠か湊川蕣(ムクゲ)        嵐蘭
忙然とさめ蚊屋蕣の繍せり         秋風
  応-向-世-間は花を求る心もなし     梅嶂
   アシタタヌヨ
  
蕉桃青たひに有をおもふ
いつか花に茶の羽織檜木笠みん    素堂
 
鐘六ツなりて花の夜くらし僧ひとり     風瀑
●山吹は女の後のさかりかな         塒糜
  連翿々々梅桃さくらなを捨じ        虚洞
  菫艸(スミレソウ)人に喰はれぬ詠かな      一晶
  菫迷惑ほめられそしられて凋ム       嵐蘭
  牛と寝て菫に妹を思ふかな         風瀑
  山藤の花はみしかき浮世かな      大津千那
  木蓮華にふき所を見付たり          同
   田 家
 
むらこふしおくある花の葛屋哉     大津千那
  淀の若菰牛の口篭妹かなし         友静
  七夕の宿をみて来ん□巾幟         順也
  大津にて
 
曙の乗合やさし春の声           如泉
暖にたゝこのこみの詠かな         秋風
  夏
音を守ル夜寺に鬼なし時鳥         其角
啼かへれ其郭公雨の塔           秋風
郭公われを我カ鳴ほとゝきす        コ齊
夜着の香や浴ぬうちの時鳥         卜千
子規雨夜は江戸に二十年          虚洞
仏より乞食にちかし夏櫁(ゲバナ)売り     長吁
冠者めして吹矢にとめん蛍かな       風瀑
高瀬人ほたる引らん柳原          奚疑
蛍消て白犬の尾そよこれける        此水
しのゝめにほたるの一ツ行白し       杉風
男(キミ)公女舟さすかきつはた(杜若)   信徳
さみたれは比の宇みゆる日数哉       文鱗
五月夜ル蛙は雨に茶のみけり        渋篌
    さ月のつこもりに
      よこ雲の涼しき程
吉原の富士業平にみせはやな        風瀑
    訪隠者不逢
蚊屋のうちより又文月の闇もよし      枳風
  宗椿かむかし紹巴の
      おもひ傷めることなと
蕣(ムクゲ)に二十部のこる源氏か      文鱗
秋の色よ哀蕣の一分程           虚洞
漁哥聞ん尾花か波の沖の原         渋篌
つま星ヨあはれ一癖ある女         其角
芭蕉葉に箴(ハリ)さす女心哉         晩暁
  〔箴(ハリ)=いましめる〕
鶉(ウズラ)務には住ツて野中の餅屋哉    楓興   
白むく袖ぬれてはせつる女アリ吾妻哉    杉風
斗酒二百月見る世には生れけり       李下
名月をみぬ世の愚癡に珠数かさん      千春
旅寝せは月見蛤小松はら          一晶
名月は過ぬ二月の船出せよ         風瀑
   旅 思
いはぬ事三ツ心に名ありけふの月      其角
草の戸の三線青塚は月も白からん      山店
紅葉子よけふは鰹に火あてせん       舟魚
花すゝきおのかつらうつ時雨かな      琴風
野は秋に牛の眠れる姿さへ         緑系子
紅に夜ル蓼をつむ薗生哉          信徳
   天 竜
馬をのせて秋霧うすし渡シ舟        風瀑
秋の夜は啼夢はかり寝覚哉     千長老 幻吁
酒旗(サケバヤシ)秋のこゝろの箒哉      退省       
破れ葉や葛はふ秋の蝉一重         風市
もとかしく吾つらくはす秋の昏       嵐雪
  
木葉ふり鶏頭包む朝かな          信徳
   箱根こへして
篠を焼て女は痩ぬ時雨哉          風瀑
   蕉庵に蓑をかりて
一夜漏ル時雨に骨を絞ル哉         一晶
さらてたに時雨法師のはだし哉       虚洞
こからしや春こかす麓寺          琴風 
凩に蝉のからたく野里哉          楓興
木葉ちる響にゆかむ鐘楼哉         春澄
旧 宅
麻布のやぬしを木枯て松ひとり       北鯤
藤の実の松に落葉を泣夜哉         荊口
玄賓を世にみる様か干菜売         其角
梅めつらし童子硯を灸(ヤイト)の日      奚疑
水仙のとのゐ怪し被を射とめけり      仙化
水仙よ花は美人の歯を痛歎         枳風
水仙よ吉原の女姓とはん          文鱗
士ト賊ト斧に懺悔の霜夜哉         風瀑
 
 懐旧里
兄寒心弟は寝酒呑つへし          梅嶂         
氷は汗し水はかなしむ夜の声        糜塒
萍に何を喰フやら池の鴨          嵐雪
白魚はきのふも白しあすか川        山川
物思ふ鷺の魂かとそ見る白魚        破笠
初雪は女の足の跡かなし          風瀑
雪の江や白鷺夜ルの首重し         文桃
雪の山かはつた脚もなかりけり       去来
梅わつか炭竃に火を消さぬ程        渋篌
煤払て寝た夜は女房めつらしや       其角
宗鑑か身をつむとしの痩木哉        李下
年尽ぬ古き髑髏の賀をとはん        文鱗
年あれや晦に茶の湯する心         風瀑
身の業のおかし晦の節季候は        仙化
年の是非晦の灯吹けさん          一晶
影法師僧か誠の友なれや
垂虹堂風瀑英子与予有交如之孚深耽風雅以達其道心
腸蘊錦一言敷繍此茲乙丑首夏待客於桜上終日相会倶
賦三篇美罄澄心善出塵慮起雲疑霞函春秋於筆端端□(合欠)野
□(賁欠)山籠天地於尺素藻彬々殆可謂曲尽其妙而又撰
衆子満嚢之佳趣以付其後名曰一楼賦鳴乎果致茲楼之勝
概則恐狭泰山跨四海以逍遥乎無窮之外者与
    山逸人書後其後 (素堂)





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最終更新日  2021年05月27日 07時19分58秒
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