カテゴリ:山口素堂・松尾芭蕉資料室
▽素堂、『江戸三吟』桃青・信徳 ・信章(素堂)抜粋
◇延宝5年(1677) 素堂36才
『江戸三吟』五年冬から六年春にかけて。刊行は翌六年。 ** 其の一 **
あら何ともなや昨日は過てふぐと汁 桃青(松尾芭蕉) 寒さしさって足の先まで 信章(山口素堂) 居合ぬき霰の玉やみだるらん 信徳(伊藤信徳) 拙者名字は風の篠はら 青 相応の御用もあらば池の邊 章 あみ雑喉がかり折ふしは鮒 徳 醤油の後は濁れば月すみて 青 更てしばしば小便の露 章 聞耳や餘所かあやしき荻の聲 徳 難波の聲は伊勢の與茂一 青 屋敷がたあなたへさらりこなたへも 章 かはせ小判や袖にこぼるゝ 徳 もの際にことわりしらぬわが涙 青 干鱈四五枚是式の戀を 章 寺参り思ひ初たる衆道とて 徳 (以下略) **其の二** さぞな浄瑠璃小うたはこゝの春 信章 霞とゝもに道化人形 信徳 のつぺいうしと鴨の鳴くらむ 徳 山陰に精進落て松の聲 青 三十三年杉たてる庵 章 青い顔笑ふ山より雲見えて 青 土器の瀧のめば呑ほど 章 聲がたつあらしに浪の遊び舟 徳 鴈よ千どりよ阿房友達 青 五間口寂しき月に其名をうれ 章 松を證據に禮金の秋 徳 手かけ者相取のやうに覚えたり 青 思ひのきづなしめ殺しゝて 章 木綿売ある夕暮の事なるに 徳 門ほとくと敲く書出し 青 鎌田殿身体むきを頼まれて 章 二人の若の浪人小性 徳 竹馬にちぎれたり共この具足 青 続けやつゞけ紙張の母衣 章 ところてん水のさかまく所をば 徳 浪せき入て大釜の淵 青 **其の三** 物の名の蛸や古郷のいかのぼり 徳 仰く空は百餘里の春 青 腰張や十方世界法の聲 章 凡そ命は赤土の露 徳 いつ迄か炮碌売の老の秋 青 峯の雪かねのわらじの解初て 章 千人力の東風わたる也 徳 熊つかひむかへば月の薄曇り 青 水右衛を笑ふ初かりの聲 章 墨の髭萩の下葉の移ひぬ 徳 尾花が袖に鏡かさうか 青 判はんじいかなる風の閑にふく 章 夫は山ぶし海士のよび聲 徳 一念の鯰となりて七まとひ(鯰は鰻か) 青 かたちは鬼の火鉢いたゞく 章 紙ふりの伊勢の国より上りけり 徳 神のいがきもこえし壁ぬり 青 縄ばしご夜の契りや切つらむ 章 さすがわかれのちんば引見ゆ 徳 骨うづきしのび笠にて顔かくし 青 立出るよりふまれたる露 章
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最終更新日
2021年06月10日 05時16分15秒
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