夢の中、幻想、空想の世界。
丹念に作り込まれた映像はファンタジー。
作り込まれた、渾身のセットに、
芸術的なカメラワーク。
王女や妖精が優雅に舞い、
ドワーフやゴブリンが闊歩する。
当然のように魔王は、
世界の支配を企む。
1985年リドリー・スコット監督作品。
22歳のトム・クルーズの笑顔がある。

遊びたいさかりの王女リリーは、
また森で遊んでいる。
現れたのは、森の青年ジャック。
土まみれの装束だが、
綺麗な瞳、無邪気な笑顔を見せる。
リリーは指輪を池に投げて、
とってきた男性と結婚するという。

キラキラと光がこぼれる森。
美しい、幻想の森。
その森が暗黒に変わったのは、
世界を支配しようとすた魔王の陰謀と、
王女リリーの好奇心のせいだった。
森を知るジャックは、
愛するリリーに「とっておき」を見せる。
2対の美しい純白のユニコーン。
その額には、長い角が伸びていた。
触れてはならないと言われていたのに、
美しいものに触れたくなるのは、
止められない衝動だった。
その瞬間、魔王の手下の吹き矢が
ユニコーンを射止めた。
魔を制御するユニコーンの角は、
失われてしまった。

光の森が暗黒に変わる。
吹きすさぶ冷気が、世界を凍らせる。
リリーは負い目のために、
魔王のもとへと向かうが、
逆に魔女に操られ魔王の妃にされてしまう。
ジャックはリリーを救うため
個性豊かな妖精たちとともに、
魔王のもとへ向かう。

リリーを演じるミア・サラは、
指先を伸ばし、軽く飛ぶように歩き、
ファンタジーのお姫様らしく、
美しく可憐である。
若きトム・クルーズが魅力的なのは、
言うまでもないだろう。
ファンタジーの主人公に相応しい二人である。
パックや、ガンプなど妖精たち、
演じる役者が、本当に巧い。
バレエやダンスの素養まで感じさせる。
特殊メイクで表現される魔王が、
CGにはない迫力と雰囲気をかもしだす。

魔王は太陽の光に弱い。
ジャックたちはチームワークで、
陽の光を食器を使って取り込んで、
魔王に勝利する。
森は元の姿を取り戻し、
ジャックは池に飛び込みリリーを指輪を得る。

夢の中、幻想、空想の世界。
リドリー・スコット監督の緻密さは、
他のSF作品同様に、この作品にも生きている。
光であれ、闇であれ、ファンタジーは、
現実に通じる隙間があってはならないのだ。
例え、映像の技術が進歩しても、
幻想を再現するのは、
人の感性なのだと感じさせてくれる。

キラキラと光こぼれる森、
美しい主人公と、陽気な妖精たち。
しばし、夢の時間を。