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カテゴリ:アメリカ映画
Murder in the first
ヘンリー・ヤングは刑務所で、殺人を犯した。 手に握ったスプーンで殺したのは、 かつてその刑務所の脱獄を試みたとき、 彼を裏切った男である。 1941年、アルカトラズ刑務所、 ヘンリー・ヤングは25年の重刑だった。 その上に脱獄囚としての罪が加わり、 「地下牢」と呼ばれる独居房に、 3年間閉じこめられることになるのだが、 それは法で決められた最大19日間を超えた 人権を無視した刑務副所長の個人の判断だった。 そもそもヘンリー・ヤングがアルカトラズに来たのは、 わずかなお金を盗んだ罪である。 ヘンリー・ヤングの物語は、 殺人の罪を負った彼を弁護することとなる jジェームズ・スタンフィル弁護士の言葉で綴られる。 まだ24歳の若い弁護士の初仕事なのだが、 サルでも出来る仕事と上司に言われもした。 だがジェームズは気づいてしまった。 幼い頃に両親を亡くして、 妹を食べさせるためにわずかなお金を盗んだが、 そこが郵便局だったために罪が加算されたのである。 その上に、 時代背景が重なる。 アル・カポネを収監したアルカトラズ刑務所、 だが、大物の犯罪者がそういるわけもない。 空き部屋にはヘンリー・ヤングのような男も 収監されるような羽目になったのである。 そう、刑務所が殺人者を作った、のだと。 ヘンリー・ヤングもまだ28歳だった。 彼の居る鉄格子の中に入ってきた若い弁護士は、 弁護士であるとわかっているようだが、 それ以上に話し相手であって欲しかった。 なにせ、3年間薄汚い「地下牢」にいて、 蜘蛛を見つけた時はやっと友達が出来た、と思ったほどだ。 野球の話をしようとした。 トランプをしようと誘った。 弁護士は彼を救おうと必死に証言を求めるが、 そんなことよりもジェームズの上着の 女性の香水の匂いの方が気になるようだった。 もちろんだ、彼は女性を知らない。 ずっとアルカトラズ刑務所の中にいて、 3年間も「地下牢」にいて そのまま「殺人者」となってしまった。 冒頭から力強い映像がながれる。 「地下牢」にいるヘンリー・ヤング、 真っ裸の彼を真上から見下ろすショット。 副刑務所長の陰湿な苛めと為すがままのヘンリー。 フィクションの力強さもさることながら、 マーク・ロッコ監督の映像は本当に力強い。 いままで観た幾つかの名作の持つ力強さが重なり、 しかも軽妙なエピソードも交えて暗さを取り除く。 ジェームズはヘンリーのために、 記者を偽り、女性を金で買って連れてきた。 猶予はたったの4分間。 だが初めてのヘンリーは上手くいかない。 問題作であるはずが、 ヘンリーの人柄を丁寧に描きだし、 悲劇であるはずが清々しい感動を与えてくれる。 ヘンリーとジェームズの友情の物語でありながら、 後半はスリリングな法廷劇の様相を呈する。 ジェームズは刑務所を告発し、 ヘンリーを勝利へ導びこうとしていた。 だがヘンリーが勝利を受け入れない。 裁判が終われば、ジェームズとは別れることになる。 有罪ならガス室だが、無罪なら刑務所へ逆戻り。 あの刑務副所長は健在である。 しかし最後の最後にヘンリーは自ら戦うことを選択した。 戦って勝利することを選択した。 その選択が悲劇をもたらすのだけれども。 1995年の作品。 ケビン・ベーコンは見事な演技である。 クリスチャン・スレーターも若々しく魅力的だ。 刑務副所長にゲーリー・オールドマン、 短い出番だが憎々しいまでの存在感である。 ヘンリー・ヤング、彼は、 3年もの間、閉じこめられても 正気を失わず、強くあり続けた。 ヘンリー・ヤング、彼は、 刑務所という権力と戦い、勝利した。 罪は罪である、償うべきものであり消えやしない。 だが戦って勝利したことは誰も奪えない。 戦わず負けもせず、何も残らない人生ではなく、 誰も奪えない勝利を手にして彼はアルカトラズで没した。 そして彼の戦いがきっかけで、 アルカトラズが閉鎖に追い込まれたとされる。 ヘンリーはわずかなお金を盗んで捕まった。 ヘンリーは、戦って勝利してアルカトラズを閉鎖に追い込んだ。 何かをすれば、何かの反動がある。 何かをすれば、何かの反動があるのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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