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山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

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2021年06月12日
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カテゴリ:山口素堂資料室

 

 素翁口伝  全〔□ 印は不明の字()印は句作年・句作者〕 

                                                  

俳諧口伝之名目

一、俳諧を謂□といふ事。俳諧を誹諧と書事。 

一、俳諧式之事、思□等のけやけき物は、

  千句にも所山なし等の入用なるものは、三句立てといふ事。

 

詠向之取格口伝

  詠 向 所 情 走

 此五ツの拠を尋て円かなる時は、乾坤の浮雲にとりて、

 月を思ひ星を思ふ、

 光れる時は花鳥の情に両虚実の間に遊ぶなるべし。

 

五個の附処の事

 青田に移りて夕立の風

 取らめたる思を雷たる行水場

 髪結ふて数にいる日の朝月夜

 木に十ばかり柿ハたしなむ

    

 煙火の上より白きかしらさき

 通々に琵琶をどっかりとらへ

 八朔の礼すぞひゝ仕舞けり

 舟前の鯖の時分はつらし

    

 つい合は皆上声にて呑ならし

 さらりさらりとあふれふるなり

 

八躰の句作

 

卯の花や暗き柳の及びごし   (はせを 元禄七年) 

かたつぶり角振分よ須磨明石  ( 々 元禄四年)

蓬莱に聞ばや伊勢の初便     (  々 元禄七年) 

塩鯛の歯茎も寒し魚の店    ( 々 元禄五年) 

木漏れて木橋も聞や時鳥

稲妻に悟らぬ人の尊とさよ     ( 々 元禄三年)

朝ガ月や春は頭おろす門の垣   

己が火を木々の蛍や花の宿     ( 々 元禄三年)

 

八躰の附方

 

 稲の葉のひのちからなき風   

 発心のはじめに越る影廉山

    

 隣へもしらせず嫁を連れて来て (野波)

 屏風のかげに見ゆる菓子盆       (はせを 元禄七年)   

    

 夜明の雉子は鳴たつに啼      

 旅するに何の暦ぞ無東西

 庭鳥の十二の玉子うミならべ

 あしたに橋をふミそむる也

 何を見るにも一露ばかりなり

 花くもる身は両念がころもゑて

 堤より田の青やぎていさぎよき

 賀茂のやしろはよき秋也

見入

 那智の御山の春速き空

 弓はじめすそり立たる息子とも

 朝風にむかふ合羽を吹立て

 大手の内へはじく生のこと

 

発句傳記

 まず、にほふハ大築うきふ切り、にをふ哉おなじ。

  凩の身は竹斎に似たる哉 (はせを 貞享元年)

発句治定哉

  き里志満は誹諧編にも似たるかな 【き里志満…和歌】

平句哉

  松風を花に感じて居たる哉

 

発句留る句傳

  あかもさし出ても曇る霞か

  夕貌や秋はいろいろの瓢かな (はせを 元禄元年)

尚うき哉、願ひ哉のふたつの葉あるべし。

 

発句手爾葉口傳

  鳶鳥も海むいて鳴くあかし灘

  鳶鳥も海むいて鳴けあかし灘

        

仝 新古之口傳

  枯枝に烏のとまりける秋の暮 (はせを 天和四年)

あはれとも枝に突ともいはずして形容を求めたる所、

風流の一筋なるべし

 

仝 不易の口傳

  麦飯にやつるゝ恋か猫の妻        (はせを 元禄四年)

 

   流行の口傳

  十六夜や海老煮る程の宵の闇 (はせを 元禄四年)

 

 仝   動と云口傳

  春の日や芝で見し人隅田川

 

 仝   不動と云口傳

  行春を近江の人と惜ミける        (はせを 元禄四年)

 

仝 サヒシオリ口傳

  此あたり目に見ゆる物は皆凉し (はせを       元禄元年)

  秋の瀬は影のごとくに流れける

 

 仝   無季之秘訣

  あさよさを誰松嶋を片こゝろ (はせを 元禄二年)

  歩行ならば杖突坂を落馬哉         (はせを 貞享四年)

 

        仝   真行草之秘訣

  真  象潟の雨や西施のねぶの花

  行 いざさらば雪見に轉ぶ處まで

  草  振賣の鳫あはれ也恵比須講

 

