分り易い糖鎖の説明
あらゆる細胞の表面には,超微量でも大きな役割をも
つ「甘くない砂糖=糖鎖」が無数に存在している。
タンパク質や脂質同士のコミュニケーションをとりもつア
ンテナ役を果たしている糖鎖の研究は,いまどこまで進ん
でいるのか。これから,どこまで広がるのか。
タンパク質や脂質の手足となり細胞同士の交通整理を行う
北極や南極など極地の海の水温は氷点下に下がります。私
たち人間がそこで泳げば,数分で凍死してしまうでしょう。
しかし,極地の魚が凍死することはありません。それは,
魚の体内に特殊な物質があるためだと考えられていました。
ただ,その物質は非常に微量で形も複雑。どのような構造
をもち,どのような働きをもっているかについては,長い
間,謎に包まれていたのです。
実は先月,私たちの研究室の学生が,その特殊な物質を分
子レベルで突き止めました。「不凍糖ペプチド」と呼ばれ
る糖タンパク質がそれです。この物質により,極地の魚は
低温の環境下で生き延びることができるようになります。
糖タンパク質は,「糖鎖」という物質の仲間でもあります
。糖鎖は,何も魚だけのものではありません。人間を含め
,世界中に生息しているいろいろな生物のほとんどがもっ
ています。「糖」というと,甘い砂糖を思い浮かべるかも
しれませんが,糖鎖は甘くありません。私たちの体内の細
胞表面に無数に存在しています。糖が鎖状に連なった糖鎖
は非常に複雑な構造をしており,超微量でも非常に大切な
役割を果たしています。
糖鎖は細胞表面に付着することでタンパク質や脂質の手足
となり,さまざまな相手とコミュニケーションを行います。
細胞同士の交通整理役となり,細胞と細胞が臓器や器官を
形成する時に大事な役割を演じるのが糖鎖なのです(図1)。
糖鎖研究は,遺伝情報がタンパク質へ翻訳された後の話で,
「遺伝情報の翻訳後修飾」という言い方をしています。翻
訳後修飾についてはさまざまな種類がありますが,「糖鎖
修飾」は非常に重要度が高い(図2)。タンパク質が糖鎖
によって修飾されることで,例えば先ほどご紹介した魚の
ように不凍活性など特異な機能を示すようになります。糖
鎖の成り立ちは,遺伝子の情報がダイレクトに伝わるタン
パク質とは,少々異なるというわけです。
●以上北大西原教授の新聞発表より抜粋
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最終更新日
2007年04月06日 11時04分41秒