カテゴリ:白州町・武川町 歴史文学史蹟資料室
にふなひ鳥 滝亭臺珉 撰
それ俳詣は、こころの色なり。 たとへは月草のものに移ろひやすく、 かゝみの影のよくものをうつすかことし。 それか中に、不易あり流行あり、 且しはらくもとゝまらす、 さたむるともさためかたきは、 かの造物者の無尽蔵なれはなるへし。 かくて目にさへきり、みゝにとゝろき、 こゝろに感する事あれは、 おふけなくも、天骨なくも、 ことの葉の色に染出るわさなりけり。 されは尾張の士朗はなたねの花に、 小すゝめの觜をそめて、其よしはひとく鳥に見えたり。 流行の色をあらはし、 これの台はほどゝきすの音にむら雨をそゝきて、 不易の心を染出せり。 さてその雨そゝきの、あさらなる色をはじめとして、 遠き近き人々の、花紅葉のめてたきいろく、 蝶鳥のあはれなる風情まで、おのかこゝろのまにまに、 やをらかいあつめて、ひといろの巻となしつ、 そもやこのはいかいの色をこのまさらん人は、 たまのさかつきのそこなきかことくならむかしと、 わらふてふと手をそむるのみ。
さねかつらの可都里しるす
にふなひ鳥 春 霍公鳥むら雨かゝる遠音哉 臺珉 月ともいはぬ山あいの夏 盛徳 笠縫かゆふけの莚冷ぬらむ 可都里 臼の際までおよふ芦の穂 谷戸 花仏 消長のことしはたらけぬけしきにて 嵐外 御馬買にたるあけほの 甫秋 いらいらと山枡はさまる老の歯に 柳江 竹とりに似た家を造りて 教来石 良見よや六月寒き水の色 徳 まれにあふ日は悲しかりけり 里 神垣へゆるさぬ傘をさし込て 仏 山雀ちれは紅葉しもちる 外 ささ波にいつかさひたる昼の月 秋 さて松しまのあきは誰く 江 手まくらはりつくはなるるはしめにて 臺珉 からすの上にこけむしろ戸 徳 雛うりに花の有処をみられた 三吹 遠之兄 つらく通る水のかけろふ 夷人 初午にかならすこえる木幡山 中島 兄國 瞽者か懺悔のいとあはれ也 谷戸 万子彦 板の間に米つむ雀今朝も来て 花朝 日よりの相か沖中にたつ 石蝉 いささらは松にかたらむきぬくを 里 遊女のこころほとけなり 臺珉 年くれて火に焚ものの煤たらけ 人 淡路にをれは須磨の床しく 兄 呉竹の葉のあるまゝを弓にまけ 外 樫のあたりに鬼や弔ふ 國 梟の眼先へいつる三日の月 彦 露をみるより庵ほしくなる 里 * やすやすと砧にかけぬものを着て 臺珉 新防人のすすむあさく 江 わたくしの雨を持たる真耶の空 蝉 踏かふるほと小桶ゆひおく 外 此宿は花のあとにもはな咲て 里 草の中にもうくひすの鳴 人 井沼川の辺にあそふ 凉しさは何となけれど萩すゝき 蟹守 月さへ出れはなつのかくるゝ 可都里 おもしろう魚くふ鳥を追立て 漢甫 篠籠の底のぬける淋しさ 嵐外 旅人の家もち初る梅の花 真洞 * 五日やすみて春雨のふる 臺珉 湖の夜を行雁のひまもなし 樗冠 ふはりくとたゝむかり衣 守 嬉しさは悲しさよりもつゝまれす 外 見てもみたきは泊瀬のあけぼの 甫 屋の棟の草は植たり青みたり 鏡平 『可都里連句集』では(蛙文) 釣瓶の水をこほす觜太 詳夷 『可都里連句集』では(椿太) 聖霊をむかへ申をちからにて 希也 鼻のさきより内房の月 洞 * しら露の袂に金はもたぬなり 臺珉 うくひすの巣に庵ならへつゝ 冠 きのふけふ桜せゝりに人の出て 夷 『可都里連句集』では(文) 霞みのころも八重かひとへか 平 『可都里連句集』では(太) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年08月08日 06時58分05秒
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