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西明寺時頼百首抄 一話一言 大田南畝纂著
守武百句
世の中に命の長くありたくば いきとしいけるものをころすな 世の中の親に孝ある人は 何につけてもたのもしきかな 奉公は坂をのぼせる車にて ゆだんをすれば跡へもどるぞ 奉公は扇のやうにするぞよき 用なき時もこしもとに居よ 師匠をば仏のやうにするぞよき 朝な夕なにふかくうやまへ よき人に結びてわろき事はなし 麻の中なるよもぎ見るにも 身のとがを思ひもしらで主おやを そしる人こそ聡のはぢなれ みめわろく色黒くとも人はただ 心言葉はきよく白かれ 人はただ心ひとつのわろければ よろづの能のあるかひもなし 年わかき人はいかにもおしなへて 言葉すくなき人はほめぬれ 障子をばしづかにあけて立出て のどかにあとをたてゝ行べし うちくにたしなむ心なき人は 座毎にはぢをかくぞかなしき ひが事もなにも酒よりおこるぞと 思ひしりつゝしんしやくをせよ 暮すぎにさせる用事のなき時は かろくあるかん事をとどめて 近付はあまたありともその中に 心を見つゝうちとけてせよ また更に年にもたらぬその人の こざかしきふりいち憎いもの 世の中は目に見る事をほんとせよ 聞ぬる事はかはりぬるもの 世の中の人をあしくと思ふなよ 我だによくば人もよからん 我心かゞみにうつすものならば さこそ姿の見にくかるべし よめかしと思ふふみをばよみもせで とはず語りの人はうたてし むすぶ中ふしぎの事を聞ならば みづから行てうちとけてきけ 顔くせをいつもたしなめとがなくて 世に憎まれて何にかはせん 何事もわれはかくしてするわざと おもへど人のしるぞ世の中 とにかくにふみは落ちる物なれば むやくの事はさのみ書まじ 余所ながら見てもこゝろの冷ぬるは 刀たはふれふかくする人 隠す事かくさせもせで聞たがり 見たがる人はいちわろく見ゆ そばあたりさし足してのかきのぞき うるさの人の鼠心や 友達とあそばん時にさしもなき 言葉あらそひせぬ物ぞよし いかぽかり腹は立ともくかいにて きたなく物をいはぬもの也 物こはん人にはなくてとらせずも 言葉にくげにいひて帰すな わらんべのいはぬ事には空ごとゝ 喰ものゝ事うりかひのさた 戯れも一度二度こそおかしけれ さのみになれば腹ぞたちけれ
右三十二首は当将軍家綱吉公御近習、 山口五郎兵衛に被為下之御扇子に御自筆の写なり。 天和三年卯月お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年08月30日 11時10分46秒
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