「インドに行けば一生働かなくてもいい」
インド、インド、インドに行くには
一人だいたい、いくらくらい必要だあ?
猫だらけの家に住む猫じじいの猫を焼いて食べてるような
リョウスケ、カホル、ヒラジの三人組、
全く働いてないから、金銭感覚、まるでナシ。
(猫を食べていると申し上げましたが
猫を焼いているという残虐シーンはございません)
(ただし猫じじいの家の猫が一匹行方不明)
佐藤隆太が演じるリョウスケはいいとして、
緑のジャージ上下を小汚く着こなす、
温水洋一のカホルは25才であると言いだす。
二人の兄貴分のヒラジは
知る人ぞ知る初代ビシバシステムの緋田康人。
監督三木聡と温水、緋田の三人が原作のようなこの作品、
上映までは長い道のりであったという。
インドである、インド。
かといってリョウスケ、カホル、ヒラジが
目的をもってビッグビジネスに精を出すはずはない。
円筒型の郵便ボスト壊し、
郵便物の切手をはがして郵便局で換金。
そんなもんで稼げる金額は
微々たるもんである。
胡散臭い神の啓示もあってインドに行こうと
盛り上がったように見えて
盛り上がってやる気になるような三人でもなく、
多彩な登場人物が絡んでも
起承転結もなく物語は進んでいく。
トルエン中毒のチエミには
鍾乳洞が好きなヤクザな恋人ササキがいるけれど、
なんとなく同世代のリョウスケが気になってる。
リョウスケは花沢というまともなサラリーマンの友人に、
働けよと促されたりするけれども、
ハンバーガーショップのバイトは上手くいかなかった。
ちょっとボテトをオススメしたりできないのた。
インバさん。
インバさんは街の中に流れる、
汚い川にいつも裸でつかっていてニコニコしている。
インバさんの足はもう二本足ではなくて、
魚みたいになっていそうである。
インバさん、インバさん。
インバさんは昔、働いていたそうだ。
廃工場にある飛べないロケット。
リョウスケは秘密のスイッチをチエミに教える。
チエミは飛ばすにはトルエンと燃料タンクにぶちこむ。
ササキはそのロケットで飛ぼうとした。
小さなサンダル工場は
借金まみれになっていて
社長も従業員も起死回生を狙って
新デザインサンダルを考案しようとしているけど、
うまくいきそうな感じ0%。
働いていてもお金は貯まらない。
チエミにはタンクという友人がいる。
いつもタンクの上にいるセーラー服の美女である。
タンクはトルエン中毒で、
それで死んでしまった妖精のような女性。
いくら若くてもそやって命を落とす場合もあるんだな。
三木聡監督の世界のコネタを演じるのは、
なんとも豪華な俳優陣である。
あんなところにもこんなところにも、
有名どころから通好みの方々まで百花繚乱。
主人公三人組と実のある絡みかたはロクにしない。
なあんか一応インドには行くつもりの三人組。
伝説の男になるんだと息巻くゲシル先輩の便乗して、
銀行の金を強奪するのに参加する。
一応、そこんとこ、クライマックス。
なにせ、街の人(エキストラ?)も参加して、
登場人物も何人か参加して、
ヘン顔のイラストの紙袋をそれぞれカブリ、
ダダダダと金を手づかみで強奪して
街中逃げ回るんだからヘンな感じ。
目的意識、責任感、
そういうもんのないところにいる三人組。
なんのために生きてるのか、とか、
人生の意義をどうのこうの考えない作品である。
そのまんま、
その場を生きている。
天然。
インドに行っても行かなくても、
結果がどうあれ、
夜露をしのげる布団があればラッキーなのだ。
飛べないロケット。
廃工場にうち捨てられた飛べないロケット。
みんなそれまでの人生があって、
ジレンマを抱えているんだろうけど、
そういうストーリーは一切語られないのである。
猫を焼いてる場面がなかったように。
それにしても、日本という国は、
食べ物も生活必需品も結構捨てられているから
リョウスケたちの生活にリアリティがある。
インドに行こうとした三人組。
いつか行くかも知れないし、一生行けないかも知れない。
もしくは一生行かないかも知れないのである。
「ダメジン」公式サイト