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カテゴリ:判例、事件
詐欺罪で逮捕された小室哲哉の話について、前々回に少しだけ書きましたが続き。
各方面に借金があって、その返済が大変になったために5億円を騙し取ったとのこと。 冷静に考えれば、借金があって返済できないなら、どうして自己破産しなかったのかという点に疑問が生じます。 そこは、「俺は大スターだから」というプライドと、「ヒット曲を出せば借金は返せる」という期待があったのでしょう。 さて、破産するとどうなるかというと、少し前に「船場吉兆」の話で書いたように、破産管財人がついてその人の財産を処分してお金に換えて、債権者に返済することになる。 (なお、財産がないに等しい人なら、そのステップを抜きにして破産手続は終了する) 破産手続を取るデメリットはというと、弁護士や税理士などの職業の場合、手続を終了するまでの間は資格を失うと弁護士法や税理士法で定められているけど、「音楽プロデューサー」にはそんな法律はありません。 せいぜい「何となく聞こえが悪い」というだけで、デメリットはないと言ってよい。 小室哲哉なら、高いマンションから放り出されても、譜面とエンピツがあれば作曲活動を続けることができる。 そして、破産手続が終了し、返済しきれなかった負債はどうなるかというと、「免責」といいまして、「チャラ」にしてもらえる。 免責になるか否かはもちろん裁判所の判断によるのですが、かなりのケースで免責が認められているのです。 では、小室哲哉が今から破産申請をしたらどうなるか。 5億円を騙し取った相手には、それを返さなければならないわけで、破産手続を経て「免責」を得ることでこれをチャラにできるのかというと、それはできない。 犯罪的な行為によって生じた債務は、免責されないことになっているからです(破産法253条1項2号)。つまり、一生かかってでも返済していかないといけなくなるわけです。 ということで、小室哲哉は、破産という法的手続でなく詐欺という犯罪行為を行ったことによって、余計に苦境に立ってしまったということになります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/11/11 08:54:33 AM
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