カール・チルダースは、
機械の修理が上手かった。

アメリカ南部の田舎町、アーカンソー。
静謐な緑が揺れている。
カールは州の精神病院を出て、
生まれ故郷に戻ってきていた。
母親と母親の情事の相手を、
スリング・ブレイドで殺した過去は
決して消えることはなかったが、
知恵遅れだった彼は、
長い間病院に入れられていた。
その間に文字を覚えて、
聖書を何度も読んでいた。
かつて彼の母親は彼に、
聖書を読み聞かせてくれたという。

ビリー・ボブ・ソーントンが
脚本・監督・主演をこなす。
猫背で受け口、喉をずっと鳴らして、
朴訥な口調の男を演じている。
他の映画で見せるワイルドさは微塵もない。
素晴らしい演技を堪能する。

だが、病院を出たところで、
カールには行くところがない。
所長の口利きで機械修理を仕事を得た。
しかし何をするわけなく、町を彷徨っていると
４つの洗濯袋を引きずる少年と出会う。
「そのしゃべり方、好きだよ。」
父親のいないフランクは、
カールという存在を欲していたように、
一緒にいてほしいという。
カールは、フランクの家で暮らしはじめる。
ただフランクの母親には、ドイルという
横暴で偏見に満ちた恋人がいた。

カールは機械修理が上手かった。
本当になんでも修理してしまっていた。?

もう直しようもない、カールの実の父親、
ゲイであるフランクの母親の上司は、
田舎町で暮らす辛さをこぼすが、
その暖かい気持ちをカールは知っていた。
だがフランクの家族を壊すドイルを直す方法は
やはり見つからないようだった。

自分に優しくしてくれた人のために、
大好きな友達、フランクのために、
カールは再び、凶器を手にした。
それが罪だということはわかっていても。

子どもは知ってはいけない、と
カールは時折、自分の過去を隠す。
大人はそういうことから子どもを守るべきだと。
汚い言葉を使ってはいけない、とも彼は言う。
そして彼は覚えたての文字で、
君はきっと幸せになれるだろう、と
フランクにさよならの言葉を残す。

人を殺すことは罪なのだ。
罪ではあるけれどもカールは凶器を手にした。
きっと、ではあるが、
彼はフランクの家族を直したかったのだ。
自分の家族のように修復不能にならないように。