        仝   大廻し口傳

  あなたうと春日のみがく玉津嶋

  うちたてゝ天の原見る筆はじめ

 

        仝   秘訣云  

  思ひきや我しきしまの願ならで

       うき世の事をとハるべしとハ 此格なるべし

 

        仝   発句を廻し口傳

  藁にさへ稲の名あるを門の松      

  青くてもあるべき物を唐がらし   

 

        仝   舌妙切口口傳 〔舌妙……絶妙〕

  鴨立ぬハブは烏やかへるらん

 三世の秘訣なるべし

 

        仝   切處無体秘訣

  から崎の松は花より朧にて        (はせを)

  これハこれハとばかり花の芳野山 (安原定室の句)

 

       恋句之口傳

  内の首尾あれ曙の郭公

  秋の夜や夫の寝着是で侍ハん

 

        仝   附合之口傳

       「振賣の鳫あはれ」

  上置の于菜刻むもうハの空        (野坡 元禄六年)

         馬に出ぬ日ハ内で恋をする  (はせを 元禄六年)

       「梅が香にのっと」

  隣へもしらせず嫁を連て来て (野坡 元禄七年)

  屏風の陰に見ゆる菓子盆    (はせを 元禄七年)

 

        仝   一句和合之口傳

  物さしに狙う男のたゝかれて

 

          口訣 

発句ハ天の徳也。則円也。

円る物は哥にして三ツの数なり。

されば哥は上句天にして下の句ハ地なり。

然に陰陽和合して一句情別人也。

発句は其上の句ばかりなれば、

一首の哥の如く陰陽を分ん為に、

切字を以て上下をわかつもの也。

さるからニ□□を元して、          

一句だけ高々、出立の姿肝要なるべし。

 

      切字口訣

      

切字は治定と疑との二ツにして、

自然と、間差備る處切字とるべし。

 

      賦物之口訣

      

連歌形式に云、

□□以賦物為類式者 

百韻五十韻毎句用賦物

近代発句斗有物云々。

 

        上賦  下賦

  山何  舟何  何木  何人

  一字覆影    日ハ火     夜ハ世 〔覆影……露影?〕

  二字返音    華は縄     笠は徳

  三字中略    霞ハ帋     柱ハ厘

  四字上下略        玉章ハ松  松苗は橋

  一字除編  こがらしの町にも入るや鯨賣

  一字添冠  むそふたの宿れて遠き以内哉

 

連歌古格を以て詠にも古代用ひ来る、

当流にハ無しとも苦しからず。

         於白川照高院居士 千句巻頭賦物連歌

         第一何       

  立はるの霜げて千重の初哉

         第二片何   

  照りそハむ山口しるし夕月夜

         第八二字返音数

  紅葉にも忘れぬ松の絶間かな

         三字中略 

  染めあげてあかねし申や程の花

         四字中下略

  □間の是で箒けり残る名かな

 

         音通連聲之口傳

  ア イ ウ エ           カ キ ク ケ コ

  サ シ ス セ           タ チ ツ テ ト

  ナ ニ ヌ ネ           ハ ヒ フ ヘ ホ

  マ ミ ム メ           ヤ 井 ユ エ ヨ

  ラ リ ル レ           ワ イ ウ エ ヲ          

        

 此立を音通と云、横を連聲

 

         五音止歌

  アワヤ唯みダラナ舌ニ、カ牙(ガ)サ歯音。

  ハマノ二ツハ唇の軽重。

 

         言葉続の證歌

  たち別れ稲葉の山の峯に生る松とし‥‥‥

        (聞かば今帰りこむ)     

〔在原行平 『古今集』八 別離〕神防楽

  

 夕立や田を見めぐりの神ならば松風の匂ふ扉や浜のそふ

 仝肥前藩松浦聖廟にて 〔素堂の句か〕 

 素堂は延宝六年~七年にかけて肥前松浦を訪れている。  

  

 

  色あざやかにみたらしの蓮       むつかしき歌ハヽ‥‥‥‥‥‥‥

         右神法楽

      

婚姻 賀 元服 徒移 夢想 祈祷

        此外祝儀たる事には、此格を用ゆべして、秘かヽヽヽヽヽ

 

         又裏綿の格 〔裏綿……裏面〕

        信夫山奉納

  初霜誅む目当て信夫山 岩城権太守露沾公         

 

 

         又句之口傳

  ほんのりと二枚屏風に明の空

 

