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カテゴリ:判例、事件
「三浦元社長」の話を書いたら、突然あの人、自殺してしまいました。
この人の肩書きについては少し前にも書いたとおり、「元社長」と書かれたり「容疑者」と書かれたりしていましたが、自殺したことでアメリカでも今後は訴追手続が行われなくなり、そのため「容疑者」はヤメにして「元社長」という呼び名に統一します、と新聞にはありました。 と、呼び名の話はともかく…、 容疑者が死亡したら、その人を刑務所に送ることができなくなるので、刑事上の手続は終了します。 日本の法律では、刑事裁判中の被告人が死亡すると、公訴棄却といいまして、有罪とも無罪とも判断されないまま刑事裁判が打ち切られる(刑事訴訟法339条1項4号)。死んだ人はもはや裁く意味がないということなのでしょう。 たしか、ロッキード事件での田中角栄元総理もそうだったかと。 裁判になる前の容疑者(被疑者)の段階で死亡したら、どうせそのあと裁判に持ち込んでも公訴棄却で打ち切られるからということで、そこで捜査が終了することになります。 アメリカの法律は知りませんが、三浦元社長の訴追手続終了というのは、そういうことだと思われます。 たまに日本でも、「容疑者死亡のまま書類送検」という報道を聞きますが、あれは、警察は扱った事件を原則として検察に送らないといけないからでしょう。 手続上そうしているだけであって、実際の捜査は終了する。 そして書類送検を受けた検察としては、これを起訴しても上記のとおり公訴棄却されるだけなので、不起訴にした上で、然るべき内部処理をするのでしょう。 ところで、この事件については、「日本で無罪になった事件なのにアメリカで逮捕されるとは、日本の警察や司法はナメられている」などという論調が一部には見られました。 (たしか、警察と司法にずいぶんお世話になった鈴木宗男議員がそういう発言をしていたかと) 私はその指摘は全く間違っていると考えています。 詳しくは書きませんが、アメリカの裁判所が、「殺人罪については日本で無罪が出ているから逮捕状は無効」と明言していることからも、それは明らかです。 アメリカの裁判所も、日本の最高裁の判断を国際的に尊重せざるをえなかったのであって、日本に規定のない共謀罪というものを根拠にしてようやく逮捕が有効とされたのです。 加えて、容疑者を留置場の中で首吊り自殺することを許してしまったとは、ロス市警の大失態でしょう。 たしかに日本でも、留置場内で容疑者が自殺することはたまにありますが、これほど国際的に注目されている事件で容疑者が自殺してしまうということはなかったと思えます。 というわけで、法的には極めて興味深い論点を数々示したこの事件も、意外な終結を迎えることになったわけです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/10/13 06:55:14 PM
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