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カテゴリ:日本映画
歴史は止まることなく。
現在を通過し過去となり、 現在から、まだ見ぬ未来へと続く。 いつも人は、紛れもなく、 自分の「時代」の中で生きている。 現代の消失が進んでいた。 ポッカリ空いた渦は虚数の闇「ホール」。 いずれは60億の人間を飲み込むもの、 それは、陸上自衛隊が秘密で行った、 人工磁場発生器の実験にあった。 神崎怜二尉による判断ミスで機器が暴走、 的場一佐たち隊員が戦国時代へタイムスリップ。 彼らの歴史への介入が、 平成の「現代」を浸食していたのだ。 そこで的場たちの救出と、 歴史の修正を目的としたロメオ隊が編成、 かつて的場の部下だった鹿島も合流し、 再びタイムスリップを敢行する。 時は1549年。 的場一佐たちの事件の2年後である。 戦国の世にそびえる天母城。 城であり、要塞であり、工場でもある。 的場一佐たちはそこにいた。 彼は織田信長になっていた。 若き戦国武将、織田信長を殺して、 織田信長と呼ばれるようになった的場一佐。 そして、もう一人、 彼らと入れ替わるようにはじきだされたのは、 斎藤道三の家臣、飯沼七兵衛。 2年の歳月を得て鹿島たちと戦国時代へ帰還する。 彼こそが最後に織田信長になる。 物語の符号は、「織田信長」にある。 的場一佐の信長は、未来を消し去ろうとする。 優秀な自衛官が、現代で生きる場所をなくして、 戦国の世を生き、平成の現代の抹殺を計る。 飯沼七兵衛は、現代を見聞し、 平成という未来というものの意味を知る。 未来とは人の世の望み、だと。 だからこそ、 戦国という時代を託される。 時代というものは、 その時代を作ろうとする人間のもの。 平成の現代を生きる60億を救おうと、 戦うはロメオ隊、鹿島、神崎たち。 自分たちの時代にあるものを それぞれに、必死で守ろうと奮戦する。 タイムスリップにあるパラドックスを、 軽妙にうち破ってみせる意欲作。 歴史の登場人物たちを史実に沿わすのではなく、 時代における「役割」として捉えている。 だからこそ、七兵衛には濃姫とのロマンスがあり、 天下が好きな蜂須賀小六の息子は、 木下籐吉郎と改名し活躍する。 そうして歴史を修正にきたロメオ隊と協力し、 的場「織田信長」に戦いを挑む。 原案は、半村良だが、 原作は、福井晴敏となる。 福井氏の小説らしい魅力的な人物描写と、 現代に揺さぶりをかける構造が見られる。 「生きる」意味を忘れがちな現代、 彼が作り出す敵役は、 現状を全て、破壊しようとする。 破壊されてもいいのか、と問いかけてくる。 ロメオ隊隊長の森三佐が、 平成の現代を体現してみせる。 戦国の世にあって、実弾を装填せず、 その実弾は的場たちを排除するために使うという。 現代という時代に忠実だった男は、 戦国の世に誰も殺さずに死んでいく。 だが、殺す側となった鹿島たちも、 絶えず、葛藤を見せ続けている。 手塚昌明監督作品。 映画の壮大さを過度に演出せず、 これまでのキャリアを生かした、 人間がぶつかりあう迫力を見せてくれる。 SFでありながらもドロくささを残した、 汗の見える作品になっていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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