       俳諧の口傳

  

 一 俳諧 

 二 誹諧     

 三 俳  

 四 滑稽 

 五 誹 イニ俳-    

 六 謎字 

 七 空戯 

 八 犯言イニ狂-

        

 芭蕉門は第二、古今和歌集之俳諧体の儀を用ゆべし。秘訣

 

         切字之秘訣

 

 切ツハ寄也、

 切ツハ節也、

 切ツハ盡也。

 

         格の口決

 

        発句天にして格也。

 故に発句より生れ出る如くにすべし。

 四季の三月のことにも、

 其の一月々々づつにして、

 発句そひかぬ心なるべし。

 一句と是も一首の歌の如くなれば、  

 一句の詮たつべき為に字留にして、

 其の詮をとるべし。

 

       手爾を葉留口傳

  

 提灯の威は其楮也けり      其角

 空も心たつ夏衣ハ夕かし    堂友

  雑魚にも一更る活蛙かな  京 轍士

        此格さまざまありて秘ぞ…〔秘ぞ…秘之〕

 

         第三の口決  

 

 第三は三才の内にては人也。

 故に天地をはなれて、

 一慣の場なるが故に、

 発句格に変化すべし。

 又留を四ツ〔てもなし・にらん〕の仮名に定たるハ、

 此四ツかなハ〔治定題廻り手爾葉〕に並ぶ故に用ひたる也。

 口傳ごと

 

       亦字留秘訣

  

 春の木天下に名ある郭公       季吟

 檜扇のそれかあらぬか鶴頭花          露沾子

 はづし置琴柱たぎつて渡る鳫          不角

        此外字留之格有之て秘ぞ………

 

       亦仮名留口傳

 

  雲雀啼小田に古持頃なれや 〔はせを 元禄三年〕

         〔猿蓑集に出、ひばり啼中の拍子や雉子の声〕  

  銚子殿花も紅葉もなかりけり  其角

  梅咲て廟の草履静なり     才丸

 

         亦口傳一秘  

  風ゆらん水鶏でもなし草の戸に

               友なふて淋し          立空

 

         口訣

  我里の芋植桜咲にけり

 

       徒々留口傳

 

  嵐の度に柿は落つゝ

  富士の高根に雪ハ降つゝ

       〔万葉集 山部赤人 

  田子の浦ゆうちいでてみれば真白にぞ富士の高根に雪は降つゝ〕

  我衣手は露にぬれつゝ

       〔後撰和歌集 天智天皇     

  秋の田のかりほの庵のとまをあらみ我衣手は露にぬれつゝ〕

 

       附合皮肉骨之秘訣

 

 皮 旭霊の玉をふるふ蓑の毛

   附籠る樢桐か間和に冬の来て

 肉 ちまたの神に申すか年言

   御供してあてなき我も恋らん

 骨 我手に詠を大事いらるる

   二度呼の内儀ハ之度屋敷から

 

       第三にて留の口傳

 発句の治定の式は、第三うきにて留るべし。

 発句うき哉は第三治定にてたすくべし。

 発句の式第三のにて治定ならば、

 治定うきならばうきにてハ同前たるべし。 

 不留ものといふ也。右の伝受をすれば苦しからず。

 治定にて 冬むきの里は朝帰ん柚味噌にて

 浮にて       辻風にきれ行凧のはるかにて

 

       留りの事

 

 平句哉       凩によにもはづるゝ此戸哉

 下句哉       あつたら松を枯す事哉

 下句に       夜から伯父の麦をこなしに

 下句見内   むかひの山に野先掘見ゆ 

 

         見ゆのおさへ字

   う く す つ ぬ ふ む 由 流  にておさへ字

   を は も か ら ぬ 又ハ た    に さ へ な

 

         押字なくらん留り秘訣

 

  夕暮の衣にて猶におしからん

  数猿今夕譲沾衣之り出たり。

  夕暮れをくなる故に添、あはれもいやまして、

  るゝ花と感情のらんと先哲傳来る。又

  薪と水みぞれの降るばはるらん

  是一字はね也。遠からふと聞ゆ。想るうに、

  へふらんハ一字はね也。

        第三の句にハ有べからず。

         フラウ    テラウ   アラウ

          降    照   有 皆此類也。

          フラン   テラン  アラン

 

