カテゴリ:山口素堂資料室
『三画一軸の跋』 山口素堂 55才 元禄九年(1696)
我住むかつしかの同じ郷人琴属、 家に立圃が盲人の情を、うつせるを、 其角が乞食を書けると、ならへ愛しけるを、 はせをつくづくと見て、人として眼くらきは、 天地を日月なきにおなじ。 また食にともしきも、人にして非人なり。 われたけひき食にともしからず。 三界を笠にいだきて、風月をともなひ、 吟行せし圖を、此のしりへにそなへんと、 淡き墨もて書ちらし、 濃州大垣の画工に丹青をくはさせさせて、 所々の狂句をも書ぬべきあらましにて、 行脚のいそぎやとりまぎれん。 また立帰りての事ともやおもひけん、 反古にまきこめ、風雲流水の身となりて、 その年の時雨ふる頃なにわの浦にてみまかりぬれば、 藻にうつもるる玉かしはとなりぬべきを、 琴風漸くたづね出して、 ほいの如く三画一軸とはなし侍れど、 句を書のせざること賎心とやいはん。 また十分ならざる処かへつて風流とやせん。 名印もあらざれば炎天の梅花、 雪中の芭蕉のたぐひにや沙汰せん。 されどもかの翁の友に、 生残りてたらんもの我ならずして 又そや。 しもつかさの国かつしかの散人 素堂 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年06月08日 16時10分07秒
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