カテゴリ:山口素堂資料室
庵語 (『魔詞十五夜』)山口黒露
摩詞十五夜(まかはんや)素堂三十三回忌追善 山口黒露撰 一、 大津なら屋に雨たれやうそふみも習ふたよ碓をといふ人もしらぬ古小うた謡ふて、米協て世をわたる惣右衛門と云おとこの有しか、越の者とそ、元禄年間のころ舟軒堀の巨商の家へ出入しを、正直者ゆへそこら家くよりも米つかせて、後は惣米々と呼ことに成ぬ、 筑地の飯田町に小屋かりてすみける、さる事そ有けめ、彼巨家のむすこ、かれか方に一夜泊ることの有しに、折から時雨打して寒キ夜、さゝらふとんやうの物取出し、きさしめせといふをみれは、むさし共なき蒲団うちかけ、己も片隅につゝ臥とて、紬槁の夜着ふとんのいと清けなる敷てねたり、思ひよせぬ有さま、息子心も得す、かく迄はあらざらん物をと問に、惣米いふ、ただ身一ツの下子食は且那にてたうへ夏裸カ冬襦袢、偶に杵もたげぬる力を本銭として、稼ぐに追付貧乏なしとて、九尺のかやに雨をしのぎ給る、 協賛とてもやる人のなけれは、遺ふべきすへをしらず、をのづと殖行銭をつくくかkなへ見る、小身につく物ほとの宝あらしと、此夜着ふとんをとゝのへいねかへり臥まろひ、長の夜を心もなしにあかし、鼠はへんと声かけ樒(しきみ)をお花と月はたんご喰ふ事とはかり知る、一生臼を巡て日を送り余意もなし、死後に心も匂ひ也といふを聞て、思はす雀踊してうれしかりしか、けふ伊賀は翁(芭蕉)のふる里なれは、杖曳給ふ事年有、残らすそうよとの語を聞に、そゝろに有かたき惣米真人、今しいかなる国にいまそかりけるにや お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年09月27日 05時18分48秒
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