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Jan 27, 2006
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カテゴリ:日々つれづれ
管理職になってからは、
私は仕事で窮地に陥ったときでも「ナメられてはいかん」と思い、
社内の誰かに相談するということはしなかった。…というか、できなかった。

数年前、私の部下の人事異動のことで、なんとも無理難題な采配があり、
私は部長達と正面からぶつかった。

けれど基本的にトップダウンの階層社会で、
私の主張が通る見込みはゼロに近かった。

トイレにでも篭って泣きたい気分になっているときに、
タイミングよく社長室に呼ばれた。

こーいうときは、いつもそうだ。
社長は「千里眼」なんじゃないかと思えるほど、
膨大な社員の下々まで目が行き届き、彼らの性質まで正確に見抜く。
誰が怠けていて、誰が勤勉なのかもちゃんと知ってる。
わざわざ外からスカウトされてきた社長だけに、常人とはかけ離れた観察眼。

私が部長達とモメている様子なんて、
きっと遠く社長室からでもフォースで感じ取ることができるに違いない。
(ジェダイマスターか?)

数少ない女性管理職として、目をかけてもらってるとはいえ、
「社長がなんとかしてくれる」なんて期待は全然なかった。
社長が一人の社員に肩入れしたら示しがつかないし、
特別な関係にあるのでは?なんて疑われてもお互いに困る。

だから私は、
「社長が部長達のやり方の方を指示するなら仕方ない、甘んじて受けよう」
…と思いつつ、社長室のドアをノックした。
開口一番、社長が言った。

「部長達ともめてるみたいだな。」

「あ、はい…。」(やっぱりもう知ってるし…)

「管理職になってからは、無理難題を言ってくる相手はどんどん出てくるだろう。
 これまでにはなかったような、理不尽なことも起こるだろう。
 そういう時に、どう対処すればいいのか…
 俺から言っておきたい事がある。」 


「ハイ…」

「図太くなれ。」

「…?!」

「たとえ周りが何を言っても、否定されても。
 君は、自分が『正しい』と思っていることを言い続ければいいんだ。
 図太く。何度でも。」


社長は私の目をまっすぐに見据えて、繰り返した。

「図太くなるんだ。
 『正しい』ことを言いつづけて、例えそれが通らなくても、
 言い続ける図太さが必要だ。」


いつものことだけれど、気迫に圧倒されてしばらく返す言葉がなかった。

「図太く」・・・って。。

いつも社長は「具体的な対処法」ではなく、「心構え」について語る。
そして私は考えさせられる。

きっと社長はこれまでの人生で、自分の主張が通らず、
どんなにか理不尽な目にも遭い、それでも『図太く』信念を貫き通してきたに違いない。
だからこそ今の彼があるんだろう。

社長は「部長達に従え」とは言わず、
かといって「君の主張が正しい」とも言わなかった。

どちらの味方もしないけれど、トップダウンを認めているわけでもない。
ただ社長は、私の「あり方」を諭した。
戦略もなにもない。
けれど、とにかく私はその言葉に背中を押された。

その後私は社長の言うとおり、
図太くも「正しい」と思うことを主張し続け…
結果的に、部長達は「半分」歩み寄った。

引き下がってトイレで泣いていたら、すべて部長達の都合のいいように物事は進み、
私はやる気を失ってしまっていたと思う。


この時は、あくまで中立を保とうとする社長の態度が、
ちょっとズルいような気もした。

でも管理職になって数年経ち、
今度は私が部下から相談事を受ける機会が増えてくると…
ああ言った社長の深い意図が、分かるようになった。

社長は、荒波に飲まれて溺れてる部下(私)を救い上げるのではなく、
泳ぎ方を教えてくれたんだ、と。

 社長である自分が仲裁に入るのは簡単だけれど、
 今後いつまでもそうやって守ってやるのは不可能だ。
 今そんな風に助けても、次の荒波でまた溺れてしまうかもしれない。
 それなら、「荒波の乗り越え方」を教える事が、最もあいつの為になる。


社長のそんな思いを、最近になってようやく理解して、
私は改めて社長に惚れ直し、その親心に泣きたいくらいに感謝した。

「図太い」という言葉には一般的にマイナスイメージがあるけれど、
社長のおかげでとてもいい言葉でもあることを知った。

管理職は図太くなくてはやっていけない。

自分が正しいと信じたなら、どんな障害があろうとも、
「その道を図太く貫け!」


これまで何度も、この言葉に助けられた。

社長は既に任期を終え、今はオーストラリアでリタイア生活を楽しんでおられる。
いつか会いにいって、お礼を言いに行こうと思う。





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Last updated  Jan 27, 2006 01:24:38 PM
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