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カテゴリ:日本映画
人を助けることのできる
優しい人間になりなさい、は 母の遺言のはずだった。 父が語る母は、線の細い薄幸の女性で、 あえなく亡くなってしまったはずだった。 だから細谷伸一は医者になろうとした。 なのに、母は生きていた! つい最近まで、女子プロレスの社長として。 柔道からプロレスに転向したアイアン飯島、 彼女はチャンピオンになり、 引退後は女子プロ団体「ガリンペイロ」を設立。 だが、病には勝てず、息子に全てを託し、 望み通り、リングの上で息を引き取る。 伸一は「ガリンペイロ」の選手たちに 半ば拉致され、社長にされてしまった。 早朝より練習を始める選手達に、 伸一は眠そうに言う。 「どうして、そんなに練習するの? どうせ、八百長だろう」 とんでもない。 女子プロレスラーを演じる役者たちは、 受け身の練習でも、身体ごとマットを打ちつける。 カメラは嘘偽りのない音とともに、 そのままの姿を捉えている。 トップクラスの選手の試合のシーンも、 リングロープにはじけ、 その勢いのままワザが入る。 コーナーから飛び降りた選手を 身体全体で受け止める場面も多い。 伸一は、新人の桐島に恋心を抱きつつ、 選手たちの真剣さに引きずられていく。 ところどころに細かい笑いを入れ、 選手たちの個性も、生かされている。 迫力のプロレスシーン。 吉本女子プロレスJ'dによる アクション女優を育成するプロジェクト 「アストレス」たちの活躍が大きい。 拙いが彼女たちの真剣な芝居と、 細谷伸一演じる岡田義徳の演技の巧みさが、 面白いコラボレーションになっている。 映画全体も、洗練はされていないが、 役者たちの化学反応で、 ラストに向かい強い熱気を帯びてくる。 女子プロの団体は多いそうだ。 だが、興行面では苦難を強いられている。 「ガリンペイロ」も火の車だった。 その上、金も持ち逃げされる。 窮地に陥った伸一は、 大手「Jリング」の申し出を受ける。 それは人気ダッグ、桐島×中島コンビの移籍と 彼女たちのメインイベントの八百長試合だった。 だが二人は、勝利してしまう。 そして、今度は伸一ともども、 本物の試合をしようと挑発する。 「Jリング」のトップクラスは 桐島×中島コンビでは、まるで歯が立たない。 伸一は母の遺言を思い出す。 プロレスを格闘技という人がいる。 プロレスを八百長という人がいる。 だが、プロレスというのは、 立ち向かっていく、ということなのだと。 自分より強い壁があれば、 倒されてもマットから這い上がり、 勝利を掴むまで立ち向かっていけばいい。 完全にリングに沈んだ桐島×中島コンビに、 伸一はマイクを握り、叫んでいた。 立ち上がれと、叫んでいた。 そして、三人は、人差し指を頭上に掲げる。 もう一回! もう一回! 母は伸一に、 プロレスを観て欲しいと言った。 プロレスを格闘技という人がいる。 プロレスを八百長という人がいる。 だが、プロレスというのは、 立ち向かっていく、ということなのだと。 ガリンペイロとはスラングで、 金鉱を発掘する人のことを言う。 ブラジルやスペインの地名が上がっていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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