テーマ:レンタル映画(818)
カテゴリ:日本映画
側にいることが、
普通のことだったのに。 秋津高校にクロはいる。 ヒョイヒョイヒョイとはねるように その犬は学校の隙間を歩く。 犬嫌いの草間先生が、 大層、オカンムリのようだが、 クロはすっかり校長先生になついてた。 1960年代、長野県松本市。 学生たちは現代よりも生真面目に見える。 高校三年生の亮介も、 自分の進路だけじゃなく 目前にひかえる学園祭やら、 友人と同じ女の子を好きになったりと、 残り少ない十代を彼らしく生きていた。 出会いとは不思議なもので、 亮介が登校途中に、クロに弁当をあげなきゃ クロも学校に来ることはなかった。 それ以上に、亮介と並んで、 西郷隆盛の犬役で学園祭に登場、 学校に伝説を残すことなんてなかった。 彼女の気持ちなんてわからないが、 学校の生徒達の喝采や、 古い校舎の、なんとも言えない空気や、 入学と卒業を繰り返し、 彼女を通り過ぎてゆく生徒達を ともに居ることが、普通になったのだろう。 クロの普通は、 山の中にあった民家に住む 小さな女の子と一緒だった。 けど、女の子の家族は引っ越してしまった。 一緒だと思っていたのだ。 側にいることが、普通のことだと。 亮介と雪子、そして孝二。 三人は一緒に映画に行く約束をした。 でも亮介は、風邪でいけなかった。 孝二は雪子に、告白をし、 戸惑う彼女に、 自分への気持ちがないのを察し、 マフラーを彼女に渡してバイクで立ち去ってゆく。 だが、若い命は交通事故で消えてしまった。 一緒だと思っていた。 つい、そばに、普通にいたのだ。 亮介にとって、友達であり、ライバル、 雪子には、彼の告白が重く、のしかかる。 クロが遊んだ女の子とは、 もう、会えないのだ。 学校の用務員室に住みつき、 用務員さんといっしょに見回りをするクロ。 10年もの長い時間がすぎて、 用務員さんにとっても、 クロがいることが普通になっていた。 生徒たちにとっても、 クロがいることが普通だったのだ。 クロがいたから、 孝二の死を乗り越えた雪子。 亮介は獣医になり、重病のクロを手術した。 クロがいたから、 二人は、自分の心というものを知る。 側にいてくれる存在は、 自分というものを 包んでくれていたのだ。 その温かい存在が消えてしまって、 やっとわかる、淋しさもある。 お弁当の出会い、 西郷隆盛の犬役で大活躍、 用務員さんとの思い出、いろいろ。 新しい生徒たちを別れ行く生徒たち。 見送るのも見送られるのも、 いつも順番である。 さよなら、クロ。 死という別れは、いつか、やってくる。 彼女を見送った亮介と雪子は、 新しい幸せを見つけようとしていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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