カテゴリ:白州町・武川町 歴史文学史蹟資料室
にふなひ鳥 滝亭臺珉 撰 夏
故郷は見おほえのある若葉かな 五芳 ほとときすなき初るかな明るかな 柳和 子規一聲こゝろさわかしき 菊明 不如帰行あたる山はなかりけり 重英 顔入るほとの木の間のほとゝきす 希言 ねがはくはいつも月夜のほとゝきす 士朝 ちらちらと須摩に二夜のほとゝきす 美敬 それとなく松はうゑけり杜宇 鸞岡 降初る日はほとゝきす皐月雨 夢川 荘厳密室にて人々 蜀魂をあんし侍りける時 夏まてはうくひすとと老を啼 みち彦 閑古鳥まきるる聲はなかりけり 松風 なかなかに暮れは啼すかんこ鳥 猿左 白けしに明残る夜の長閑なり 自楽 若竹やよれ葉もとりて露はしる 葱涯 姥捨山にて いつ来ても夜のおもひそ夏木立 壺伯 みしか夜や鼻つき合す窓の月 樗冠 花遅きよるのさまなり夏の月 岱夢 昼顔にまけましと思ふ命かな 友國 草山や子にあらはるゝ夏のしか 五明 暑けれと竹枝青き山路かな 泰昌 すゝし四隅にかよふまつの風 鷺白
秋 秋たつやさたまるけさの草の丈 白黛 初秋か来ても月なき野山かな 岳 あけほのも秋の柳となりにけり ☆長翠 をみなへし又来る人も手折けり 墨哉 所思 たをりかけくたる木槿かな 鏡平 秋のこゝろあき風に吹こされたり ☆伯先 大原や連歌のあとの秋の風 都雀 うす霧となり行松のゆふへかな ☆車大 今の間に夜の古ひけりきりくす 嵐外 刑部卿にかはりて ませのうつなるしらきくもうつろふ見るこそあはれなれ、 われらかかよひてみし人もかくしつつこそかれにしか 忘られぬ夜を重るそきりくす ☆可都里
閑画
まくら一つむしことくく音を尽す 加毛 秋の夜は歩行事にもせさりけり 守 いろいろに淋しからする月夜かな 英二 水上や月の落こむかせのおと 兄國 一おしに門田なりけりけふの月 真貫 名月はすすきのかけをくもりかな 一草 渡り鳥真葛かはらはあめに過 左岳 雛鶴峠を越るほと * 山中やいつかいつまで鹿の聲 臺珉 啼鹿にみなかゝりけり夜の雨 子良 夕くれや山たけちかき秋のやま 真洞 菊は花の夜さへ人に見られけり 楳価 きく咲て我にきのふはなかりけり 喚之 起いてゝ見れば野は風みなすすき ☆升六 山寺やすゝきの月も一さかり 椿堂 芦の穂にさすと見るまに入日かな ☆春蛾 后の月雁大声に鳴夜かな ☆成美 北国行脚せし頃 暮るとて馬さへかさす柿黄葉 ☆葛三 淋しさのひとには痩す秋のくれ 文輔 木曾河のおして出にけりあきのくれ 静菅 山川や瀬に音たてゝあきそ行 ☆玉屑 行秋も一夜となりぬしのふ草 ☆冥々 冬 初しくれ菫みつけしこゝろかな 其成 花鳥の世はへたゝりぬ冬木立 恒丸 冬の日の足もとに出る山家かな 蕉雨 山葵石とりにまかるとて ひとり行袖につきけり彼尾花 柳江 家と家のあはいの尾花かれにけり 隻鳥 かれ草に風のなき日となりにけり ☆甫秋 冬こもり見よ楢の実の五宇器一具 ☆巣兆 氷けりまつより下の小夜あらし 可里保 こゝろみの崎 水鳥の水なりに行そうつくしき 鹿古 称たきの杜に一やすみとてよめる所にて ひとりつゝ聞て来にけり磯千鳥 葎甫 小夜ちとり廿日の月も出にけり 六 こからしの廿日もはやし峯の月 ☆蒼 寂寞無人聲 初しもや小雀山雀高音はる 希也 鉢たゝき今宵も月の山おろし 田禾 降雪や有明月も藪の中 斗入 塩のうすむたつねん雪のくれ ☆少汝 春 春はやくふしのしらね雲出にけり ☆素檗 うめの月見たらぬ二日三日かな 柯則 家五尺あとへひかばや梅の花 ☆卓池 うめかゝのやかてのりたる莚かな 夷 咲のこりくけり楳のはな ☆漫々 うくひすの啼恋す思ひあはれ也 ☆雲帯 黄鳥の啼とき少し静なり 花仏 うくひすの声に行あふ山路哉 遠之兄 雨ふり風ふける日 鶯の啼ふるしけり東山 万古彦 いせ浦や浪は青のり春の雪 自徳 雪ませのはるの月さす戸口かな 柳荘 長閑さのひかりも見えて春の月 暮隠 おもふ事いくつもありて春の月 岐東 いつとなく水に出てあり春の月 盛徳 かるがると朝月にかゝる柳かな 月舎 我のみになりて見に出る柳哉 静良 あめ恋し薺にかゝる土ほこり 草蘿 春の日の野にはひすりて入にけり 藍堂 はるの山くたる心は夢のことし 杖 三つよれは三つか啼なり猫の恋 石蝉 なかれ出ておのか里をやなく蛙 関叟 見るほとにあはれつきけり飛小蝶 物成 春寒しおなし処に啼雲雀 ☆方明 花恋し出たれはやみの帰る雁 雄淵 はるもはや雁にわかるゝ旅寝かな ます女 あはれにもはるゝ住居そきしの聲 いち女 春哉村をすきて すみれなき山にかかれは雉子の聲 鱒魚 陽炎の葎をのはす戸口かな 蘭二 ねはん会やうめちれは又さくら咲 星布 東山花なきところしつかなり 月居 おのれはよし野に旅たつ日、 江戸の春我は松しまに行とて、 告来しける文のかへしに 花と松と旅寝はひとつ心哉 長斎 はなに花の香をゆつりあふ夜明かな 五貢 起いてゝ寝顔むけたるさくらかな 丈左 おもてより先ちる事か山さくら 竹露 ことごとくこゝろこもれちる桜 夷人 行先をみな菊の花のかくしけり 華朝 漣の志賀の都はあれはてゝ 菊の花や寝ころひかゝる長等山 羅城 むら雨の日はくれやすし藤の花 一之 行春の葱はら雀鳴もせよ 春鴻
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最終更新日
2021年08月08日 07時00分19秒
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