「迷解剣客商売・61」
老いる、というテーマは、もっと先の話だったろう。小兵衛は90歳までは寿命があるという設定だ。だが、作者の池波氏の生命力が落ちてきていたらしい。まだ、小兵衛は66歳だ。そして、作者は64歳になった。主人公と作者の年齢が重なる。池波氏に何らかの感覚があったのだろう。小兵衛は、友の死で落ち込んだ。息子、大治郎に諭された。老いを、意識するようになった。若い頃、一度も勝てなかった剣客がいた。70歳を過ぎた、その剣客が暴漢に襲われた。間違っても、やられるような相手でもないのに。そして、助けた小兵衛の事も判らぬような状態だった。「強かった、あんなに強かった男が、年をとると・・・」それから、小兵衛は初めて、めまい、をおこすのだ。