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カテゴリ:判例、事件
「涙ぐむ園児」との見出しに(産経16日夕刊)、何かなと思ったら、大阪府が道路建設予定地上にある保育園の野菜畑を撤去したとのこと。
保育園の野菜畑がある土地が、道路建設のために府に収用された。 府は保育園側に明渡しを求めてきたが応じなかったので、府がこれを強制的に執行したと。 府の態度を批判する向きもあるかも知れませんが、私にはなぜ保育園側がここまで事態を悪化させたのか、理解できません。 行政による命令に民間が従わない場合、行政自ら代わって執行できる。行政代執行法(ぎょうせいだいしっこうほう)にはそう決まっています。 土地の収用は土地収用法に基づいて行われているはずで、代執行に至るまでにも法的な手続を踏んできて、保育園側も意見・反論を述べる機会も与えられてきたはずです。 私は役人ではないので行政代執行に関わったことはありませんが、民事事件での強制執行に立ち会ったことはあります。 家賃を払わないから家を退去させられたとか、お金を返せないから家を差し押さえられたとかいう、あれです。 私は丸8年間、弁護士をやってきましたが、その間、土地や建物を明け渡せという強制執行の手続を取ったのは三回だけです。 最初に、裁判所の執行官と一緒にその場所へ行って、住んでいる人に「早く出ていかないと締め出しますよ」という警告をする。 それでもなお出て行かない場合は、所定の日がくれば明渡しを強行するのですが、私が経験したその三回はすべて、執行当日に建物はもぬけのカラになっている。 事前の警告に行ったときには文句を言っていた住人も、立退きをしなければどういうことになるかは理解できるので、自ら立ち退いてくれるわけです。 おかげで私は、実際に住んでいる人を無理やり締め出すような阿鼻叫喚の場には、幸いにも立ち会ったことはありません。 そのことを思うと、今回の保育園側の人々の態度が、際立って異様なものに思えたのです。 新聞の記事やテレビのワイドショーによりますと、この保育園では2週間後に「芋ほり」の行事を予定していて、その2週間を待てなかったのかといったことが話題にされていました。 しかし2週間後の芋ほりなどは些細なことであって、本当に子供のことを思うなら、こうなるまでに畑の移転などの措置を取るべきであったのです。そのための充分な時間はあったはずなのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/10/17 09:01:37 AM
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