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2021年09月03日
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カテゴリ:著名人紹介

信濃紀行文・詩歌集 島木赤彦歌集

 

  『甲府だより』伊藤良氏著 昭和62

   一部加筆 山口素堂資料室

 

諏訪歌

 

健御名方神のみことの神うつり御座

高知りいや古の国

たたなわる嶺高囲むみずうみに

冬さり来れば氷はる国

日の本の山なみ千なみ青雲の空に

きわまり湖清き国

なまよみの甲斐が根の雲に隣りして

高原の湖にみ船こぐ国

 

上高地温泉

 

森深く鳥鳴きやみてたそがるる

木の間の水のほの明りかも

久方の朝あけの底に白雲の

青嶺の眠り未だこもれり

一人いるいでゆの目かず山に

馴れし思いのするもさびしくありけり

花原の道はきわまる森の中の

静けさおもえば鴨鳴くきこゆ

 

善光寺

 

雪はれし夜の町の上を流るるは

山よりくだる霧にしあるらし

雪の上を流るる霧や低からし

天には満ちて光る星見ゆ

おのが子の戒名もちて雪ふかき

信濃の山の寺に来にけり

のぼり行く坂のなかばより山門の

雪の屋根見ゆ星空の下に

山門に近づきにけり雪かきて

氷あらわるる坂をのぼりて

屋根並みの雪をおろして道狭し

暗きあかりに歩みを求む

昼明かき街のもなかに雪を捲く

つむじの風は立ち行きにけり

晴るる目の空にそびゆる山門より

雪のまい散る風絶えまなし

雪あれの風にかたじけたる手を入るる

懐のなかに木の位牌あり

言にいでて言うはたやすし直照りに

照る雪の上に我ひとりなる

雪ふかき街に目照ればきわやかに

店ぬち暗くこもる人みゆ

 

佐久の原

 

片寄りに炳はくだる浅間根の雪

いちじるし有明月夜

野のうえに立ちの短かき松林

梅雨近くして雲多くなれり

野のうえの畠のくろの鬼躑躅

くれない深く梅雨近づきぬ

草木瓜の花さかりなり火の山の

低きに下りて畳まる白雲

頂より炳をおろす浅間山嶺の

焼石原は青みたるかも

山下の焼土原の草立ちぬ

汽車とどまれば鶯きこゆ 

 

木曽御嶽

 

栂の木の木立出づればとみに明かし

山をこぞりてただに岩むら

夕ぐるる国のもなかにいやはての

光のこれりわが立つ岩山

大の原口は煩きぬ眼のまえに

ただ平なる僣(ハイ)松の原

はい松のかげ深みつつなお照れる

光寂しも人目のなごり

星の夜の明かりとなりぬ目のまえに

いくばくもなきはい松の原

踏みのぼる岩ほのむれの目になれて

あやしく明かき星月夜の空

星月夜照りひろがれるなかにして

山の頂に近づきぬらし

山の上にわが子と居りて雲の海の

遠べゆのぼる口を拝みたり

みずうみの氷は解けてなお寒し

三日月の影波にうつろう

 

 諏訪湖

 

湖(ウミ)べ田の稲は刈られてうちよする

波の秀(ホ)だちの目に立つこのごろ

師走風吹きふくままに湖の波の

濁りをあげて夕ぐれにけり

一と時の日ざし明かるし濁りたる

波の起き伏しに静かにいる鴨

星月夜さやかに照れり風なぎて

波なお騒ぐ湖の音

きその夜の風に煩ける玉蜀黍の

青高秤(ガラ)を伐りてたばねつ

野分すぎてとみにすずしくなれりとぞ

思う夜半に起きいたりける

 

姥捨駅にて

天とおく下りいしづめる雲のむれに

まじわる山や雪降れるらし

いちじるく雪降れる山や天の原下りい

向伏すむら雲のなかに

雲動くむら山の上に飯綱の

ひと山白く雪降れり見ゆ

雪を冠る山の送()や雲の群の

動きあいつつ立ちも離れず

 

信州田中法善寺

 

七月に入りて雪ある遠き山山

門外にいで立ち見れば

門前より傾く丘の裾遠し

川をめぐらして音の聞こえぬ

山内の松のあいだに月照れり

涼しさ過ぐる夜はくだちつつ

 

燕嶽の上

 

高山の栂の木立は皆低し

肩に触れつつ麻(オガセ)さがれり

山の上の栂の木肌は粗々し

眼(マナコ)にしみて明けそめにけり

高山の木(コ)がくりにして鳴る鶯(ウソ)の

声の短かきを心寂しむ

山のうえの岩の族(ムラガ)りて

さく花の紫深し露寒みかも

よベ一夜雲あ力けらし山のうえの

お花畠は露しとどなり

天降(アモ)りたる娘(コ)らと思(モ)わねど

雲の上のお花畑にあやに遊べり

現身(ウツシミ)の人にしあれば天(アメ)なるや

お花畑を踏みて惜しむも

わが齢(ヨワイ)ようやく老けぬ妻子らと

お花畑にまた遊ばざらん

雲の海沈もりて遠き山浮かべり

殆(ホトホ)とにして思い至らん

 

木曽の秋

 

谷寒み紅葉すがれし岩が根に

色深みたる龍騰(リソドウ)の花

岩が根に早旦(アシタ)ありける霜とけて

紫深しりんどうの花

霜とけてぬれたる岩の光寒し根を

からみ咲くりんどうの花

りんどうの花の紫深くなりて

朝な朝なに霜おく岩むら

岩が根に小指(オョビ)もて引く龍騰は

根さえもろくて土をこぼせり

 

下伊那行

 

谷川に朝立つ霧や凍るらし

竹の葉むらの白くなりつる

天竜の川ひろくなりて竹多し

朝(アシタ)の霧の凍りつき見ゆ

山の霧ことごと川に下りけん

光身に泌みて晴るる朝空

川べゆく電車の外は霧深し

青空ややに現われて見ゆ

谷川のあしたの霧を洩れて

さす光こほしも電車のなかに

霧のなかに電車止まりてやや長し

耳に響かう天竜川の音

駒が嶽は奇しき山かも晴れし目も

己れ雲吐きて隠ろいにけり

 






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最終更新日  2021年09月03日 06時48分18秒
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