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カテゴリ:アメリカ映画
トリップ教授が
7年前から書き始めた小説。 2611ページにもおよぶが、 まだ完成しない。 グレイディ・トリップ教授。 かつて文壇の寵児と言われた作家。 彼の代表作は「放火魔の娘」だけ。 くたびれて、ポチャッとした、 田舎町の大学の文学部の教授は、 妻に家出され、不倫相手の学長が妊娠し、 書く続けた作品は支離滅裂で、 スランプのトンネルから 抜け出せそうな気配は微塵もないようだ。 おもしろいもので、 若い頃の成功、いや、単に過去の成功は、 維持していないと負担になる。 作家だった彼には編集者がいたし、 作家仲間なるものもいる。 もし、彼が趣味で2611ページも、 支離滅裂な小説を書き続けていたら、 ただの酔狂な親父でしかなかっただろうに。 どうしても作家として扱われる。 なまじ、成功の美酒を知っているから、 自分が一番、不甲斐なさを感じているようだ。 当然、麻薬にも手を出している。 風変わりな作品である。 スランプを抜け出すストーリーでなく、 どんどん、ドロ沼に追い込まれるトランプ教授。 そして、ドロ沼の中で七転八倒しながら、 やっと地面の感触を得る。 彼をドロ沼に追い込む役割を果たすのは、 ジェームズ・リアという学生。 学長の飼い犬を銃で撃ち殺してしまう。 その犬は不倫相手のトリップ教授が嫌いで、 いつも吠えまくり襲いかかっていたけれども。 おまけに学長ご自慢の マリリン・モンローのブラウスを 盗み出してしまう始末。 ただ、全ての行動をジェームズは、 見事過ぎる嘘で解説してみせる。 その虚言癖はジェームズの、 「文才」に裏付けされていたりする。 カーティス・ハンソン監督作品。 音楽、小道具など、センスの良さを感じさせる。 マイケル・ダグラスがスランプで右往左往する。 トビー・マグワイアは虚言に淋しさを秘め、 共演者を攪乱しつづけている。 平坦なエピソードが、シニカルに積み重ねられ、 やがてそれが日常に近づいていく。 2611ページ続いたトリップ教授の原稿。 それだけ続いた彼のスランプ。 彼が見つけた出口は、ドラマでもなんでもない。 ただジタバタしているうちに、 足を地面につくことを確認しただけ。 スランプ教授だけでなく、 ジェームズもそう、みんな、そう。 天才も、普通になる。 だが、普通が愚直とも限らない。 2611ページは、飛び散り、 新しい原稿が綴られていくのだ。 まずは、歩いていく、 歩いていけるのだから。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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