        重手爾葉

        糸落起る間もなき露の玉

        たまの露とは取はやしけり

 

         恋の句

  恋の出情 

  さまざまに恋はまて貝うつせ貝

            乞食に成て夫婦ざれあふ

  初 恋  

  とぼそから栗とる度に思ひそめ

           我匂をしひた蝉のぬけ殻

  待 恋  

  上置の干菜刻むもうハの空   (野坡)

  馬に出ぬ日は内で恋する     (はせを)

  逢 恋  

  あふ事のはじめ終りかがミかへ

            なミだおかしく瓜なふりさく

  逢ぬ恋  

  久しく捨つ起しつ物思ひ

           水さすやつを恋のげじげじ

  別 恋  

  別れんとつめたき小枕あたゝめて

            おさなきどちの恋のあとなき

  新 恋  

  ちまたの神に申すかね云   

           御供してあてなき我も恋ふらん

 

       三ツに別る口傳

          どたりと塀の伝ふ秋風 といふに

  理屈躰  きがきかず薪積下に鳴止て

  不付躰  きがきかず薪積下に鳴て戻る

  正風躰  きがきかず薪積下より鳴かして

 

         桜に花附合

          いつでも若しさくらに俳之詠(泳か)

          山は皆葉物にまでも花さかり

 

         花に桜 仝        

          法の花牛盗人といはれたし

          さくら咲たつ廿 八 日

 

         花に吉野 仝

          神鳴を昇下りして見する花閑

          古座長閑にみよし野ゝ  前句

 

         附応傳

 附句は想名にして迯る場所あり。かくる物あり。

 此二ツの物は前句の濃落けり出てにも、    

 自由のはじめに立物也。

 さればと、時の俳者理屈古ミをおそれて、

 すらすらとたに云下せ       ば、是芭蕉門の変風なりと、

 彼(我)もなく虚気を高ぶりたる迄にて、

 我も心に落さま、句のみ多々有に、

 はせを翁の教に皮肉骨の姿より、

 不易流行の変かをあらハし、

 付句の出情を演たるあり。

 是風雅の走りにして、

 此場をしらざる俳者新古の姿わかちがたし。口訣。 

 惟然が云付句は附ざるもの也といへり。

 是ハ前句に轉ぜられて古ミに落、

 高輪回に是ふみ入たる俳者のねばりを

 うち払べき仮のおしへ、

 又正風一毫も心改にて(ぞ)免ずといへるなるべし。

        支考が云付句は、

 一句に一句づつ付るものなりといえり。

 是は前句に差別なく、

 俗談平話の下累にのミ落て句に風雅の二字なく、

 野鉄砲に付合を覚えたる俳者を学しむべき為に、    

 一句に一句づつ付け三句の渡り打越、

 輪四をはなるべき教なるべし。

 

         五体格秘訣

       二字一連 同字 名所 頃 手爾葉

 

         第三十体留      

       字留 余り手爾葉 に て けらし かな けり

       もなく(し) なれや らん

 

         仝 五法秘訣

       杉形 去山 回転 角切 死活

        此五ツの外に第三の法なし。

 山武と川裏と表に谷の有て  (嵐雪)

        翁口 かよふにしてハ死句なりと

        其角・嵐雪に教解有て

       山武と川裏と表に谷を付て

 

 右山口素堂の書たり、

 もっとも当流重大の秘記。

 其許、年来執心によって、

 いま当写し与ふるものなり。

 猥に他見をゆるすべからず。穴賢々々

      

         素隠士七世葛飾正統        

  于時文政二巳卯初春日                        

  其日庵列山

          文政二年……三関氏    三和雅丈江参 

 

此俳諧口傳一巻忘素翁の真蹟のよしにて曇華斎に来りしを、

其格見定めとして残しけるを、    

其儘にうつし置かしむるもの也。

但此より後きれて見へず。

素翁のしるす処の名もなしといへども、

一体の意味事凡の作りすべきものにあらず。

全うしざるハ残り多き事なり。

 

         安政二年乙卯八月三日識           

   九世  其日庵(馬場錦江)

          安政二年……1855                                

列山…関根甚右衛門。

五世其日庵関根三右衛門の二男。文政元年に其日庵を継ぐ。

錦江…馬場小太郎。列山の執筆を務める。俳諧関係の著述多し。









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最終更新日  2021年06月13日 06時04分39秒
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