カテゴリ:山口素堂・松尾芭蕉資料室
貞享4年(1687)秋。素堂 蓑虫記、46才 蓑虫蓑虫。偶逢園中。 蓑虫々々。偶逢園中。 蓑虫々々。落入園中。 従要侵雨。瓢然乗風。 一糸欲絶。寸心共空。 笑蟷斧怒 無蛛糸工。 似奇居状。無蜘蛛工。 白露甘口。青苔粧躬。 白露甘口。青苔粧躬。 天許作隠。我憐称翁。 従容侵雨。瓢然乗風。 栖鴉莫啄。家童禁叢。 栖鴉莫啄。家童禁叢。 脱簔衣去。誰識其終。 《俳句文学館蔵》 蓑虫々々。偶たま園中に逢ふ。 従要として雨を侵し。瓢然として風に乗る。 斧の怒りを笑ひ。蛛糸の工み無し。 白露口に甘しとし。青苔にて身を粧ふ。 天許して隠と作し。我憐みて翁と称す。 栖鴉は啄む莫れ。家童に叢むることを禁ず。 簔衣を脱して去る。誰か其の終るを知らん。 《詩文》 蓑虫々々、声のおぼつかなきをあはれぶ。 ちゝよちゝよとなくは、孝に専らなるものか。 いかに伝へて鬼の子なるらむ。 清女の筆のさがなしや。 よし鬼なりとも瞽叟を父として舜あり。 汝は虫の舜ならんか。 蓑虫々々、声のおぼつかなくて且つ無能なるをあはれぶ。 松虫は声の美なるが為に籠中に花野をなき、 桑子は糸を吐くによりかろうじて賎の手に死す。 蓑虫々々、無能にして静かなるをあはれぶ。 胡蝶は花にいそがはしく、 蜂は蜜をいとなむにより、往来おだやかならず。 誰が為にこれおあまくするや。 蓑虫々々、形の少し奇なるを憐ぶ。 わづかに一滴を得ればその身うるほし、 一葉を得ればこれが住み家となれり。 竜蛇の勢ひあるも、多くは人の為に身をそこなふ。 しかじ、汝が少し奇なるには。 蓑虫々々、玉虫ゆゑに袖ぬらしけむ。 田簔の島の名にかれずや。 生けるもの誰かこのまどひなからむ。 鳥は見て高くあがり、魚は見て深く入。 遍照が簔をしぼりしも、ふづまを猶忘れざるなり。 蓑虫々々、春は柳につきそめしより、 桜が塵にすがりて、 定家の心を起こし秋は荻吹く風に音を添へて寂蓮に感をすゝむ。 木枯の後は空蝉に身をならふや。殻も躬も共にすつるや。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年11月18日 12時03分38秒
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