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カテゴリ:香港映画
死を目前にした老教授のために
教え子である医者は彼の望みを叶える。 「女に抱かれて眠りたい」 医者は教授の願いで病院から連れだし、 知り合いの娼婦に彼を託す。 香港島・燈篭州街。 ビルの谷間は、猥雑な裏街。 屋台が建ち並び、娼婦やチンピラがたむろする。 そこに医師の看板を掲げるのは、 劉文こと、マック・ラウ先生。 かつては大病院の研修医を勤めていたが、 今は白衣を着なければ医者とはわからぬほど、 ボサボサ頭に無精ひげの男である。 トニー・レオンがにこやかに、 親しみのある笑顔を街の人々に投げかける。 日本の漫画が原作である。 暖かい表情をするトニー・レオンに、 ずっと引き込まれる作品でもある。 そして、彼にはジャズがとてもよく似合う。 1995年、リー・チーガイ監督作品。 哀しい運命を持つ娼婦や、 愉快な性格の警察官、大金持ちの令嬢、 出世にしか興味のないエリート医師など、 多彩な人物がラウ先生を取り囲む。 喜劇でありながら、流れる音楽はジャズ。 乱雑に物語りは進んでいく。 地位のある男と普通の少年が負傷した。 ある医師は迷わず、地位のある男を手当する。 その男を助ければ、トクをするのは見えている。 だが、ラウ先生は少年を手当した。 迷わず、少年のために、手当した。 医は仁術という。 仁術とは他人に対する思いやりの心、 思いやりとは、他人に気を配ることを言う。 ラウ先生は、恩師の老教授に娼婦を紹介した。 余命いくばくもなかった教授は、 何もしないまま女性の横で息絶えた。 「女に抱かれた眠りたい」 その死は、彼の望みに近かったはずだ。 手厚く治療が施され、その果てに、 病院のベッドで死ぬことを望んではいかなった。 人を思いやることは、時に常識と覆す。 だが、子宮の病を持つ娼婦の心の傷をも、 ラウ先生は包み込んでいたようだ。 それでも、だ。 助けられないときがある。 いくら思いやることができても、 助けられないときがある。 だがら、ラウ先生は、等しく助けようとする。 出世を願えば、裏街ではなく大病院がいい。 娼婦を診るよりは、地位のある者を診ればいい。 だが、彼は燈篭州街にいる。 実は、ラウ先生の免許は英国植民地のアフリカのもの、 その国が独立したので、香港での免許は失効である。 だが免許など関係ない、この裏街の人々には、 ラウ先生こそ、医者だったのだ。 出生を願う医者は、地位のある者を助ける。 だが、医は、他人を思いやること、 無精ひげがだらしないラウ先生だが、 彼はそのことをかたときも忘れないでいた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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