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このところ雑談が多いので、前回の話に関連して法的な考察を書きます。
学校給食の場で児童がパンをのどに詰めて死亡するという、極めて痛ましい事件が起きたわけですが、まずは亡くなった児童の冥福を祈りつつ、この場合、誰にどんな責任が生じうるかを検討します。 まず、実際にはありえない話ですが、ノドを詰めて苦しんでいる児童を見て、教師が、「こんな子供は死んでしまえばいい」と思いつつ放置したらどうなるか。 刑法の勉強をしている方は思いついたでしょうけど、教師に殺人罪が成立する可能性もあります。 人を殺す行為も、死にそうな人も保護しないのも同じと評価するわけです。 それはないとしても、学校の管理責任を問うことはできるか。 たとえば、学校のジャングルジムなどの遊具が老朽化し、そこで遊んでいた児童が落ちてケガをしたようなケースがたまにあります。 その場合、公の施設(営造物)の欠陥によって国民に損害を与えたということで、国家賠償法の第2条による賠償請求が可能となる。 (なおこれは公立の学校であることを前提としていますが、私立であれば、民法に基づいて契約上の責任を問うことが可能でしょう。つまり親が高い学費を払って子供を委ねたのに、ジャングルジムの管理費をけちってケガさせたという責任を問うわけです) 本件のパンは、さすがに公の「施設」とはいえないでしょうから、これをあてはめるのは無理でしょう。 同じ国家賠償法の第1条では、公務員の過失によって損害を与えられた者は、国または県に損害の賠償を請求できるとある。 本件でも、学校側・教師側に何らかの過失があれば、賠償請求ができるということになります。では果たして、過失はあったといえるか。 児童がノドを詰めたあとに、教師がどのような手段を講じたかは詳しく知りません。救急隊員が持っているようなノウハウがあればこの児童を救えた気もしますが、学校教師にそれを求めるのは酷であり、結果として救えなかったからといって過失ありとはいえないように思います。 また、このクラスで早食い競争が日常的に行われており、教師がそれを注意せず放置していたかのように言われているようです。 しかし過失というのは、ここでも何度か書いたとおり、「充分に予測できる危険な結果を回避しなかった」ということを意味します。 老人ホームでジイサンが餅の早食い競争をしていたら誰だって「危ないなあ」と思うでしょうけど、児童がパンでノドを詰めるという事態を、現実的に予測できた人はいなかったのではないかと思います。だからこそ、誰しもニュースに驚いたわけです。 という次第で、気の毒ではあるのですが、学校の法的責任を問うというのはかなり難しいケースなのだろうと思われます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/10/28 08:32:56 AM
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