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カテゴリ:アメリカ映画
芸術とは
ここまでやることでもあるのだ。 芸術の定義は難しい。 だが広義の意味でなら 専門外の人間も論ずることは可能だろう。 空も雲もそして屹立した岩山も 風そよぐ穂先、またはスパルタの町並み、 何よりも堂々たる存在感も持つ レオニダス王が現れた瞬間、 スクリーンは一枚の絵画となる。 風景と人物の絶妙の配置。 飛び散る血の流れさえも全体と調和し、 遠近が世界を無限に広げる。 はためくスパルタ戦士の赤いマントと いとも簡単に胴体から離れる人の頭。 その戦いの向こうでも剣は人間の肉を切り裂き、 顔も見分けられぬ程のペルシャ帝国の大軍が 彼方からも絶えず押し寄せてくる。 芸術には奥行きがある。 敵と味方 善と悪、そして、生と死。 紀元前480年、 現代と重なる過去の時間、 芸術とは時を超越し、人を未知の場所へ飛ばす。 だが現代は決して消え去ることはない。 古の芸術作品を鑑賞するのは、 まぎれもなく現代を生きる者たちである。 アメリカで作られたこの作品は、 敵であるペルシャ帝国に痛烈な姿で表現する。 実際に台詞の端々には煽動ともとれる言葉が存在する。 芸術とは暖かく強く優しいものばかりではない。 無神経で傍若無人、 節度の欠けたものでもある。 だからこそ芸術とは金や権力といった世俗とは無縁で 無垢にもなりえるし感動を呼び覚ます。 時に、血腥く辛辣でもあり、 憎悪や皮肉の対象にもなりうるだろうが。 スパルタ戦士300人は、 まさにこの作品そのものを凝縮している。 敵の命を省みず、自分の命を省みず、 ただ国の未来と愛する者のためだけに戦う戦士たち。 最初の戦いには勝利しても、 圧倒的な大軍を前に抜け道を知られては 生きて国へ戻ることなど考えられない。 彼らには未来はないのである。 だが、最後まで己れの信念を貫き通した。 ザック・スナイダー監督作品。 フランク・ミラーの原作を 忠実に再現しようとしたという。 何もかも完全に再現するのは不可能だろうが、 完全に近づけれようした信念ははっきりと感じた。 この作品の映像はその信念の結集だろう。 戦士を顕在化した 役者たちもまたこの作品の重要な存在である。 彼らなしに「300」という絵画はありえない。 レオニダス王の存在感を 肉体と声で表現したジェラルド・バトラーは 確実に代表作を一つ増やしたことになるだろう。 テルモピュライでの決戦、 そこに至るまでのレオニダス王の葛藤も、 彼はしっかりと演じきっている。 信念は政治と金にひれ伏す。 だが貫き通した信念には後悔がない。 血にまみれ見返りもなく弾圧の対象にもなるが、 愛され記憶となり語り継がれることもある。 芸術とは信念を貫いた故の結果なのかも知れない。 貫くことは簡単ではない。 どこまでもどこまでも続く終わりのない道。 だがそれを求め、高みを目指す気概のあふれる作品には 自然と価値というものが生まれると思うのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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