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2021年09月28日
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カテゴリ:山口素堂資料室


​『魔詞十五夜』(まかはんや)

 素堂三十三回忌追善集中 黒露編​




  素翁の常談無二の交り深き物から此等の草も傅来して、

其真跡九皐子の許に有しを、
  虫はみし処々のまゝに慕(シキウツシ)す、

けふ亜父の恩報セんに、はし立て及ふへからす、
  山高く海深し、

千峰と仰き、直下と見おろす其館し奉る事は、暫く置て、

世に言傅ふ恩を仇にて報一ス、
  今一個の身の上に、せめ来れり、

清名を穢す事、あまた度なれど、

生涯露ほとも、腹たち給ふ機をたに不見、

吾舅氏なから、実に温柔和客の翁也し、

学は抹香斎先生の高弟、

和歌は持明院殿の御門人なと、和温の方に富とやいはん、

折にふれて、花のもと、月の前に扇とって、一さしを奏でつ、

舞曲は宝生良将監秘蔵せし弟子、入木道の趣、

茶子の気味は、葛天氏の代のすき者也と、拝し給ひし、

あるは又、算術にあく迄長し給ひけるも、隠者にはおかし、

閑なる秋の夕には琵琶を弾し、

平家なと懇に趣かれたるは、寂しかりし、

一生飯たくすへをしらす、老後至て貧に、

又極て簾、

如月末の頃のぼう鱈を堅手のたこと自称して賞味せられし、

あるは古硯を愛し、蓮池を慰す、

折にふれたる遊ひ、数多有へけれと、

何ひとつ是をと甚しき事はせさる人也、

ある高貴の御家より、高録をもて、召れけれとも不出して、

処子の操をとして終りぬ、

いひつゝくるほと、事々をかさり立たるやうに成行や、

ゆきゆきて五十過る秋迄に、生てけふにあへるをは、

苔の下にもさそ浅ましういふかゐなくおほすらん、

住所さへ定め得す、

水無月の流れて、行年の有明もありとたに、

人にしられぬ身のほどよ、

今月今日比夕部、古塚の苔を洗ひて、

かく新夕に尺にさえたらはぬ石を積みて、

しるしを建、野花一炷の細き心さしをいとなむまなひをす、

誰かいふ無名は天地の始とや、

被夫無何有の郷にいまそかりけるもしらすかし、

今やただ、比谷中の感応寺の片かけにとばかり、

知る人もなく、名さかもたゝぬかつしか(葛飾)の、

其まゝの素堂かおきつき所か

 

正当八月十五夜  黒露






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最終更新日  2021年09月28日 11時29分00秒
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