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カテゴリ:アメリカ映画
与える愛がどれだけ深くても
等しく戻ってくるとは限らない。 どれだけ想いが強くとも。 人生もまた同じだ。 どれだけ想いが強くとも、 栄光がもたらされるわけもなく。 だが、願うのだ。 マギー・フィッツジェラルド、 彼女にはボクシングしかなかった。 31歳は若くない。 しかも正式なトレーニングを受けてない。 それでも彼女にはボクシングしかない。 一直線に生きる彼女は、 躊躇なくフランキー・ダンに直接交渉する。 「私のトレーナーになって」 にべもなく断るフランキー。 だが彼女は会費を前払いして、彼のジムにいた。 燃えるような強さでサンドバックをたたいていた。 フランキー・ダン、 ボクサーが試合で受けた傷を治すカットマン。 そして、最高のトレーナー。 だが、マネージャーにはなりきれない。 伸び盛りのボクサーも、 タイトル戦となると 再起不能のリスクを負う。 フランキーはいつも、 タイトル戦のタイミングには慎重だった。 しかし、それはボクサーにとっては、 チャンスを逃がすことでもある。 また一人、優秀なボクサーがジムを去る。 彼はチャンピオンになっていた。 私の名はスクラップ、と、 モーガン・フリーマンは静かに語る。 フランキーのジムの雑用係、以前はボクサー。 彼が語るのは フランキーとマギーの物語。 「愛する人よ。あなたは、わたしの血だ」 マギーはフランキーを得て、連戦連勝。 彼女よりも若く、経験も豊富なボクサーを 多くは1ラウンドでマットに沈める。 そしてフランキーから贈られた 試合用のガウンをはおり、 運命のタイトル戦のリングへマギーは向かう。 観客は、ガウンに記された刺繍の文字、 「モ・クシュラ」と叫んでいた。 マギー・フィッツジェラルド、 彼女にはボクシングしかなかった。 マギーの過去を全部背負って、 ヒラリー・スワンクは、強く鋭いパンチを出す。 フランキーの過去を全部背負って、 クリント・イーストウッドは彼女を守る。 技術だけでなく、愛も無限に与えて。 だが、フランキーは知っている。 ボクシングの栄光は、 想いの深さだけで得られるわけじゃない。 それでも、願うのだ。 愚かな結果になろうとも最後まで、と。 悔いることなく、生きるために。 どれだけ愛しくても、 どれだけ愛しくとも。 フランキー・ダンは決断を下した。 クリント・イーストウッド監督作品。 観る者にブレを許さないと思えるほどの。 シンプルで骨太なストーリー。 強く激しい魅力を持つ女優を得て、 完成度の高い作品に昇華したと感じる。 独特の静寂が、ギターを絡み合う。 それだけ想いが強くても、 悲劇の人生が訪れることがある。 だが、頭ではわかっていようとも、 願わずにはいられないのだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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