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2021年09月04日
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カテゴリ:俳諧人物事績資料


哭可都里翁

 

 この君を柱にとりて北国に遊ぶ事二十年。

二十年のけふになりて、此のはしらむなしく朽ぬ。

長月中の五日草も本も足腰も秋風に折て、

 挟にひとつ涙川ながれぬ。

うとましき時やうけらの花の時

 文政己丑の年長月六日夜訪ふ人もとふかたもなく、

ひとり北亭に寵る。

四十雀五十から老に老をかさねて秋の夜つれなく

寝られぬまゝに消炭吹おこし湯など煮る時

窓のひまあかくとかげのさし入る。

あやしく戸を押やりてみやるに、

南の天少し西にかゝり空を侵し朱をそゝぐ、

何地いづれの処にかあらん、

かならず火のあやまちなるべしと覚束なさ心もとなさ、

心も落居ず、枕にもつかず、

猶そゞろこゝろにうつふとなく、夢となくしらず。

更行ままふに鳥の声、

頓て明るうゆきゝの入罵りて久遠寺焼亡とかや、

更にうつゝ心もあらばこそ。

抑六年の先甲申の秋堂宇かたの如く灰薬となって、

いまだ跡をさまさず。

塔主のかたのみげふに残るを

今又跡しらぬ烟りと成行ぞ浅まし、

はかなしといふも果しもなきや。

火は火の用あるものながら火といふもの

亡くてあらばありなんとあられぬよふに

うち佗したる此の日なりけり。

 

浅間しや柚味噌焼とも浅ましや

焼までにして口のくれる柚味噌哉

 

 垣根の高さに自然生の一抹あり

獨活の実のそれともしらず九月尽

何時からか是程に秋の暮にけり

月は西の山に今年の秋くれぬ

 

 向嶽禅林

 

秋暮ぬ瓦を敷し堂のうち

 

   冬の部

 

初しぐれ掃て希をおかぬうち

はつ時雨帰花でもなき木僅

今は昔軍は絶てはつしぐれ

骨折て藪本の匂ふしぐれ哉

材木にふさがる木屋の時雨哉

わきわきと鴨の水のむ小春哉

岨の松誠の春か神無月

 

山里や人あるかぎり麦を蒔

麦まきや箸を置まで身のいそぎ

炉開や桐の木高き手くらがり

爐の穴や花橘のひとにほひ

茶の花やひとつ開て十つぼむ

茶の花や葉にはまけじと咲立る

御命講煙り立けり珠数の玉

十月や鳥のぬけ行家のうち

 

 十日ばかり薬鋪を扱ひて

 

芭蕉忌や病の味をあぢはへる

 

蕎麦とはいかいとくうけたまはりし事耳の底に蔵す。

 

はせを忌や野にはよき蕎麦刈だ跡

 

今年中大根引らん山の寺

土大根心一ぱいあらひける

 

稚きものの野に畑物を取て猿業に家に運ぶに

おのが力にかなへかねて、扱ひ佗るも又おかし

 

大根二杷案山子の骨に荷ひけり

溜り居てしばしやはらぐ木の葉かな

柿の木やおのが落葉になれて立

一日にかたつく木ある落葉哉

四方から落葉の中や善光寺

行水やまだ二三日の鴨のかげ

鴨の来てすぐに出這入芦間放

池の鴨雄ばかりがふたつ居る

鵜飼川かものはなしを立てきく

 

巣兆の筆せし蛭子のかたを壁上にかけて、

今日を祭る人の心それに句を乞れて。

 

比神や鯉もっれるか見て居たし

 

五十を夢と過て六十をひとつはじむ。

身の冬を油徳利の古さかな

石蕗の花咲ぬ夜を寝て昼の隙

血をかけて鷹の飛けり庵の軒

とりすがる蜻蛉もかるy芒かな

髭剃た顔を玄猪の山おろし

 

山里や十夜もしらぬ冬の月

藁ひとつ袖にかかりて冬の月

霜月は何もまじらぬ寒かな

霜天や土売に来て土を買ふ

鴛鴦にながれかゝりぬ樒(しきみ)がら

をし鳥や雨にまかする捨心

 

鶺鴒(せきれい)の歩行ぬ先やはつ氷

余所に寝た夜の面白し初氷

氷る夜の水の呑たき寝覚哉

巨燵(炬燵)して人はひとりでありぬべし

泥に身を捨た心の火燵かな

底のよくぬけずあるかな炭俵

 






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最終更新日  2021年09月04日 13時13分56秒
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