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2021年06月12日
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石川利光(いしかわ・りこう)

 

  国文學『解釈と鑑賞』 第38巻第9

  発行者 佐藤泰三 

製作責任者 黒河内平

  編集 金内清次

  発行 至文堂

  一部加筆 山梨県歴史文学館

 

  【略歴】

 大正三年二月三日、大分県日田市に生まれた。

早稲田大学中退、法政大学にも学んだことがある。

渡仏の希望を抱き、準備を進めていたが戦争で断念、戦争末期日本航空

機に勤務した。戦後は、九州書院を経営、雑誌『モダン日本』を出した新太陽社の重役、出版社次元社社長を経た。

戦前から早稲田系の同人誌、野田誠三・井上友一郎らの『換気筒』、市川為雄・沢野久雄らの『貿易風』や 『泉』『文芸主潮』に関係、戦後は丹羽文雄主宰の『文学者』の創刊に尽力、編集委員として中核的役割をはたした。

  【文壇処女作】

 「夜の貌」(『文学者』昭25・8)。新京で現地召集をうけ敗戦後シベリアか

ら帰還してみると妻はかつての同僚と幸福な結婚生活を送っている、といった戦後特有の人間模様の中に、疎外された中年男の、けだるい哀感をにじませた作品。芥川賞の候補作品として注目された。

 

 【代表作品】 

 

 『春の草』(昭26、文芸春秋新社)、

 『大戦』(昭28、小説朝日註)、

 『女だけの旅』(昭29、山田書店)、

 『半未亡人』(昭30、鱒書房)、

 『忘れ扇』(昭32、小壺天書房)、

 『爪あと』(昭33、小壺天書房)、

 『12の結婚』(昭34、小壺天書房)、

 『女人彩色』(昭36、昭和書館)、

 『余白の日々』(昭42、海燕社)。

 

  【評価】

 

「春の草」(『文学界』昭26・6)は、働きのある義父、病弱の母、義父と通じているらしい妻、復員して無為に過ごす中年男の虚脱感を軸にして、同じく妻に逃げられた楽士、拠りどころを失った老夫婦らを点描して、うらぶれた市井の生活をたくみにとらえた作品である。

「シチュエーションの設定にも細心の注意、がゆきとどき、一字一句をゆるがせにしてゐない。筆触はあざやかで、ぴたりと押へてゐる。……却々の小説上手だ、が、才気に流されてゐない。ありふれた、いく度か書かれた材料をとりあげ、これだけしんみりとしかも新鮮に読ませる才能は、将来を確約させる」。

 石川利光の最もよき理解者である丹羽文雄の芥川賞選評である。

丹羽の言い当てていることの裏がえしが、

「何人かの、年齢も職業も生活もちがふ男女の『色事』を随処に器用に、織り込み、その間に、四季のうつりかはりも、風物なども、書いてあり、文章にも工夫をこらしてはある、が、所詮(一と口にいふと)小細工であり、古風である。」

(宇野浩二)、

「自然主義文学の亜流で少し手のこんだ世間話を腕達者に書いてゐるといふ程度」

 (佐藤春夫)

という評言であろう。

 舟橋聖一の

「近い将来に、まとまりのいい、小味な作品を、いくつとなく書くやうになるだらう」今後に期待される。

 

  【竜門挿話】 

 

第二十五回芥川賞は、「春の草」と安部公房の「壁」が受賞した。「『夜の貌』と合せて一本」という丹羽の戯談めかした言葉に選考の事情がうかがわれる。

「石川利光の保守性に対立して、安部公房の『壁』は、新しい観念的な文章に特徴かおり、実証精神の否定を構図とする抽象主義の芸術作品」という舟橋の選評もあるように、伝統派の石川と並んでの安部の受賞は、戦後文学の新しい潮流を確実に告げるものであった。(高橋新太郎著)






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最終更新日  2021年06月12日 18時52分05秒
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