攻撃さえされなければ
彼が覚醒することはなかった。
ずっと、ホーガス少年の友達でいられたはず。

1957年、ソ連の人工衛星スプートニクが
初めて地球の周りと回った年。
鉄の巨人は、空から落ちてきて、
頭を打って本来の目的を忘れてしまった。
ホーガス少年が出会った彼は、
無垢な小動物のようでもあった。

不遇のアニメと呼ばれるほど、
傑作の評判と同時に興行成績の悪さが伝わる。
日米とも同じ反応だというのも珍しい。
あながち、絵のせいだけとは言えないだろう。
「Mr.インクレディブル」の
ブラッド・バード監督作品。
吹き替えにも、ヴィン・ディーゼル、
ジェニファー・アニストンが参加している。
アイアン・ジャイアントのデザインは
ジョー・ジョンストン監督、
「ロケッティア」「ジュマンジ」が有名。
少年と鉄のロボットの心の交流、
そして、冷戦を絡ませ、社会が二人は引き裂く。
悲劇でもありながらも、
希望の残るラストシーンと、
直球勝負のストーリーに見えるが、
脚本は、細やかに練り上げられている。

アメリカ、メイン州の小さな町、ロックウエル。
クルマやアンテナなど、鉄製のものが、
変な感じでカジられる事件が発生する。
単身、謎を解決すべく乗り込むホーガス少年。
犯人は、鉄を食べる巨人、アイアン・ジャイアント！
でも、どうも、憎めない奴なのだ。
無垢な小動物のように彼をのぞきこみ、
なんでもかんでも真似をする、くしゃみまでも。
水のドブーンと一緒に飛び込んだりする。
一緒に、笑いながら行動できれば、
子供はすぐ、友達になる。
森の芸術家さんを交えて、愉しい日々が続く。
でも、長くは続くかなかった。

鋼鉄の巨人は、社会の脅威。
アイアン・ジャイアント
忘れられてきた記憶が甦る。
攻撃されれば、攻撃しかえす特性。
優しくホーガス少年を見つめていた彼が、
まるで別の破壊兵器となる。

でもアイアン・ジャイアント、彼は。
攻撃をしない人間を知っている。
友達でいてくれたホーガス少年を知っている。

攻撃さえされなければ、ずっと、
ホーガス少年とは友達でいられたのだ。
ずっと友達でいたいから、
だからアイアン・ジャイアントは、
自分に向けられた核ミサイルに向かっていく。
言葉はなくても、
その気持ちが伝わってくる。

哀しい顔のホーガス少年。
だが、この作品は悲劇で終わらない。
辛い別れではあったが、
またいつか会えると、思わせてくれる。
二度と同じ過ちを繰り返さない限り。


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