カテゴリ:フランス映画(~1959年)
今日は夫と、この間見逃したアルベール・ラモリスの「赤い風船」(1956年)と 同時上映の「白い馬」(同監督、1953年)を観にルフレ・メディシスへ再度行ってきました。 上映開始5分前の到着になってしまったので心配したものの、今回は無事入れてホッ。 8~9割埋まった客席をざっと見渡すと、 半分以上が小学生ぐらいの子供(&おそらく幼稚園児も少々?ギリギリに入室したので不明)で、 残りのほとんど全てはその保護者、 そしてごく一部のみが(私達の様に)子供連れでない大人といった感じになっています。 (ちなみに座高の足りない小さな子供には、 映画館がお尻の下に置く台の様なものも貸してくれたみたいです。) 「きっと子供のおしゃべりがたくさん聞こえるだろうね」 と言いながら笑顔半分・苦笑い半分の夫に私が頷いている間に「白い馬」の上映がスタートしました。 * 40分のこの作品はほとんどセリフが無く、 登場するものと言えば主人公の少年と馬と数人の悪い大人、それから少年の家族(?)ぐらい。 私はある程度セリフがないとすぐに退屈してしまう人間なのだけど、 久しぶりに見た動く馬の映像に惚れ惚れしてしまいました。 主人公の少年は、日本で言うと小6ぐらいなのでしょうか? 田舎に住んでいる素朴な子供という設定の彼がいかにもフランスの美少年という感じでかわいく、 また、しっかり演技していてくれたのも、私が映画世界に入り込めた理由の一つです。 さて、私達が覚悟していた若き観客達ですが・・・映画が始まってもみんないい子にしていました。 きっと子供達も映画に引き込まれていたのでしょう、雑談もひとり言も少なかったのです。 それに私自身が作品にのめり込んでいた事もあって、ちょっとぐらい声が聞こえてきても すぐに頭のスイッチが映画に切り替わってくれました。 あ、でも私はさすがに後半になってくると馬を見ているのに少し飽きが出てきたので、 好奇心半分でワザと周囲の声に耳を傾けてしまった事もあったけど・・・ それはそれで愉快で悪くなかったです。 (逆にずーっとシーンとした中で馬を見続けていたら、 この映画には退屈してしまったかもしれません。) * 満足できた「白い馬」の後は、いよいよ楽しみにしていた「赤い風船」の上映です。 主人は幼い頃にこの作品を観た記憶があるらしく前々からこの瞬間をワクワクして待ち構えていたし、 私は私で何度も名前を聞いた事のあるこの映画にはとても期待するものがありました。 「やっと観られるの嬉しいな♪」 という気持ちと 「そろそろ子供達がダレて来て騒ぎ出すのでは?」 という心配が私の頭を交差する中、オープニングが始まりました。 こちらもストーリーは至ってシンプルで、 主要キャラクターは主人公の少年(監督の息子らしい。6・7歳ぐらい?)と赤い風船ぐらい。 冒頭で主人公が風船と出会った後、ここからすぐにハメを外したファンタジックな物語になるのかと 思ったのだけど、そうではなくその足できちんと小学校に行くあたりがおとぎ話の割に現実的で 個人的にとても気に入りました。 さて、子供達はこの映画にも没頭している様子で思ったよりもずい分と静かにしています。 ひとり言を連発する幼い子も出てきたけど、 最初から覚悟していたのと「子供」が主人公の映画を観ている事もあってか、あまり気になりません。 逆に、ちょっとハラハラするシーンになると子供だけでなく大人も「Ha!」と息を飲んだり、 声を出したり。 私もその一人なのだけど、なんだか一体感があって楽しかったです。 * 舞台になっているのは今からちょうど50年ぐらい前のメニルモンタン(パリの下町)でした。 一度しかメニルモンタンに行った事のない私には断言できないけれど、 この映画に出てくる町並みの面影は今でもそこに残っている気がします。 住み出して早5年、いつの間にか慣れてしまったパリをもっと知りたいと思わせてくれる映画でした。 そして、今とはそんなに変わらない町並みとは逆に 人々の服装や車には思いっきり隔世の感があり、「古きパリ」を見るのも楽しかったです。 (また、私としては 「Vitrier ! Vitrier !《ヴィットリエ=ガラス屋でござい!》」 と叫びながら歩いている行商人の存在が嬉しかったり。 日本の大学に通っていた時、フランス語の授業で見せられた極古の教材ビデオに「ガラス屋」が登場し 「ヴィトリエ」という言葉も覚えさせられたものの、それ以来一度も耳にした事も目にした事も なかったので。) * 上映終了後には自然に拍手が起こり、みな満足した様子で帰っていきました。 主人に 「どう?映画は覚えていた通りだった?」 と聞いたら 「観た事なかったのに、気づいたよ」 との返事。ガクッ(死語?)。 今までに何度か映画のスチール写真を見て、子供心に「映画を観た」と思い込んでしまったものの いざ映画が始まったらそうでなかった事を悟ったとか・・・。 でも主人もやっぱり、両作品にとても満足していましたよ。 この2作品は子供が観ても大人が観ても楽しめるし、セリフが極めて少なくストーリーも単純なので フランス語が分からなくてなかなか映画を観る機会がないという方にもぜひ観てもらいたいなと、 今回思いました。 「白い馬」に出てくる大人達が悪い人達だという事や、 「赤い風船」の途中で少年が門をくぐるのが小学校である事を事前に教えておいてあげれば、 たとえ仏語が分からない子供でもあらすじを理解できる事でしょう。 上映中にひそひそ話をしている親子も居たので、 ちょっとぐらいなら途中で説明してあげてもきっと大丈夫だと思うし。 それにせっかくパリにいらしたなら、 この国の古い映画を独立系映画館で観てみるのもいい思い出になるのではないでしょうか。 今週の盛況ぶりから見る限りではこの映画の上映はこれからもしばらく続きそうなので 機会があったらぜひどうぞ♪ (ちなみに原題は「赤い風船」が「Ballon rouge」、同時上映の「白い馬」が「Crin blanc」です。) ランキングに参加しています。 投票(をクリック)していただけると、嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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